魚に呪われる

 料理学校の生徒である以上、毎日のようにたくさんの魚を卸します。今日は鯖を22匹卸しました。22匹分の頭を落とし、22匹分の血をシンクに流し、22匹分の内臓を引き摺りおとし、22匹分の脊髄を外し、食す部分以外をボウルにまとめておくと、そこはちょっとしたB級ホラー映画のワンシーンのようで、時々今まで卸してきた魚に呪われるのではないかとゾッとすることがあります。4月から、もしかしたら千匹くらいは魚を卸してきたかもしれません。その怨念はたった3ヶ月半でも途方もないものでしょう。
 そんな日々が続いているからでしょうか、先日、寝床につくと、大量の魚に見つめられながら夜の海底を彷徨うという悪夢を見ました。彼らの怨みは相当なもののようです。私は今の料理学校に入学する際、職人として食べていくということで、我ながらまあまあの覚悟で入学を決めたのですが、私が覚悟を決めるべきは、どうやらそんなことではなく、魚たちから一生をかけて怨み続けられることに対する覚悟だったようです。
 ちなみに今教わっている先生は、30年近く和食の道で生計を立てているそうです。30年分の怨みとなると、夜は相当寝付きが悪いことと想像されます。

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