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カネタク牧場式『テーロス還魂記』ドラフト攻略:基礎分析編

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■ はじめに

本記事は4部構成となっています。

『メカニズム』では、テーロス還魂記の収録メカニズム「脱出」「星座」「英雄譚」「信心」について、関連カードを示しつつ解説します。

『カード一覧』では、マナコスト別クリーチャー一覧、除去一覧、ボム一覧などの画像を掲載し、それぞれについて解説します。

『コモン優先順位』では、現時点で考えている『コモンのピック優先順位Top3』の案を掲載しています。

最後の『色の強さ』では、対人ドラフト3-0デッキサンプル約80件を集約して見えてきた、勝ち組/負け組カラーについて考察します。


1.メカニズム

1.1.脱出

脱出カード一覧

 脱出カードは墓地リソースを再利用するメカニズムであり、黒と赤に多い。素の能力はやや物足りないものが多く、脱出による再利用ありきで採用することになると思われる。恐らく一番強い脱出カードを可能な限り使いまわすことになるため、脱出カードは量より質が重要、かき集めることの意味は薄いと思われる。

ミルカード

 墓地を肥やす、いわゆる《石臼》系のカードは青と黒に割り当てられている。黒いデッキは意識しなくともある程度勝手に墓地が肥えていくのに対し、青いデッキは積極的に墓地を肥やすカードを採用する必要がありそうだ。単純なライブラリーアウト戦略は相手の脱出戦略を超強化する友情コンボと化すため、相手に撃てる《石臼》系カードも基本的には自分のライブラリーを削る用途で使うことになるだろう。

ルーター

 脱出は一見マナフラケアのできるメカニズムに見えるが、余った土地を墓地に送る方法がない限りマナフラケアとしては機能しないことに注意したい。そのためルーティングができるカードの価値は通常よりもかなり高くなっているといえる。恐らくだが脱出カードがあるデッキにおいて、墓地を1枚肥やすことは0.25枚カードを引くことと同程度のバリューがある。

1.2.星座

星座カード一覧

 星座はエンチャントが場に出たときに起動する誘発型能力の総称であり、聖なるバントカラー(白青緑)にしか存在しない。コモン星座は星座前提でないとデッキに入れたくないレベル。アンコモン以上の星座は・・・やっぱり星座前提でないと採用したくない。

 《歩哨の目》などの脱出付きオーラを使うと星座を繰り返しトリガーできる。星座カードにおいて起動チャンスが何回あるかは重要なファクターなので、基本的に星座カードはマナコストが軽いほうが強い(そのあとエンチャントを場に出せる確率がより高いため)。

エンチャント生物

 幸い、各色にエンチャント・クリーチャーがやたらたくさん用意されているので、星座を1回もトリガーできないデッキができることのほうが珍しいだろう。星座を誘発させるという観点では、星座持ちカードよりも遅く場に出てくる確率が高いため、マナコストの重いエンチャント・クリーチャーのほうが望ましい。ただし重いエンチャント・クリーチャーは1,2マナのエンチャント破壊で処理された際にテンポロスが著しいため、採用時には注意が必要だ。

1.3.英雄譚

英雄譚カード一覧

 英雄譚は数ターンに渡って影響を及ぼすエンチャントであり、全色アンコモンに1種、レア以上に1種ずつ存在する。アンコモン英雄譚はそこまでではないが、レア英雄譚は強烈な影響力を及ぼす。特に神話レア《キオーラ、海神を打ち倒す》は設置してターンが帰ってくればだいたい勝ちというレベル。総じて第一章は(比較的)大したことない効果なので、設置された後で破壊する選択肢を積極的に検討すべきだろう。

1.4.信心

信心カード一覧

 信心はパーマネントの色シンボルが偏っていると良いことがあるメカニズムであり、なぜか赤だけとても枚数が少ない。信心を積極的に稼ぎたい色は白・黒だろう。とはいえ黒以外の信心はそこまでパッとしないものが多く、カードパワーを犠牲にして信心を稼ぐ構築を目指すケースは少なそうだ。

ニクス生まれ

 信心を稼ぐ用途として作られたのか、スペックは大したことないのに色シンボルがやたら厳しいバニラクリーチャーが用意されている。信心カウントや星座トリガーが著しく不足している場合は採用の余地があるだろう。


2.カード一覧

2.1.コモン生物

▼ 1マナ域

1マナ域

 一応すべての色に1マナ域のコモン生物が存在する。赤以外は一定の価値がありそうである。ちなみに3-0デッキサンプルを80例ほど集めた結果、《サテュロスの悪知恵》をメインに入れているデッキは1例だけ存在した。

▼ 2マナ域

2マナ域

 2マナ域は赤の強さが目立つ。赤の2マナ2/2にメリット能力がついているのは流石現代マジックといった感じだ。3-0サンプルにおいては《失われた群れのレオニン》《高波の神秘家》《セテッサの散兵》あたりの採用率が低く、意外というべきか《卓絶した特使》《激浪の亀》の採用率は比較的高かった。

