Tetsuro Kato

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Tetsuro Kato

Ka na ta designer Twitter @kanatadesign Instagram @kanatadesign

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最近の記事

かなた旅館は土と糸へ

かなた旅館という旅館がありました。 それはKa na taの根元でもありました。 この場所を作ったことによって この場所があることによって Ka na taは かなたでいることができたのだと思います。 最後の展示会でも、かなた旅館はこの先どうなりますか、なくならないですよね、と何度も聞かれました。 結論から言うと、かなた旅館はすでにもうありません。 ありませんが、土と糸、という名前の旅館に生まれ変わっております。 旅館の運営はKa na taから、デザイナーの

    • Ka na ta への手紙

      2023年12月1日。記す。 加藤哲朗から Ka na taへ向けて。 あなたはいつも、ただの布でありたいと願うので なるべくあなたが、記号にならないように努力しました。 あなたの名前は、Ka na ta ですが、服の上にはそれを証明するタグはありません。 服が、衣服を超えて特別な意味や価値を持たないように、ただひたすらに纏う身体に寄り添うように、あなたと歩んできたつもりです。 あなたはとても優しい。 僕とあなたは、念じるように、その身体はきっと大丈夫、 と、

      • Ka na ta 最後の日々へ

        おはよう。8月26日の朝、この手紙を書くために久しぶりに家を離れて長野のホテルで朝を迎えた。 変わらないことは、長野の山奥でメリーときゅうと暮らしていること、きゅうはもう小学2年の夏休みを終え、里山の集落は今日も優しさがこぼれていること。 変わってしまったことは、愛猫のアメが亡くなってしまったこと、今は3匹の猫といる。 あとちょっとで変わること、メリーのお腹の中には女の子が羊水の中で浮かんでいること、その子はもうすぐ空気に包まれること、Ka na taは11月3日に活動

        • Coci la elle と Ka na ta

          お久しぶりすぎて忘れ去られているかもしれません。 Ka na ta ではないこと。それが初めてのことなのでここに言葉を落とそうと思いました。 7月23日、新しい服の発表があります。 コシラエルとかなたで作った服。 コシラエルは、傘をずっと作っていて、僕の自宅にも2つのコシラエルの傘がある。雨の日、コシラエルの傘は空になる。その小さな空を見上げては、綺麗だと何度思ったことか。 7月1日、コシラエルのちかちゃんから生地が届いた。 掛川市、福田織物が丁寧に織り上げた綿の

        かなた旅館は土と糸へ

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        • Ka na ta
          3本

        記事

          わたしはないの

          服を脱げば わたしがあると 服を着れば わたしになると 思っていたのです 思っているのですが 見つからないの とてもわたしが ことばを 吐くの あなたに 挿すわ いつも こころは 追いつかせるの 見つからないよ とても あなたが 誰かの 見る が わたしを 刺すの こわくなるけどね すべてを 脱ぐの 残った 水い 塊が からだの 涙 戻ってゆくのです どこに戻ればいいかな 戻ってゆくのです どこに戻ればいいかな 戻ってゆくのです

          わたしはないの

          かなた 無謀な初めての歌

          明けましておめでとう。ここに言葉を落とすのも、ずっと以来だ。 みんな生きてますか? 2019年のことは話さない。いつか話せる時が来るかもしらんし、きっと忘れることもできる。 ずっと旅館を作ってきた。かれこれ、ずっと初めてのことをしている。服だけ作ってればいいんだよ、お前は。あの日、売れない芸人に言われたことを時々思い出す。 でもそうすると、きっと服を作れなくなってしまうから、そうやって生きている。 初めてのこと。いつだって僕は無謀で、無謀だ。しばらくキチムに会ってい

          かなた 無謀な初めての歌

          ふ安定を集めるの

          5月26日が終わって5月27日になりました。 ぼくの命がしてきたことについて、考えている。 大きなソファで横になったら昼間に出た、今はもういない汗の残骸を首筋に感じた。きっとそれを集めて舐めればしょっぱいんだろう。 生命から出る残骸っていうのは大体、塩が水に溶けているから海水なんだ。涙も汗も鼻くそも。ぜんぶ海の水なんだ。水だけがどこかに消えて、皮膚の上には塩分だけが残るんだ。しょっぺーな。 海は広いからわからない。青い海も、赤い海も。 そうだ。不安定を集めちまった。

          ふ安定を集めるの

          苦しさについて

          年を越して、色んな事が起きた。 誰かが苦しんでいて、その誰かが苦しくなくなるようにしたら その隣にいる誰かが苦しくて 今度はその誰かが苦しくないように、しようとした。 なんとなく、それらの誰かが笑顔になったら 今度は、全く別の角度から、苦しい、と声にならない声が聞こえた。 大切な人のくるしいは、くるしくない、にできるならしたい。近い場所だったらとくに。 そうやって生きてると、ぼく苦しい。なることは、いつもどおりだから気づかない。 自分のくるしいを流す術はずっと

