2-⑥照山さんの登場と部長くんの失脚(2)

照山さんが入社してからすぐ、部長くんが家族旅行とかで一週間留守にすることがあった。これまでも、休むときに連絡のない部長くんで、ふだんの動向もあたしたちにまったく連絡せずに遅く出勤してきたり、どこかに行ったり。

「それって仕事をやっていく上でどうよ」と内心不満だったあたしは、「これはおかしい」と社長に愚痴った。それを馬鹿正直に社長は、部長くんを厳しく𠮟りつけたらしい。照山さんが入社して、気を使ってあれこれフレンドリーに話しかけるあたしの様子をみて嫉妬していたらしくもあった部長くんとの関係が、それからねじれだした。

出社時間も不明でどこに行くとも告げずに消えることの多かった部長くんだが、その頻度がぐんとあがった。あたしへの当たりが目に見えてきつくなりだした。あたしは気づかぬふりして相変わらずにこやかに対応していたけれども。そうして照山さんが入社して二か月後に決定的な「事件」が起こった。

あたしの担当する案件でとあるトラブルがあり、どう足掻いてもあたしひとりではさばききれない事態となった。社長が注力している事業で、これはなんとしてでも乗り切らなければならない。社長に相談して業務的に余裕のある照山さんに手伝ってもらうことにした。

照山さんに打診すると「いいですよー」とのことだったので、手伝ってもらう部分について説明していると部長くんが部屋にはいってきて
「なにをしてるんですか。それやめてもらえますか。照山さんの業務範囲外です」
と言い出した。
「社長にも許可とっているんですが」
と言うと
「社長を呼んできてください」
と言う。
一階に降りて、あれこれを指示している社長にその旨告げると「わかった」と言いつつも
「俺が社長なのに、部長が俺を呼びつけてんの?」
「はあ…」

それで社長があがってきてみると、
「照山さんとの契約に違反している」
などとぐちぐちいう。照山さん本人は
「正社員としての雇用ですし、別にいいんですけど…」
と言っているというのに。

「それはわかったけどさ。八田っち。なんで社長の俺が、偉そうに呼びつけられなきゃいけないわけ?」
と社長が問うと、
「そんなこと言ってません」
と言うので、それまでのあれこれが積み重なってついにキレたあたしが
「はぁ?言いましたよね!」
と言うと、部長くんも興奮しだし
「おらぁ、なんだその態度!だいたい、なんだ…」
とか言ってエキサイトしてわめき、恫喝しだした。
「だいたい、なんですか、その目は!目力があるんですよ!言いたいことがあるんなら言え!オラァ~」」

けっ、チンピラ以下め。
そんなチンケなわめきでこっちがビビるとでも思ってんのか。
あたしの元夫はイケイケの組の元イケイケ組員ぞ。
お前みたいなチンピラ以下のきぃきぃなんて、なんでもないわ。
てか、「目力」って褒め言葉ちゃうん。
そっかー、あたし目力あるんや~。(内心部長くんもビビるほど)うふ!

黙ってあたしに並んで怒られてた社長が
「まあうん、蘭さんの態度もよくない」
と言うのでその場を収めるために
「それは申し訳ありませんでした」
と大人なので謝った。

部長君はその場ではいちおう、収めたがその後、執拗なあたしへのいじめがはじまった。

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