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【連載小説】ちょうどよいふたり

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日本リフレクソロジスト認定機構会報誌「Holos」で連載中の連作短編小説です。1年に3話更新されます。作中の人物も4カ月ごとに成長していきます。
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記事一覧

第34話 未来とぜんざい |2024年1月

 本当に心の底から「わかる」ことなんて、しょっちゅうあるわけではない。心の底からわかると…

寒竹泉美
1か月前
22

第1話 ぜんざいと風花 |2013年1月

 サービスエリアにありがちなファミリー向けのレストランで、大味の甘ったるいぜんざいをすす…

寒竹泉美
7年前
24

第2話 唐揚げと人生 |2013年5月

 ほら、地縛霊がいる、と幸彦に言ったのは、最近予備校で言葉を交わすようになった佐々木と…

寒竹泉美
7年前
18

第3話 お弁当とリフレクソロジー|2013年9月

 ようやく日常が戻ってきた、と思いながら幸彦は予備校の教室の中を見回した。昼時は休憩室…

寒竹泉美
7年前
15

第4話 ハーブティーと告白|2014年1月

 窓際で自習していた幸彦がノートから顔を上げると、甲本さんが目の前にいた。 「今回は雪…

寒竹泉美
6年前
15

第5話 パフェと恋|2014年5月

 インターネット上の合格発表のページに自分の受験番号を見つけたとき、幸彦は嬉しいと思う…

寒竹泉美
6年前
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第6話 マンゴーチューハイと年上の女性|2014年9月

「合コンしようぜ」  と、佐々木が言った。幸彦は、佐々木の顔を見ると、その言葉をかみしめるように味わった。大学生活が始まって5か月目にして、ようやく大学生らしい言葉を聞いて感動したのだ。幸彦が黙っているので佐々木はため息をついた。 「やっぱり駄目か。幸彦、そういうの好きじゃなさそうだもんな。無理はしなくていいよ。他の人探すから」 「行く」  大きな声が出た。 「なんだ、行くのか。気合い入ってんな。いいぞ。その調子で盛り上げてくれ」 「いや、でも、盛り

第7話 海と白い光|2015年1月

 灰色の砂からビンやライターやプラスチックの袋が顔を出している。夏の海水浴客が落としてい…

寒竹泉美
6年前
9

第8話 ビールと年の差恋愛|2015年5月

「とりあえずビール。果穂さんは?」  佐々木にたずねられて、果穂はわたしも、と答える…

寒竹泉美
6年前
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第9話 恋とリフレクソロジー|2015年9月

イラスト:木村友昭 果穂のリフレクソロジーのお店は、なかなか繁盛しているらしかった。口…

寒竹泉美
6年前
9

第10話 愛人と冬の海|2016年1月

イラスト:木村友昭  飲み会の予定が入っていて本当によかった、と幸彦は思った。おかげで…

寒竹泉美
6年前
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第11話 短パンと進路相談|2016年5月

 三年ぶりに会った室田剛(ごう)は、まだ初夏だというのに黒々と日焼けしていた。かつては青…

寒竹泉美
6年前
9

第12話 ケーキセットと自由|2016年9月

   幸彦は会場の端の壁にもたれて、リクルートスーツたちを眺めながら、自由の重圧に苦しん…

寒竹泉美
6年前
10

第13話 クリスマスデートと普通|2016年12月

 リフレクソロジーの仕事を始めてから、果穂は、朝、目を覚ますのが楽しみになった。目覚めるのは、いつも六時だ。白湯を飲み、ストレッチをしてから、自分の足のセルフケアを行う。朝の空っぽな体は足裏の刺激によく反応する。マッサージをする自分の感覚が鈍らないために始めたことだけれども、体が指に応える感覚がわかるようになると、お客さんのこともよくわかるようになった。  全身がぽかぽかしてきたら、部屋着に着替えて朝ごはんを取り、その日の気分でアロマを選んで焚いて、植物に水をやる。そんな