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《読書感想文①》文フリ広島で買った本

 はい。こんにちは。
 先日の文学フリマ広島にて買った本たちについて、読書感想文を書くことにしました。「買ったよ!」の報告の更に本気バージョンということです。
 X(ついったー!)で書いてもいいのですが、僕にはあまりにも文字数が少なすぎるのでnoteの記事にて書くこととします。

 もしかすると失礼な物言いをしてしまうかもしれませんので、作者様におかれましてはご了承の上でお読みいただければと存じます。そして、あくまでただのオジサンの読書感想文までと捉えていただきたい次第です。

※作者名敬称略とさせていただきます。
※ネタバレにならぬよう気をつけて書きますが、不注意あれば申し訳ございません。

 それでは、よろしくどうぞ。

『すしねこ』(がんがぜ猫)

 フルカラーのコンパクトな絵本。手のひらサイズの猫本に惹かれました。絵本らしく分厚い用紙できれいに製本してあります。
 “すしねこ”と呼ばれる謎の生物(?)についての解説──いや、自分語り絵本ですね。“すしねこ”が語り手になっていることが効いていて、謎感と可愛らしさを身近にしています。
 またフォントのチョイスが絶妙で、表紙の「しょうゆ」の手書き文字からの乖離が少なく、可愛らしさを引き立てています。
 それに登場する“すしねこ”自体の発想がピンポイントに刺さる表現があり楽しめました。
 特に“ぐんかん”のすしねこについて、猫らしさと軍艦の合わせ方が好きです。少ないページ数ながら、猫たり得る習性もきちんと描かれており、猫好きにはたまりません。
 それだけでなく、“すしねこ”特有の習性(ネタバレになるので詳しくは書きませんが──)に添えた“あたりまえだが”の一言が秀逸です。

 ちなみに、絵本の中に“すしねこ”が無数に登場するので、全手書きなのかコピペすしねこがいるのか見極めてみようかと思いましたが、すしねこ達の柔らかい曲線が可愛くて考えるのをやめました。

 裏表紙に印字されたサークル名〈NEKO PENGUIN 堂〉のロゴデザイン──おさまりが良すぎて気持ちいいです。
 あ、あと忘れてはいけない。栞です栞。“おちやがった”がいい。この表現が猫が言いそう過ぎる過ぎる過ぎる。とてもお気に入りました。

『moon river』(ほのラジ)

 四編からなる掌編集。書き下ろし含め、連作と捉えるべきでしょう。事前情報無しで読みましたが、テーマが後から浮き上がって来るタイプの連作です。
 ネタバレになるので、テーマを名言することは避けますが、あえて僕の言葉で例えてみると──ただボールを投げて打っていただけの少年が、野球チームに所属してルールを覚えて練習を重ねた。そんな少年に対して、(おそらく当該の少年に起因する)負け試合の直後に投げられる「野球って何?」という質問。少年にとっては答えづらくもあり、答えるべきでもある。あるいはもう答えを用意しているかもしれない。
──そんな小説だと思います。
 著者が二名のユニット(穂音さんとぼんやりRADIOさん)であるためか、歪さを感じる瞬間があります。ただ、ここで言っている“歪さ”というのは、裸足で秋の裏山を歩くようなものではなく、一万キロ以上走行した普通車のサスペンションで舗装の甘い田舎道をゆく程度のもの。不愉快ではありません。
 田舎道で感じるべきは鳥の声や風の音であって、車の乗り味ではない(お気に入りの車であればそれもまた一興)です。
 説明的に言うと、擬音や動物の登場が僕にそう感じさせました。これはクセなのか意図的なのかは分かりませんが、擬音が入るタイミングが僕にとって不意なんです。句読点ではなく、(いい意味で)擬音に呼吸させられます。

 まとまりのない感想で失礼にあたるかもしれませんが、まあ僕は野球が趣味なのでこういう感じになりました。あしからず。

『ポプリ─potpourri─』(諏訪原天祐

 文フリ広島のWebカタログで狙っていました。そして現地にて作者の好きな小説家に「筒井康隆」──はい、予定通り即購入しました。
 へんてこな小説ということは分かっていて、僕自身の好みにもマッチしていると予想していました。
 本を開くと目次、そして用語集──この時点で反則です。”鳥鳥県”の用語解説終盤でナンセンスに殴られました。

 実際のところ、本文はもうナンセンス。ナンセンスナンセンスナンセンス。ナンセンスでぶん殴ってきます。殴られて背中を地面に叩きつけられ、そのまま数百メートル引きづられます。気づけば僕は三朝温泉で三日三晩足をふやかした気分になりました。
 基本的に語り部としての文章は小説毎に異なりますが、いずれもストーリーテラーとして適切に機能していて、異なるナンセンスにもきちんと殴られます。また、本文中の言葉選びというか、フューチャーする言葉が独特です。この独特というのは狙い過ぎると得てして顰蹙を買うパターンもあると思うのですが、僕にはハマりました。
 特に“陣太鼓を買ったときの──(ネタバレになるので略)”が出てくる度に、僕は「ブヒャッ」「ビャッ」と奇声をあげる屁こき虫にならざるを得ませんでした。

