『幽霊たち』
まずはじめにブルーがいる。
次にホワイトがいて、
それからブラックがいて、
そもそものはじまりの前には
ブラウンがいる。
まだ、30代の頃、この書き出しで始まる、とある小説にシビれました。その小説とは、アメリカの作家ポールオースターの著作『幽霊たち』です。
色で表された登場人物の名前には、まったく意味がなく、それが、独特のムードを作ります。
主人公は探偵です。
1人の男を監視するよう依頼されます。サスペンス小説のスタイルを取りながら最後まで事件が起きない。話しの筋らしいものも大してなく、探偵は自問自答を繰り返すという一つの不条理もの。
文学が格好いいと思った瞬間がこの書き出しでした。柴田元幸の翻訳もセンスが良くて。
以来、ポールオースターのファンです。
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