▼ 3マナ域

3マナ域

 3マナ域は特に黒の層が厚い。素のサイズで「パワーが4以上」を満たすのは《毒々しいキマイラ》のみだ。3-0リストで採用率が高かったのは《ヘリオッドの巡礼者》《死の国の突撃馬》《モーギスの魂刈り》で、特に採用率が低かったのは《不遜な歓楽者》だ。また、緑においては《ハイラックス塔の斥候》よりも《毒々しいキマイラ》を優先したデッキが3-0をマークしている傾向にあった。

▼ 4マナ域

4マナ域

 黒・赤・緑には素のサイズで「パワーが4以上」を満たす生物が存在する。3-0リスト採用率の特に高いカードは《毒の秘義司祭》《大食のテュポーン》だ。

▼5マナ域

5マナ域

 《夜明けのキマイラ》は点数で見たマナコストは5なのでこちらに掲載しているが、おおむね4マナのカード。黒・赤・緑のクリーチャーはすべて「パワーが4以上」をトリガーできる。5マナ域という高コスト帯だということもあり、どのカードもそこまで3-0リスト採用実績は多くない。

▼ 6マナ域以上

6マナ域以上

 大方の予想通り、3-0デッキで採用率が最も高いのは《枯れ吐息のカトブレパス》。ほかの2者との差は圧倒的だ。

2.2.除去

 除去は「タフネスを参照する除去」と「それ以外」を分けて見ていく。

▼ タフネス参照除去

タフネス参照除去

 前回のエルドレイン環境とは違い、複数のタフネス1生物を1枚で処理できる除去が多数収録されている。ただし中盤以降に機能するデザインのものが多く、序盤のタフネス1生物を捌くのには意外と苦労するかもしれない。例えば2ターン目に出てきた《イリーシアの女像樹》をテンポ損なく除去できるのは《モーギスの好意》のみである。《最後の噴煙》は気軽に2枚以上採用できるカードではないため、タフネスが5以上あるクリーチャーはかなり除去耐性が高いと言ってよいだろう。

▼ タフネス非参照除去

その他除去

 コモンのサイズ無制限除去は白・青・黒に存在し、いずれも3-0デッキにおける採用率が非常に高い。やはりリミテッドでは除去が強い傾向にある。

▼エンチャント破壊

エンチャント破壊

 コモンに2種、アンコモンに1種存在するエンチャント破壊はテーロス環境においては除去にかなり近い働きをする。しかし当然腐るリスクがあり、2枚取れていても1枚はサイドに置いておくケースも多い。

2.3.ボム

ボム

 ボムは挙げるとキリがないので、放置すると速やかに負けそうだと感じるカードを独断と偏見でリストアップさせてもらった。レアのボムは4点火力があればけっこう対処できそうである。除去耐性もある神話のボムについては、出されたら速やかに投了し時間を節約するのが良いだろう。

 どうやらボムボムしい環境のようなので、重量級ボムをケアするためにドラフトであってもカウンターを1,2枚入れることがセオリーになる可能性がある。瞬速がテーマの一つなのでシナジーが組みやすい点が追い風。


3.コモン優先順位

 研究の段階が進めばかなり変わりそうではあるが、あくまで現時点で個人的にTop3だと考えているカードをリストアップした。

3.1.白コモン

▼ 1位:《凄絶な無気力》

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 まず、除去。無条件除去であり、《ヘリオッドの巡礼者》や《運命的結末》とのシナジーもあり、《栄光への目覚め》《ラゴンナ団の語り部》とも噛む。また追放モードで脱出持ちも後腐れなく追放できる上に自身の脱出にも貢献する。1枚でこれらすべてができるのだから順当に強いといえるだろう。システム生物を除去するには合計6マナ必要な点には注意。

▼ 2位:《夜明けのキマイラ》

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 重なれば重なるほど嬉しい中堅クリーチャー。白メインのデッキであれば大抵4マナ以下になる。タフネス4の飛行・到達がそこそこ居るので《歩哨の目》と組み合わせて戦線を突破するなど一工夫を加えて使っていきたい。

▼ 3位:《ヘリオッドの巡礼者》

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 白の3位はアドカード。最強強化系オーラや除去オーラの枚数を事実上水増しできる凄い奴。《憎しみの幻霊》などのオーラシナジーを安定させ、残った1/2も(0/2とか0/1とかに比べれば)仕事ができないわけではない。エンチャント先がないと使えない除去《イロアスの恩寵》に最低限の選択肢を提供する点も偉い。

3.2.青コモン

▼ 1位:《魚態形成》

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 まず、除去(2回目)。クリーチャー化している状態であれば神も魚にすることができる。全てが鹿になっていた昨今のMTG界隈、別に神が魚になってもどこもおかしくはない。最近のエキスパンションではエンチャント先を1/1にするカードが多かったが、1/1と0/1では全然次元が違う。

