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カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は、やっぱり『本』で読むのが最高だ。

私とカズオ・イシグロ作品との出会いは、2015年11月――。
この年の秋の大収穫は、村上春樹・翻訳の『グレート・ギャツビー』を読み終えたことと、ついにカズオ・イシグロ作品に突入したことだった。

(ちなみに『グレート・ギャツビー』は、読み進むのにめちゃくちゃ苦戦した作品だった。『フラニーとズーイ』同様、村上春樹の翻訳じゃなければ読み終えられなかったと思う。なんというか……古き良き?アメリカの富裕層の若者の話??って、どうにも自分の中に入ってきにくいのだな~、設定が。だけど後半に入ったら急にギアチェンジして加速し、そのスピードに「おぉ!?」と乗せられるがままに読み進んでいったら、結局そのままラストまで連れ去られてしまったのだった!笑  そして読み終わってみると……やはり、苦戦させられた前半の物語があってこそ、あのラストに向けての高まりがあり、それが静かに、しかし熱く激しく、確かな爆発となるのだろう……なんてしみじみ。その読後感はあまりにも『風の歌を聴け』に似ていた……というのはここだけの話)



そして私にとって最初の「カズオ・イシグロ作品」となったのが、これ。



『わたしを離さないで』

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彼の作品はいつか読んでみたいと思っていて、タイミングよくNHKの『白熱教室』も観たりしていたのだけれど、あのとき「なんか難しいこと言ってるな~」と感じたことが、これを読み終わったあとなら少し理解できる気がして、もう一度『白熱教室』を観なおしたくらいだった(そして彼のほかの作品もガンガン読んだ)。

というのは余談で、本当に面白かった! 素晴らしかった!!



どんな物語だったっけ――? 内容をすっかり忘れて読みはじめた私は最初(『白熱教室』の中で紹介されていたのだ)、「介護人」をしている主人公に対して、介護されている人を「提供者」と訳しているのがどうしても引っかかり、“えぇ~?「提供者」で合ってるの? 誤訳じゃなくて?”などと思い(苦笑)すんなりとストーリーを追っていくことができず、本の裏表紙に書かれているあらすじを読み返して“あ!”と内容を思い出し、そこからはもう、ぐんぐんぐんぐん物語に惹き込まれていって――まさに「ページをめくる手が止まらない!」な状態で、先へ先へ行きたくて、知りたくて、夢中になって読み進んでいった。


もう感想なんか言いたくないっ!笑 ←(いつもそう)

これはもう、読んだ人だけのもの。 ←(いつもこれ)



しっかし、本当によくこんな「設定」を思いつくものだ。
確か『白熱教室』で、「設定」にはものすごい時間をかけているようなことを言っていた気がするが(というより、ほとんど「設定」のことばかり考えているとか言ってなかったっけ?)、その「創造力」と「想像力」と、そこにかけた「時間」と「エネルギー」を思うと、ただただもう“ありがとうございます”なのだ。


読み終えてみると、ますますこの「タイトル」と本の表紙の「カセットテープ」が沁みてくる。


「わたしを離さないで」

「Never Let Me Go」





そして。あと少しで読み終える……というタイミングで飛び込んできた「ドラマ化決定!」のニュースにも、当時は驚いたものだった(ずっと気になっていた作家がテレビで特集されていて、運よく録画に成功し、その流れなのか何なのか、彼の作品を読むタイミングが巡ってきて、最初に手にした作品が、それを読み終えるというタイミングで「ドラマ化」されると知り――こういうシンクロニシティが起こるのも、人生のおもしろいところだよな~)。

驚いたね~。『思い出のマーニー』みたいに、舞台を日本に変えちゃうアレですね?(なんか日本になっちゃうと雰囲気が壊れちゃうよね。リアリティーは出るかもしれないけれど「物語性」が消えちゃうような……?)

◎主人公キャシー:綾瀬はるか・・・期待できます!笑
◎トミー:三浦春馬・・・こんなにかっこいいイメージではなかったけど。
◎ルース:水川あさみ・・・キャラがイメージどおり。合ってそう。

ってことで、これはもう楽しむしかないでしょう♪(ドラマ観る前に、原作読み終えてて良かった~!)

とにかく、オリジナルのラストとかにはしないでほしいな~(というのは原作ファンにありがちな勝手な願望?)。


ところで。ドラマも観なかったし、原作の内容も知らないよ……けど興味あるかも……という人はぜひ!(あなた、ラッキーです!笑)
このまま、何の情報も入れずに(下記にいろいろリンク貼ってますが、飛ばないで!!)まっさらな状態で『本』を読んでみることをお勧めします。
(これからあの『物語』を味わえるなんて、最高ですね!)





というわけで、私が今日これを書いたのは、図書館で借りようと思っていた『わたしを離さないで』の映画が、少し前に(なんと!)夜中に放送されていて、録画したままになっていたのを今日ついに観たから!なのでした。

日本でのドラマ化は、この映画の雰囲気にかなり忠実だったような……と今Wikipediaを見てみたら(ちなみにこれ、2014年には蜷川幸雄演出&多部未華子主演で舞台化もされているではないか!)、映画には「イシグロ自身も製作総指揮として名を連ねている」とある。ドラマ化にあたって、コメントも寄せているしね(最後のメッセージ、ぐっときます)。力の入った作品だったな~という印象はすごくあったなぁ。
それでも映画のほうが圧倒的に「物語の世界をそのまま視覚化しました」という感じで(イギリス映画だしね。キャシーが「恭子」とか、ヘールシャムが「陽光学苑」とか、やっぱり日本が舞台だとなんかひっくり返りそうになるもん……音の響きとかイメージがね)、だけど映画は「2時間」に収めなきゃならないわけで、結局は『本』が最高&最強なのだと強く、強く、思いました。私はやっぱり『本』が好き!!!


あらためて、これからこの『物語』を味わえる人(うらやましい!)、その新鮮さはやはり「1回目」ならでは特別なものです。そこには「時間」も「読む」という能動的なエネルギーも必要にはなるけれど(「観る」は受動的でいられるからね)、そこに広がるイメージはどこまでも自由で無限大のはず! ぜひ、楽しんで心ふるわせてください♪







こんなふうに、作品との「新たな出会い」があるたび、私は思う。


世界には、まだまだ出会っていない素晴らしい作品が眠っている。

いや、作品は眠ってないか。眠っていたのは私か!笑



あぁ素晴らしき、『物語』の世界。

もっともっと目覚めて、出会って、吸収していこう。


読みたい『本』がある限り、きっと私は
この世界を生き延びられる!!!


そして、だからこそ――「この道を進みたい」と
祈るような気持ちで思うのだろうな。




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“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