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それは例えばアーティストが、「今まで出したシングル曲のタイトルを全部詰め込んだ一曲を作ってみました」みたいな作品???/村上春樹『騎士団長殺し』

創作の合間にちびちびと読み進めては(再読)日常的にエネルギーをもらっていた『騎士団長殺し』を、ついに、静かに、読み終えた。
そしてあらためて(一回目のときより、より強く)「これは村上さん、今まで書いてきたことを全部ここでもう一度“おさらい(?)”してみたんじゃないだろうか……」と感じ入った。だって、全部、詰まってる。注ぎ込まれてる。「総集編」というのか、なんというか……。例えばアーティストが、“何十周年”とかの節目の年に「記念として“今まで出したシングル曲のタイトルを全部詰め込んだ一曲”を作ってみました」みたいな??? もちろん、そんなふうに直接的にタイトルが入っているわけではない。それよりももっと緻密に繊細に(?)そして驚くほど自然に、物語の中に過去の作品の一場面が垣間見えるのだ。不思議。きっと意図して臨んだのだろう(と勝手に考える)。なぜか?

それはたぶん、次の大いなる変化・進化のため。ここで、これまで書いてきたものを全部きっちり出し切って(村上風に言うなら「箪笥の引き出しを全部あけて、中のものを1つ残らず取り出して」か?)、まっさらになって、新しい“何か”を呼び込むための、その未知なる作品づくりに取りかかるための、「集大成」「総括」「大掃除?」(つまりは何らかの大いなる「儀式」!?)なのではないか……そんな予感がむくむく膨らむ。絶対に(なんて本当は言えないのだけれど、読者としての信頼があるから勝手に言える)“ネタが尽きた”とかではないはずだ。もしかしたら次の長編作品は、“人生最後になるかもしれない……”ってくらいの覚悟を持って、取り組むつもりなのではないか???


まったく、どこまでも勝手な予感であり期待なのだ。そしてこれらは全然、この本の感想(?)になっていない。(←まぁそれはいつものこと。私のスタイル)
知らない人が読めば、1つのシンプルな(もちろん内容は全然「シンプル=単純」なんかじゃない)『騎士団長殺し』という物語――だけど、その中には幾つもの作品の横顔が複層的に絡み合い、混じり合って溶け合って、懐かしいけど新しい、“既知”のような気もするが読み込むほどに“発見がある”――そんな不思議な気持ち(心地よい複雑さと重厚感)にさせてくれる作品であり、それは丸ごと“未来への予感”に満ちていて……。

あぁ……それってまるで『人生』そのもの!!?


こうして今また読み返してみて、最初のときより好きになっていることに気づく。そういうのって、本当に最高。『作品』に、その『物語』に、力があるから(時間とエネルギーと愛のようなものが込められているから)、そんな奇跡みたいな魔法みたいなことが起こせるのだろう。そしてそれは時間(時代)も空間も越えられる。超えていく。


そういうのを『本』を通して味わうのが、私は特に好きなのだ。そして何度も何度も勇気づけられてここにいる。この創作の日々も、どれだけ支えられていたことか。


「平成」と「令和」の境目に、そんな『本』への愛をあらためて。

いざ、私も進もう。生きよう。




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“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