そして青年は人を撃つ

 静まり返った荒野に、一発の銃声が響く。ノエル・チャーチヤードは、いつものように敵の歩哨を撃ち殺してから、いつものように目をつぶり、ドイツ語で主の祈りを唱えた。

 「祈りながら撃つサイコ野郎ってのはお前の事だったのかよ」

 「そう思ってくれるんなら、僕にとっても仕事がやりやすいさ」

 ノエルは、先ほど初めて会った同僚と、短い会話を交わす。ノエルの改造された瞳は、なおも荒野の戦場に目を光らせていた。首からは十字架のついた質素なロザリオ。

 「神父様が傭兵稼業とは嫌な時代になったもんだぜ」

 「僕は神父様なんかじゃないよ」

ノエルは短く否定する。「でも神様に仕える身だってのは本当かな。あともう少し金が溜まれば、この辺にも新しい教会が建つんだ」続けて出現した警備兵に、彼は右目に埋め込まれたモニターの照準を合わせる。

「あいにくこの稼ぎ方しか知らないんだけどね」

 再度の銃声。

 「お前、やっぱりサイコ野郎じゃねえか」

【続く】

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