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「地域のための、地域に愛される球団へ」和歌山ファイティングバーズ

今季、運営体制を一新し、リスタートをきった和歌山ファイティングバーズ。田辺スポーツパーク野球場でおこなわれた今季最後のホーム2連戦には、平日昼間の開催にもかかわらず、100名を超えるファンの姿がありました。

10月27日

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「スタンド席だけでなく、内野芝生席にもお客様がいる……!」シーズン開幕当初からは考えられない光景に、田所球団代表は喜びと安堵を含んだ声で言いました。

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「今日お客様が多いのは、入場無料だからという理由だけじゃないんですよ(※27日、28日は入場無料で開催)。有料の試合でも、ホーム戦を重ねるごとにお客様が増えてきていたんです。そして今日とうとう110名のお客様が足を運んでくださった。本当にありがたいことです」

入口受付には、球団スタッフの吉川さんのアイディアで選手へのメッセージボードが設置されていました。

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ボードには、ファンの方からの応援メッセージが次々貼られていきます。見ると自然と穏やかな気持ちになるーー和歌山の応援の温かさがそこにありました。

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この日は両チームともノーエラーの好ゲーム。先発の岡田海が7回2/3を1失点に抑える好投を見せると、打撃では深谷力が第2号となるランニングホームランで援護。

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たくさんのファンが見守る中、和歌山ファイティングバーズは4-1で勝利しました。

10月28日、ホーム最終戦

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「最後にたくさんのお客さんと応援ができてうれしい」と話すのは私設応援団、紀州闘鶏会の団長。団長のリードに合わせていっせいにスティックバルーンをたたく大きな音が、球場に響きます。

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コロナ禍でなかなか思うように応援活動ができず、応援団も選手と同じようにじれったい日々を過ごしてきました。「ボク、(嬉しくて)あとで泣きますわ」入場者数は今季最多の140名でした。

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この日は、12-1の圧勝。7回に甘露寺仁房選手のホームランなどで一挙に7点を奪ったほか、7人の投手が継投して相手打線を封じこめました。

勝ち投手となった杉本大樹投手は、「選手のアルバイト先の人がみんな見に来てくれたんです。打席に立つとき、マウンドに向かうとき、お客さんが選手一人ひとりに拍手をしてくれました。今までと全然違うかった」と顔をくしゃくしゃにして、うれしそうに振り返りました。

お客様が球場に戻ってきた

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入場者数が110名、140名と聞いて、少ないと思う人もいるかもしれません。しかし和歌山ファイティングバーズの昨シーズンの入場者数は平均26人。1年で大幅に増加したのです。

「去年はノベルティグッズを配ってもほとんどだれもこなかった。お客さんを増やそうと球場の周りをジョギングしている人に声をかけたり、犬の散歩中の人を呼び止めたりしたこともあります。

今は、お客さんが増えただけはなく、リピーターとなってくれている人もいる。開幕前は何から始めたらいいかわからず不安なときもあったけど、すごくうれしい」と、吉川さんは喜びを隠せません。

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入場者数が増えた要因のひとつは、メディアの力です。多くの人にチームを知ってもらうには、地元メディアの後押しが欠かせません。今季、チームは選手紹介や試合情報の提供、番組への出演など、色々な場面でメディアのバックアップを受けてきました。

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(応援隊長、リトル清原さんの尽力も大きい)

田所さんは「紀伊民報さん、FM TANABEさん、和歌山放送さん……メディアの力はとても大きいんです。本当にありがたいです」と話します。

「ありがたい」を「当たり前」にしないように

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入場者数が増えたもうひとつの要因は、選手や関係者の意識です。選手と関係者は、「いつも応援してくださる方の存在はとてもありがたい。わたしたちはこれを当たり前だと思ってはいけない」 という共通認識をもっています。

「ありがたい」は漢字で「有難い」。つまり「あることが難しい」「まれ(奇跡)である」という意味です。その反対は、あって当然という意味の「当たり前」。

このことから「ありがたいことを当たり前にしてはいけない」と、田所さんは考えています。

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もちろん選手たちも同じ考えです。選手たちにインタビューするなかで「地域で応援してくださっている方の期待に応えたい」「優勝して、お世話になっている方たちに恩返しがしたい」という感謝の言葉を、何度聞いたかわかりません。

地域密着の「おらがまちの球団」へ

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独立リーグは、地域の応援なしでは成り立ちません。地域のスポーツは、地域に愛されてこそ発展します。

試合終了後の記念撮影を前に「先にファンの方に挨拶をしてきていいですか」とファンの方の元へ急ぐ選手たちの姿に、和歌山ファイティングバーズが「おらがまちの球団」として愛される未来を見た気がしました。

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支えてくれたすべての人へ、和歌山ファイティングバーズは来年こそ、優勝という恩返しを誓います。

(文:さかたえみ  写真:SAZZY、さかたえみ)

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