アウフヘーベンの良い例

ある対象に対して、
絶対、これは丸だと思ってる人がいる。
絶対、これは長方形だと思っている人がいる。

どちらも自分が間違っている訳はないと確信しているし、
お互いに、丸と長方形の概念が一致している事も確認済み。

では、なぜこのようなことが起こるのか。

その対象を視点を変えて、俯瞰して見たら、“円柱“だった。

お互いが同じものを見ていたとしても、
視点を変える過程で見えてくるものがアウフヘーベンの本質である。

「アウフヘーベン」とは、ヘーゲルが提唱した弁証法の一つであり、止揚と訳され、「対立する考え方や物事からより高い次元の答えを導き出す」といったような意味で説明されることが多いが、この説明からすると、非常に高度な思考テクニックな気がするが、上記の例だとそこまで難しい話ではないことが分かる。

そしてこの例の重要なポイントは、2者が見ている視点からは間違いなく2次元の主張通りの形にしか見えないが、視点を変えて見ると、3次元の円柱だったという事である。

これは、丸と長方形を足したからといって、円柱にはならない。
丸と長方形の要素を持つものとしての“問い“を、違う視点に立つことで円柱が見えてくる。

自分が見えている世界の次元は、本当にそれなのか。
他の視点から見ている人はいないか、
どうしたら一緒の次元で世界を見ることができるのか。

もっと細かい話をすれば、それぞれが使う言葉は、どの解像度(視点)で語られたものか。
それを擦り合わせなければ、本当の相互理解はできないのではないか。

他者と世界を完全に共有するのは不可能に近いだろうが、
お互いに共有しようとするアウフヘーベンの姿勢が、平和な世界を作ると信じている。

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