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10年10万kmストーリー 第4回 BMW 325iカブリオレ(1987年型)29年21万9000kmこだわりがないのが私のこだわり



 広告業界に才能が集まっていた時代があった。
 僕が大学生の頃には、それまで黒子的な存在だったコピーライターに注目が集まり始めた。ウディ・アレンに筆を持たせ、「おいしい生活」と書かせたパルコの宣伝がもてはやされた。
 それまでの言語的な常識から、“生活”を修飾するのに“おいしい”はふさわしくないのだけれども、それをつなげてコピーとしたのは糸井重里のセンスと能力の現れだったし、当時の日本人はそれを新鮮なものとして受け入れた。
 他にも川崎徹や仲畑貴志など多くのコピーライターたちが広告業界の枠を飛び越えて文化人としてもてはやされていた。
 コピーライターの以前はカメラマンやアートディレクター、その前はデザイナーが有名になっていっていた。それぞれ専門職として広告業界の内的な存在だったのが、業界外には仕事と名前が知れ渡り、時代の寵児として躍り出てきていたのだ。

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