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霧のビクトリアハーバーが好きな理由

2023年4月にM+のバルコニーでやった林兆榮のイベントの日記です。
私は大学で映像とコミュニティアートを専攻したのですが、金融都市香港にはその他に「アートビジネス」とかいう真逆の分野があります。M+はその最たるものの一つで私は普段寄り付かないのですがこの日は大好きな林兆榮のイベントがあったので行ってきました。↓

維港を背景に映画とテレビの中の維港モチーフをみんなで見た。中環からスターフェリーに乗って霧の西九龍からビクトリアハーバーを見る。1995年辺りの香港のエンタメの中のビクトリアハーバー、まだその頃は埠頭が埋め立てられていない所もあって、95年発刊の地図も見ながら今と比べた。

動画はこちら↓

榮仔が初めてパソコンを手に入れた時、家にあったミシン台をモニターのデスク代わりに使った
榮仔

変換前と今の香港については決まってセンチメンタルになるのだろうけれど、多分私は香港に来て以来ずっと落ち込んでいて簡単には「スターフェリーに乗って落ち込んだ気持ちを取り戻す」事はできなかった。でもこの日の私は初めて霧のスターフェリーに励まされたのだった。

香港の海はどこか陽気さが無く、こんなにキラキラしているのに重苦しい「人生」を感じる。ビクトリアバーバーは霧や曇りが似合うと思う。

榮仔は「ビクトリアハーバーには様々な感情がある」と言っていた。悲しい時、死にたい時、香港人はビクトリアハーバーを見た。私が香港が好きな理由は「人」なんだけど、自分が辛いと思っていることや悲しいと思っていることは香港人も同じようにそのような感情を抱いている、と感じる。他人と心の中で繋がっていると思えるから香港にいて居心地が良い。

香港に住む人の感情がどんより溜まっている香港の海を見ると私はそこに共存性を感じ、同じ世界に生きていることを実感する。香港は世界的な金融都市のイメージが強いけれど、同時に小さな大都市でもあり香港丸ごとひとつのコミュニティでもある。香港は仕事をするには良い場所で、みな自分のやるべき事に真剣に取り組んでいる。同時に相手のしたい事がわかると丁寧に尊敬を持って対応してくれる。馴れ合いではない関係性だし、個人主義とも違う。そこに成熟したコミュニティを私は感じる。どんなに遠くに住む人でも片道二時間半あれば香港の隅から隅に移動して会う事もできる。実際に会って話せるのが香港の魅力だ。

一生懸命に生きると、苦しいことや辛いこと、死にたくなる時があることを香港に住む人は知っている。香港の風景が美しいのはそういうことだと思う。

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