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「ダイバーシティ・マネジメントとは、コントロールしようとすることを徹底的に手放すこと」ー自由人博覧会/武井浩三さん(社会システムデザイナー)

自由に生きるためには、自由に生きられる場が必要だ。で、今年度の「自由人博覧会」は、”ダイバーシティ・マネジメント”をキーワードにした。そのタイトルが間違いだったかもしれない……と、第1回目の途中、終了10分前くらいに気づいて、終了直後にまだハワワワとなりながら書いてます。

▶革命前夜、武井浩三は多型構造と知る。

第1回目のゲストは、”自然経営”で知られる社会システムデザイナーの武井浩三さん。
事前打ち合わせで、私たちが手探りで進めている自律分散型コミュニティを、武井さんが強固なロジックに基づき本質的に進めており、ご自身もちゃんと自由に幸せに生きていらっしゃることを知って、「おお、これは大きな希望!」と感じたことが強く印象に残っている。(飲んでたから詳細を忘れたともいう)

<打ち合わせより、プロローグ動画>

▶みかん畑、鳥のさえずり、こどもの泣き声。

さて今朝。イベント当日に画面に現れた武井さんの背後には、緑が広がっていた。「神奈川県の、みかん畑からです」 招かれて、3家族でみかん狩りをしているところという。
話の背後に、鳥のさえずり、葉のさざめきが入る。お子さんが画面を覗き込んできた。そのあと、ワーン!という泣き声も聞こえてきた。いつの間にか武井さんの手にはみかんが渡されていて、途中でそれを食べていた。ぜんぶひっくるめて、なんて人間的なかんじなんだろう。

さて、何をやっているかよくわからない武井さん。肩書は、社会システムデザイナー。「自分に肩書をつけると、『会社の中の自分』ではなくなった。自分の中に、いろんな会社がある感覚」であり、いわば「百の肩書をもつ『百姓』」と言われた。なるほど。

まずは、著書でも知られている「自然経営」のことを伺う。

●「自然経営」のポイントのひとつは、「自然(じねん)」。英語のNatureは外部環境だけど、日本語の「じねん」には自分自身が含まれる。
●ふたつめのポイントは「経営」、管理する「マネジメント」ではなく、「自然の摂理にのっとって営む」のが経営。自分自身も経営する。

「みかんバタケからの出演を許してくださる大らかな皆様に感謝です」


▶あまりにも「管理」や「統制」に慣れていたのかも。

ティールとかホラクラシーとかは、方法論ではなくて、結果。みんなが自分らしくいられる場を考えたら、結果的に、自律分散型になっていた。
そのような場をつくるには「情報の透明性」「力の流動性」「境界の開放性」の徹底があればいい。

人間の関係性とは、情報の流通。ITを活用して多対多のコミュニケーションをするのが基本。たとえば、LINEグループでなんとなく物事が決まっていくのだって、立派な自律分散型。その時は「正解」を探すのではなく、それぞれが自分の主観を素直に話せばいい。

そこで参加者さんから「自律分散型組織だと統制が取れなくなるんじゃないか、と指摘されて、私、反論できなかったんですが」という質問。武井さんは「統制しないのが自律分散型」と答え、「その代わり、調和する」と続けた。調和のために必要となるのが、さっきの3つの要素の徹底である。LINEグループでも、それをやればいい。

そんな言葉を聞きながら、私はしまった、と思っていた。私はあまりにも「管理」や「統制」のカルチャーに慣れすぎていたのかもしれない、すぐには何が本質的な論点かわからなくなるほどに。そして「ダイバーシティを実現する話」のタイトルとして、疑いなく「ダイバーシティ・マネジメント」と冠してしまったように…。ああ。ちゃうなぁ。


▶「自律分散型組織にしたら、売上アップにつながる?」

引き続き、チャットのコメントを拾いながらのフリーディスカッション。参加者さんから「自律分散型組織にしたら売上アップにつながるか」という質問。武井さんは「増えることもあるし、そうじゃないこともあります。でも、そもそも売り上げは、資本の一面でしかないから」と回答。

お金という資本(エコノミック・キャピタル)のほかに、人間関係資本(ソーシャル・キャピタル)があり、また最近ウェルビーイングといわれる心と身体の資本(ヒューマン・キャピタル)がある。エコノミックの側面を追求して生産性を上げ、そのかわり友人や家族との関係性が壊れ、自分の心や身体の健康も壊れてきたのが、最近の”行き過ぎた”日本社会。「でもそれって、本末転倒ですよね」

だから、たとえば3つの収入源をつくる。会社に生殺与奪権を握られないように。そもそも自律とは、依存先が増えることである。コミュニティも3つ以上がおすすめ。どこかで、思いもかけない自分が、誰かの役に立つかもしれない。そうやって、自分自身のバランスを取る。自分が素直でいられる環境をつくる。

あーーー。そうか、だから私は、なりわいカンパニーを、複業推奨ではなく「専業禁止」にしてるんだ。貨幣経済への依存を下げるため、みんなで農業を始めたんだ。人間まるごとで楽しくいられる場にするため、社員(風)食堂や、社員(風)旅行を始めたんだ。

仕事ってさ。機嫌よくやれるほうがいいじゃんね。時間を使うって、生きることそのものだから。



▶戦うのをやめて、自分を生きよう。

マネジメントは軍隊用語、だから「戦略」とか「戦い」が出てくる。でも自然って、競合と戦うんじゃなくて、自分自身の生存を一生懸命にやっているだけ。そういう生き方、組織のありかたに、したらいいんじゃないかな。

義務感で自分を引っ張っていくのではなく、インスピレーションに自分を引っ張らせる。「自分の心がやりたいと感じると思っているかどうか」を、シンプルなバロメーターにして。


武井さんとの話は、そんなかんじで終わりました。ダイバーシティ・マネジメントとは、コントロールしようとすることを徹底的に手放すこと。逆説的だけど、そういうことかもしれません。


で! なんか、外にいた武井さんの姿がすごくうらやましかったので、ホテルをチェックアウトして、近くで見つけた公園の、池の前のベンチで原稿を書き始めました。グワッツグワッと声がして、ふと目を上げると、いつの間にかたくさんの鴨が。その瞬間、ほかの鳥たちの声もワッと耳に飛び込んできて、世界が一瞬でひろくなりました。

なんかわかんないけど、そんなかんじ! すくなくともここに競争はなくて、あるのは調和だね。

武井さん、ありがとう! 自分自身にしっかり納得して、幸せそうに生きている武井さんの佇まいそのものが、自律分散型組織が実現する姿だなーと思いました。


■自由人博覧会、次は2023年1月と2月に開催します。

https://lgaku.com/2022/11/14/jiyujin2022/

お申し込みは、忘れないうちにどぞ!

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