「古典ヨガと現代体操ヨガの結びつきは弱いという驚きの事実」から考える、企業文化変革へのヒント

知人に「ヨガ講師をしている」という話をすると
「健康とか美容に気を使ってるんですか?」
「体やわらなくないと難しいんじゃないですか?」
「女性ばかりだと思うので男性はやりにくくないですか?」
という反応を受けることが多い。

(いや、健康や美容のみではなく、もうちょっとイイものなんだけどな・・・)と思いながらも、私の実践しているヨガと、世の中のヨガの認識とに差異があるように思われたので、その理由を探してみた。
また、記事後半では、古典ヨガを実施した自身の実感・効能から、企業文化変革への影響を考えてみたい。

インドの国策としての「造られた」ヨガの勃興

実は現代一般的にヨガ=体操と思われているヨガは、インド古来のものとは全く別、という見解がある。

宗教社会学者の伊藤雅之は、現在実践されている体操ヨーガの起源は、西洋式体操法などの西洋身体文化が、インド独自の体系として、伝統的な「ハタ・ヨーガ」の名でまとめられたものであると述べている。
ヨーガの研究を行ったマーク・シングルトンは、「現在ヨーガと、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した本来のハタ・ヨーガとのつながりは極めて弱い」と指摘しているという。


ヨガの歴史(古典ヨガと現代ヨガ)

伊藤氏によると、
現代体操ヨーガの基礎は20世紀前半に築かれた。
インドの伝統武術、曲芸、西洋式体操などの身体技法を組み合わせて「造られた」もの。
19世紀のヨーロッパでは、精神だけでなく肉体を鍛えようとする「身体文化」が興隆した。
20世紀に入ると、インドではその流れを受けて、国産のエクササイズを生み出そうとする動きが活発化した。そこで、ヨーガ・スートラの伝統に基づくという解釈によって「権威づけ」された。
ということのようだ。

つまり、韓国が芸能で国をアピールしようとしているのと同様、日本がアニメで国をアピールしようとしたのと同様に(これは結局うまく行っていないのかもしれないが)、インドは欧米の体操文化とヨガを関連付け、ヨガで国をアピールしようとした。その時に、ちょうどよい古典文化と関連付けることにした。ということだと思う。

では、なぜ、現代体操ヨーガが、昨今、呼吸法・集中法などの要素を取り入れつつあるのか。
これについて、伊藤氏は
「現代体操ヨーガの実践者たちが、実践の中で、自己の内面とのつがなりの重要性に気づき、それらを取り入れていった結果」と解説している。
だからこそ、現代体操ヨーガ実践者の中で瞑想がブームになったり、全米ヨガアライアンス認定のヨガ教室と、マインドフルネス講師がタイアップして
クラスを実施しているのはそういった理由があったのだ、と腑に落ちた。

私がやっているIARPのヨガ

IARPの実践には、現代体操ヨガ(現代ハタヨガ)のみではなく、古典ヨガの全エッセンスが含まれている。
つまりは、身体を整えるのみではなく、「心をどう落ち着かせるか」に関するモジュールにも取り組んでいる。
※カルマヨガのことを「超作」と読んだり、本山博氏独自のワードを選定していることも多いので、ワードはそのままではないが。内容は古典ヨーガの全内容を包括している。

書籍によると、日本で広がった以下流派も、古典ヨガ由来のようだ。
中村天風氏「天風会」「心身統一法」
沖正弘氏「沖ヨガ」
桐山靖雄氏「阿含宗」
本山博氏「IARP」
インドの優れた伝統文化を「断片化」させず、そのまま取り込む日本人の感性、素敵だと思う。


古典ヨガは体操ヨガのみではない

ここ数年の自身の実践結果から、IARPヨガを実践していると、仕事のやりやすさが断然変わってくる、というのが、私の実感だ。
「なんとしても次で昇給したい」「上司に怒られたら嫌だ」「問題を起こしたら隠したい」というマインドセットから
「上司と意見が合うかどうかは知らないが、とりあえず言っておこう」「問題が起きたら起きたで、消火のためのアクションを打ち込めばいい」「怒られるか否かはどうでもいい」というマインドセットに徐々に変わってきている感じがする。

価値観を
「上意下達」「荒波を立てない」「主張より調和」「前例・成功事例が好き」から
「自身とチームの納得感が大切」「上司が言うことが正しくないこともある」「立場によって見える視界が変わる」に切り替えることができている。
(企業文化による「オートパイロットモード」から自身による「自己運転モード」に切り戻せる、ともいえるような気もしている)

企業の文化刷新、イノベーションに必要なこと

ここからは持論だが、
日本企業は歴史が長くなればなるほど、「上意下達」「荒波を立てない」「主張より調和」「前例・成功事例が好き」という企業文化(ユングを引用するならば、集団的無意識ともいえるかもしれない)が幅を利かせているように感じる。

多くの企業では、現在、既存事業の延命ではなく、新しいことへのトライが求められているがなかなかうまくいかなかない。その理由の1つは、個々人の搭載しているマインドセット(OS)にあるのではないか。
(重要なのは「AI」「ChatGPT」などの技術ではなく、
「アジャイル開発」、「プロダクトレッドマーケティング」などの方法論ではなく、
その背後にある、社員、チームの「マインドセット」なのではないか)

そして、企業の文化変革は、ボトムアップでは起こせない、経営者自身の考え方が、その企業の視点になる。(気がする)

すなわち、大企業上層部が、資本主義の歯車の回転数を増やすこと(=売り上げを伸ばすことのみ)から意識を離し、自分自身や社員のマインドセットに意識を向けることが、強力な企業文化の呪縛から解放されるきっかけになるのではないか。

そう考えると、大企業幹部が、古典的ヨガの実践に取り組み、自身のOS(マインドセット)を更新することは、企業のイノベーションにも重要なのかもしれない。

かつて中村天風氏が、松下幸之助氏、稲盛和夫氏など、偉大な経営者に古典的ヨーガ由来の実践を教えたことは、Japan As No.1を生み出すきっかけの1つだったのかしれない、と思う。

※今回、宗教社会学者兼ヨガ実践者の伊藤雅之氏、ヨガ実践者の岡本直人氏、ヨガ実践者の成瀬雅春氏の書籍をベースに作成しています。

ケン・ウィルバー氏の「すべては正しい、しかし部分的である」を引用するまでもなく。この記事も、現在の私の視点に過ぎません。
人、立場によって異なることもあると思います。
もし、記載に誤りや、別の見解などありましたら、ぜひコメント欄などでご連絡いただけるとありがたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?