親友がモテ期かもしれない話

 僕には親友と言っていい存在がいる。そんな彼がモテ期を迎えているかもしれない。学生時代はくだらないことをではしゃいで、今も中身のない会話を繰り返している。そんな彼が人生で様々な経験を積んでいる。なんとなく寂しさを感じてしまうのは何故だろう。

 彼との出会いは中学1年生の時だった。僕の席の1つ前に座っていたから仲良くなったのだと思う。正直仲良くなったきっかけは覚えていない。友情ってそんなもんだよね。彼は陸上部に入部した。僕は3ヶ月ほど遅れて入部した。取り組んでいる種目は違ったけど、練習終わりによく遊んでいた。当時はお互い恋愛云々なんて話はなく、今を生きる男子中学生だった。

 高校ではお互い離れ離れになった。遊ぶ機会はめっきり減ったが連絡は定期的に取り合っていた。彼に彼女が出来たという話を聞いたのは高2の終わりか高3の最初あたりだったと思う。本人ではなく彼のお母さんから聞いた。その時は先を越された、と思っていたが部活が忙しいため特に恋人らしいことはしていないこと、高校を卒業したら別れることが分かっているからそこまで気持ちがないことを聞いて何とも言えない感想を持ったのを覚えている。

 高校を卒業すると僕は関西の大学に進学し、彼は関東の企業に就職した。本人が話していたように彼女とは別れたらしい。就職して彼女は出来たとかいう話を時折したが、興味がないの一点張りだった。中学時代と同じで何となく安心していた。

 僕が就職するのと同じタイミングで彼は会社を辞めてデザイン系の専門学校に入学した。4つ下の子たちと一緒に学ぶことに対して特に不安はなかったようで、僕も心配していなかった。元々の手先の器用さに加えて、会社員時代に培った技術力を専門学校で活かして優秀な成績を残しているようだった。

 そんな彼が女の子からお出かけに誘われたというのが専門学校卒業前の秋だった。作品を作っているときに声をかけられたらしい。「何そのアニメみたいなイベント」とか思ったが、彼も珍しく乗り気だった。何度か出掛けたようで年末前には彼から告白して交際に至っていた。

 彼自身、彼女のことが好きと話していた。元々他人にそこまで興味があるタイプではなかったので僕はそのことを聞いて嬉しくなった。羨ましさよりも幸せになってほしいという思いが勝っていた。彼女とどこに行ったとか何を食べたとかいう話を聞くのが好きだった。

 ただ、彼女が中国地方に転勤になるということで、交際は終わりを迎えることになった。まあ、物理的な距離はどうしようもない。新しい恋を探せよ、なんて軽口を叩いたが資格勉強があるから当面しないとのことだった。実際に仕事終わりや休日に学校に通い勉強に励んでいた。僕と同じで独身だろうなと思うと少し心強かった。

 秋ごろに試験を終えるとしばらく羽根を伸ばしている様子だった。そんな時、専門学校時代の友人からアプローチされたらしい。一度は交際する流れになったそうだが、相手が冷静になりたいとのことで時間を置くことになったようだ。その後、今度は別の女性からアプローチされたと話してきた。結局、前者の女性とは進展がなく後者の女性と交際することにしたそうだ。中学時代の彼を知っている身からすると、大人になったなぁという感想が出てきた。

 今の彼女とは未だに続いているらしい。ただ、交際していることは一部の人間しか知らないため、フリーと思っている女性からたまにデートのお誘いがあるらしい。「浮かれてますなぁ」なんて茶化したら「モテ期かもしれない」なんて返してきた。少し腹が立った。

 男は自分から行動しないと恋人は出来ないと言われている。自分から行動した僕は以前投稿したような経験をした一方で、行動しなかった親友はそれなりに相手が出来ている。この差はなんやねん、と思ったりもしたが考えても仕方がないので仕事を頑張って現実逃避するしかないなと思う。

 だらだら嫉妬くさいことを書いたが、親友に幸せになってほしいというのは本心なので、彼の気持ちが続く限りは応援していくつもりだ。

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