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ある雨の日の情景

 危ない!
 尖った凶器が迫る。
 雨の日の駅のホーム。前を歩く人がカサを持って歩いている。元気に腕をしっかり振って歩いているので、腕の動きにあわせてカサの先が後ろを歩く人に迫ってくる。
 階段を上るときは最悪だ。前を歩く人がカサを振ると、カサの先が刃物を突き立てるように、ちょうど顔面のあたりに迫ってくる。
 カサは振ってはだめだ。カサは垂直に持って歩かなければならない。
 若い者ばかりではない。何十年も生きてきていろんなことを経験してきたはずの老人も、元気に腕を振って凶器を振り回す。元気なのはいいが、後ろを歩く人のことは全然考えない。
 よく事故が起きないものだ。カサでケガをした人がいれば、そんなニュースをやって啓蒙すべきだろう。WBCで活躍した日本人選手の今の試合を全部紹介する時間の、ほんの少しを使って注意喚起できないだろうか。
 カサは振るな。

 電車の中ではリュックサック。
 ちゃんと体の前で持つ若者も多いが、大きな大きなリュックを後ろにかついでいる学生も多い。大きなリュックは、体をほんの少し動かすだけで後ろの人に当たる。
 若者ばかりではない。ちゃんと前でリュックをかかえる若者の横で、背中にかついでいる年配の人。会社でも周りの人のことを考えずに自分勝手な仕事をしているんだろうな。そんな目で見てしまう。
 年齢は関係ないけど、周りの見えない人のなんと多いことか。

 そんなことを思っていると、ラジオでこんな話をしていた。(昭和世代はラジオも普通に聞く)
 座席はほぼほぼうまっており、立っている人が数人いるくらいの電車に乗った。
 横長の座席の左端に座っていると、大きな重そうなカバンを背負った男性が後ろ向きで横に立った。
 そのカバンが座っている私の肩の上に乗っている。カバンをどかそうとムズムズ体を動かすが、カバンは全然動かない。重いカバンの重量の何割かは私の肩が担当しているのだ。少し軽くなっているはずだから気づけよと思うけど、カバンはびくともしない。
 体を動かし続けているうちに駅に着いた。
 せめてにらみつけてやろうと思っていると男性はダッシュで電車を降りた。急いでいるようだ。
 その男性の姿を追いながら、カードの残金が足りなくて改札で足止めをくらえ、と祈った。

という話。


 雨の日の緊急提言。
 他人のフリ見て我がフリ直す日々。



 タイトルを見て、「バスが止まって/外は雨が降っている~誰かがタバコに火をつけた♪」と歌えるのはよしだたくろう世代だろう。


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雨の日をたのしく

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