連載小説 ジョー・ナポリタンの栄光無き人生 第二回
ジョーの出番は誰かが塁に出た時にやって来た。監督が審判に代走を告げる。ジョーはダグアウトから跳ねるように出てくる。リズミカルに左右のつま先で地面を叩き、スパイクに付いた土を落とす。そして、ぐっと前傾すると、交代を告げられた選手のいる塁まで一目散に走るのだ。まるで風のように。
ジョーは交代する選手と目すら合わせない。これはあとで語ることになるかもしれないが、ジョーはチームにおいて一匹狼、あるいはのけ者だった。誰もジョーと仲良く会話しないし、ましてディナーを共にしようなどとはしな