▼ 2位:《意味の渇望》

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 アド厨のLSVは青コモン1位に挙げていた。エンチャント多めなデッキでは安定して2枚ドローできるだろうし、脱出デッキであれば後半余った土地を2枚墓地に落として脱出ポイントを3点稼げる。土地が3枚で止まったシーンで使えば高確率でマナトラブルを解決できるなど、いろいろな局面で使えるかなり多芸なカードだ。

▼ 3位:《鬱陶しいカモメ》

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 3マナ2/2飛行の時点で《風のドレイク》と同等、さらにテーロス環境には瞬速シナジーもある。除去orカウンターと《鬱陶しいカモメ》の2択を構える瞬速デッキを目指していきたい。

3.3.黒コモン

▼ 1位:《ぬかるみの捕縛》

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 まず、除去(3回目)。使った直後に墓地に行くのが偉く、一度場に出て星座を誘発できるのも偉い。4枚あれば4枚使うカード。タフ4以上の生物であっても貼り付ければほとんど無力化できるだろう。

▼ 2位:《最後の死》

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 若干重く複数枚を積極採用したいかと問われると怪しいが、タッチでも使えるインスタント速度の無条件除去は貴重。

▼ 3位:《毒の秘義司祭》

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 相手クリーチャーと相打ちを取れば墓地が合計4枚肥えるので、脱出デッキにおいては4マナ3/3に実質1ドローが付いてきているようなもの。《枯れ息吹のカトブレパス》は3枚入るか怪しいが、こっちは3枚あれば大抵は3枚入る。なお黒のコモントップ3はLSVと全く一緒なのでたぶん合っていると思う。

3.4.赤コモン

▼ 1位:《イロアスの恩寵》

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 まず(略)。4点あればボムレアにもまあまあ対応できる。

▼ 2位:《焼夷神託者》

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 2ターン目に展開して高い戦闘能力を発揮しつつ、パンプアップ能力のお陰で後半戦でも存在感がある。打ち取った相手を追放する効果もインクの染みなどではなく、例えば《ファリカの落とし子》とかではコイツを絶対ブロックしたくない。より環境にマッチしている《イタチ乗りのレッドキャップ》(注:エルドレインの赤コモン)といった感じ。

▼ 3位:《鍛冶の神のお告げ》

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 2マナ2点は強力だが《ショック》ほどの万能さはない。2マナ域としてカウントできる(≒2ターン目に確実に有効活用できる)かどうかは微妙なので、《焼夷神託者》より優先度は下がると思う。赤にはあまり脱出がないので、攻めるデッキなら希少価値的に《死の国の憤怒犬》のほうが上に来るかもしれない。(黒と緑はコモンに脱出が2枚あるが赤は"実質"1枚)

3.5.緑コモン

▼ 1位:《イリーシアの女像樹》

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 エルドレインにも5色出せるマナクリーチャーは居たが、2マナと3マナでは天と地ほど違う。3ターン目にパワー4以上の生物を出せば4ターン目に6マナが捻出できる。これはコモンカードとしては破格の性能。別に2色デッキでも強いが、無理なく多色化への道が開けてレア受けが広がる点も非常に偉い。脱出のマナコストは重めに設定されているので、マナクリーチャーが1体居ることで脱出可になる、みたいなことも多いだろう。

▼ 2位:《大食のテュポーン》

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 見た目通り強い。7/7で帰ってくるのは流石に異常。

▼ 3位:《戦茨の恩恵》

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 LSV的には緑コモン1位だが、我々的には3位。今回の緑は《自然への回帰》が実質ほぼ除去として機能するので、挌闘除去はそこまで優先度を上げなくて良いというのが理由。とはいえ《自然への回帰》も《戦茨の恩恵》も取れたら取れただけ入れたくなるカードではある。


4.色の強さ

 2020年1月28日時点で収集できている80個弱の3-0リストから、色別に3-0デッキが何個あるかを集計した。

3-0デッキの色

 ※ 白玉と青玉の間の数字が青白デッキの件数
 ※ 白玉の数字が白単デッキの件数
 ※ 一部例外ありだが、不純物3枚以下を単色に分類

 現時点で勝ち組のカラーリングは白青・白黒・黒緑、負け組のカラーリングは白赤・白緑だ。最初期はコモンだけでアーキタイプが成立する赤黒サクリファイスが強いのではと考えていたが、意外と振るわない結果となっている。

 3-0リストを収集した結果だけを信じるのであれば、赤をピックすることはそもそもリスクが高いようだ。一方それ以外の色でも、相棒にする色によって勝ち組にも負け組にもなりうる。とはいえやはり3-0デッキの半数が黒絡みということで、黒はかなり強力なカラーといえるだろう。


おわりに

ここまで読んで頂きありがとうございます。今回はカードプール・数回のドラフト経験・数十個の3-0サンプルから判明したことを記事にしましたが、たぶん1か月くらい経ったら色別推奨戦略にフォーカスした記事を書くと思います。

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