          苦しさについて

          Ka na taの2019年について

          結局おはようございます。 おやすみなさいを言うつもりだったのに身体が一向に動かない。毎日コテを握って壁を塗っているせいで、右手がずっと痺れている。 昨日かなた旅館の客室の壁を塗り終わった。左官は水を理解しないとうまくいかない、と職人が言っていた。まさか。まさに。 沢山失敗して悔しくて、夢の中でも壁を塗っていた。でも最後には、良き壁になった。そこで過ごす人を包むものだから、布を作っている気がした。 春ね。夏もきます。まだ皮膚が日差しに慣れていないけど。 今日5月17日

          Ka na taの2019年について

          皮膚をください

          午前2時を超えた。 アトリエでミシンの音が聞こえる。縫製のくまちゃんが踏んでいる。 パターンを触る音は紙の味がする。 じゅんきが新しい服のパターンを作っている。 ずっと見たかった景色が、やっとさっきみえた。 やっとさっきみえたんだ。 沢山のいろんなことを無視してやっと見つけたのは、 彼女から彼女を無くす方法について。 12月を超えて発表の19日まで2週間を切った。毎日新しいトワルを作っては捨てる日々が続いていた。 どれだけ考えても、何千回とピンを打っても、結

          皮膚をください

          SHOW by Ka na ta 2018 の詳細

          SHOW by Ka na ta 2013年 飴屋さんと 新宿三丁目どん底にて 2014年 西日暮里のプールにて 2016年 吉祥寺キチムにて かなたのえんげき そして 2018年 12月19日-21日までの3日間 吉祥寺キチムにて ショーをすることにしました。 【SHOW by Ka na ta 2018】 " I are a body " 日時 19時 open 19時40分 start 12月19日 Day 1 "トワルチェック"

          SHOW by Ka na ta 2018 の詳細

          あずさ

          あと少しであずさが上諏訪に到着する。 あずさじゃない。この子はスーパーあずさだった。 僕は松本に向かっている。北陸新幹線に続いて、あずさにも全ての座席にコンセントが装備されている。 みんな充電がしたいんだ。 あと少しで屋根が完成する。今日は一日かけて掃除をした。ほんとうに丸一日掃除をすると、ちょっと洗われた気がして明日いいことあるかな、思ったりした。 あと少しでスーパーあずさが岡谷に到着。お出口は右側です。 後ろの席で誰かが上着を着て、その上からリュックを背負った

          11月3日

          台風が過ぎた。 晴れ。 背中の痛みが少しひいた。10月30日は中野サンプラザで過ごした。気づいたら10月31日の朝になっていて、目が覚めたら八王子に居た。 あの夜のことは話さないでおこう。 ふらふらになりながら東小金井の自宅へ。喉が枯れていた。屋根のない2階からブルーシートを眺めていた。綺麗、思った。 しばらくして松本行きのあずさに乗った。 茅野駅で降りた。かなたの店長の地元、茅野市は建築家の藤森照信の故郷らしい。駅にポスターが貼ってあった。屋根に植物が生えているあ

          Ka na ta 秋と冬の服

          おはようございます。月曜日の朝。 長野と東京を行き来して週末は新潟で壮平のライブがあった。 このツアーをみるのは2回目だけど相変わらず涙、流れしこと。明後日は中野サンプラザでツアーファイナル。 うた。 今日新作のトワルチェックをしたのち、東京に向かう。屋根があと少ししたらできる。 屋根が飛んだこと、歌になって大切な人たちがうたってくれたこと。 うた の 世界にはたくさんの大切な人がいて、 ふく の 世界にはそういう人がほとんどいない。 なんでかな。 やまが色

          Ka na ta 秋と冬の服

          暴風警報

          walking in the she. と、そうへいの歌を空耳して笑った。 前にブログを書いたのは 写真家の奥山の結婚パーティーの前日、千葉のホテル。 あの日の予告通りに暴風警報が発令した。 身体の調子を完全に崩して人生ではじめての抗うつ剤を飲むと、少し痛みが和らいで笑った。 まさか、たった一粒だけとはいえ、あの僕が抗うつ剤を飲む日が来るとは。 きっかけは台風24号だ。でもたぶんそれよりずっと前から何かがおかしくなっていたんだろう。おかしい場所は最初はおかしくない

          暴風警報

          台風の目の中

          いま 自分がいる場所は 台風の目の中で あと少ししたら、もう一度暴風が吹くと分かっている。もう一つ分かっていることは台風の去った後は死ぬほど晴れることだ。 僕は千葉の勝浦にいる。10年前にのばらチャックさんの別荘にメリーと2人で泊まりに来たことを思い出した。いまは3人でここにいる。 ここに居てはいけないし、ここに居なくてはいけない。そういう不思議な1日を、見知らぬホテルで過ごしている。波の音が聞こえるような気がするし、風の音のような気もする。なんせ僕は台風の目の中にい

          台風の目の中