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ファイナル・ヘヴン 


みんな同じ頃があったんだよね
昔はみんな輝いてたのは同じ



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その温泉は名前こそは有名温泉街だったけれど
その温泉街からかなり離れた 山と畑の真ん中を
切り裂くように流れる川のほとりに
挟まるようにして建っていた


噂には聞いていたけれど
あまりきたことがないんだよね



温泉の施設は狭く、
そして今時の流れとは逆を行くような
そんな施設の老朽化が目に付く

壁のタイル絵だって
これ、あの有名な廃墟のあたりにあるのと
同じくらいじゃないかね?

いや、施設そのものが
その頃の建築なんだろうなぁ

温泉からあがって休憩室を探しても
休憩室らしきものもなくて
うらぶれた廊下にぽつんぽつんと椅子が置いてあった






しょうがないなぁ
なんか喉が渇いたから水でも・・・




普通の缶ジュースが140円?!

(注意:当時は100円が普通でした)



入湯税とかそのへんで高いのか
それともこの付近には民家すらないせいか
素晴らしい値段がついていた


伸ばした手を引っ込めて
すっかり憂鬱な気分でホテルを散策した
ホテルの中は小さな街のようだった


増築のためかくねった廊下が
九龍の街歩いているかのような
そんな気分を味あわせた



まだ宴会が続いているせいか
出番を静かに待つカラオケパブ


離れた宴会場からは音の外れた
ドンパン節が聞こえている



「何年ぶりに聞いたんだろ ^^;」



どこかから違う音楽も流れている

YAZAWA?矢沢栄吉かな??

こっちからだ



さらにわき道の細い通路を通っていくと
ゲームセンターが現れた


パチンコやらなにやら
昔のゲームがならんでいる

そいえばお風呂も
お年寄りばかりだったかもしれない


外に出なくて良いというのは
ある意味喜ばしい人もいるのだろう


ゲームセンターの横に
カウンターがあるのを見つけた




1ゲーム400円
貸しシューズ100円


・・・?


ふと横を見ると



ボーリングのレーン!!



すごいや6レーンもあるよ
ボーリング最盛期のときは大人気だったんだろうなぁ


そんなことを思って元の道を戻ると
チャイナタウンのような内装が見える



ラーメン屋さんだ!



そうか、本州とか、外国からきたお客さんには
ただのレストランや食堂でラーメンを食べさせるより
こうした演出のほうが本格的っぽくて嬉しいからね

なかなかやるじゃないか



と思ったとき、

ラーメン店の中に何人かの人影が・・・


そしてそれは光と色を伴って
あふれ出すように飛び出してきた









「!!」











え?え?えーーーーーーーーー??

な、、なに???フィリピンダンサーズ??

に、、してはちょっと年を取ってるような


えええ、なに??ホテル側の演出??
演芸タイム???


色とりどりの衣装に身を包んだ
南洋のような腰ミノをつけた
女性たちが踊り出してきた




思わず

「す。。すいません。いきなりですが写真をデスネ・・・」


「あら、早く撮ってね★」

うっわぁ、気さくwww






「マハロー」とポーズをきめ挨拶する◎◎老人会のA子さん


聞くと老人会での旅行なので
演芸でフラダンスを踊ろうと思って
みんなで衣装を作ってやってきたと事

そしてダンサーズの皆さんが
中宴会場に滑り込むように入ると
歓声がヒートアップしていた


「いよっ、まってましたっ!!
ハワイいちぃいいいー」


どこかのおじいさんの叫びが聞こえた


じ、、、じいちゃん

興奮しすぎデスよ(大笑)



帰り際にホテルを出ると
灯りの影でぼんやりと光る
裏庭の観音さまが見えた




「いくら古くたってね
案外枯れないものよ
人も施設もね」




いやごもっとも

宴会場から聞こえる歌は
青い山脈に変わっていた










山奥の温泉ホテル





   

きっとそれは私が見た昔の青春の     
最後の楽園 ファイナル・ヘヴン





2009年06月09日 Blog Kamishihoron 
2024年04月11日加筆


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