 そんなパワーワード使いにすべてを持っていかれず、物語の結末に辿り着きたくなる、辿り着かされる筆力は僕好みでした。

※収録作が多かったので、特に気に入った作品をメモしておきます──『ビート板になった男』『美しい』『ポストマン(異常の研究)』『女王様の受難(異常の研究Ⅱ)』

 お初の作者様でしたが、こういう出会いが文フリの醍醐味だと感じました。そして、AA。

『僕たちだけが知っている』(久慈川栞

 本が強い。ページ数と装丁に圧──というかこだわりを感じます。僕なんかの「とりあえず本の形をしていて、あと、表紙があればいい」という感覚が吹いて飛ばされるようです。
 小説の内容は五人の少年少女たちを中心としたひと夏の──体験ではないか──“ひと夏のひと夏”というのが正しい気がします。
 出だしの駆け上がり感が無く、気づいたら少年少女たちそれぞれの物語にシフトしていきます。この点が僕には“ひと夏のひと夏”に感じました。確かに、夏休み前の最後のイベントとして終業式があり、イベントらしくもらしからぬも終業式直後は夏休みの高揚感に急激に襲われます。しかし、夏休みの四十日間は少年少女達には先の見えない期間であります。いざ夏休み初日の朝となると、高揚感は熱気に溶け込んでしまい、ぬら〜っと始まらせてしまった記憶さえあります。
 ちなみに、あとがきに記載されていますが、当初の計画と小説の展開が──意図的なのか偶然かは分かりませんが──ひと夏をひと夏足らしめている気がしました。

 また、会話文で広島弁を使われています。僕自身も広島弁の話者(と言っていい程度には広島人)ですが、文字化させるのは難儀なところがあります。特に長音──じゃないな、“長音拗音”みたいな発音があり、文字化すると「ィ」とか「ゃあ」みたいになります。実際、広島弁のキャラが出てくる漫画でも多用されている気がします。
 が、多用し過ぎると邪魔くさいんですよね。「おどりゃあ、すどりゃあ、おみゃあうるしゃあけえ!」みたいな。
 しかし、本小説では適切に広島弁が配合されており、広島弁の話者からしても違和感が無く、非広島弁の話者からしても読み取ることができると思います。参考文献まで記載されており、作者の真剣さを感じました。(実は拙作『猫城』で広島弁を書きましたが、僕にはうまく使いこなすなんて無理でしたっ! ぷぅーーー!)。

 本作の勘所は広島のど田舎の描写と、少年少女の夏休み経験(ひいては読者の夏休み体験)の親和性の高さではないでしょうか。そこに登場人物個人の成長を付与してあります。
 まあ、なんというか、ジュブナイルという年齢には達していない登場人物たちですが、メインストーリーの“一匹の生き物を育てる”(ネタバレになるのでこの表現でしか書けませんが──)という行為がジュブナイル化させているように感じました。
 登場人物に合わせて児童文学的な表現に留められている部分もありますが、その中でも広島の田舎の風景の描写力は圧巻だと感じました。(すみません、個人的に広島のど田舎出身なので、現風景の想像とリンクしすぎる点もあるかとは思います)。それにしても、すぐ田舎の町を小説に書こうとする僕にとっては「ぷぅーーー!」と言いたくなるような、負けた感満載の描写力でした。具体的に言うと、風景に無駄がありません。同じことを二回言うでもなく、部分的に切り取り過ぎるでもなく。

 で、作品としては一年半前のものとのこと。
 悔しいながら最新刊を読むのが楽しみになります。こういう「この人の次の小説が読んでみたい」と思わせる感じってなんなんでしょうね。
 個人的な話をしますと、僕は完結型というか、小説を証明のように使っているところもあって、すごく句切れちゃうというか。だから、僕の小説はぶちぶちしてる。
 いや、本小説は本小説できちんと完結しているんですよ、そうなんですけど「次の小説が読みたい」となる。「この小説の続きが知りたい」とは似てるようで非なる感覚ですよね。

 小説自体も長かったため、感想文も長くなりました。大変申し訳ございません。


 というか、ごめんなさい。何書いてるかわからなくなってきました。いつもの僕のパターンに入ってきたようです。何書いてるか分からないので、今回は四冊の感想文にて投稿することといたします。

 引き続き購入本の感想文をゆっくりと書きます。

 最後に、作者の皆様におかれましては、大変失礼な感想を書いたことになった部分もあったかと思います。逆鱗に触れた部分があれば、投稿後でも加筆修正いたしますので、お申し付けください。また、ネタバレになっていて「それは伏せておいて!」みたいなご意見でもよろしゅうございます。


 それでは。
 おしまい。またね。

僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。