上原ありす

ドイツ在住 | チェロ奏者 | エッセイスト | 東京藝大卒 | 音楽と文学をかさね…

上原ありす

ドイツ在住 | チェロ奏者 | エッセイスト | 東京藝大卒 | 音楽と文学をかさねながら、暮らしの断片を散文に。その他ドイツの観光・生活情報など綴ります。 http://kaninchen-bau.com/ (オフィシャルサイト) | 日々の呟きはTwitterで。

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  • 〖本好き欧州紀行〗

    チェロ弾きだけど、三度の飯より本が好き! そんな私の旅の醍醐味は、本にまつわる場所を訪れること。 世界の美しい図書館や書店、作家の生家、ゆかりの店…… 〖本好き欧州紀行〗では、ヨーロッパを中心に「本好き必見の素敵スポット」を実際に訪問。レポートと詳しい解説を交え、ご紹介していきます。

  • 音楽を、記す

    チェロ奏者として執筆した『クラシック音楽』に関する書き物をこちらにまとめていきます。

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    ドイツ・ケルンで暮らす日常。こころに湧き上がった言葉たち、目に留めた風景を。写真と散文に落とし、綴ります。

  • ドイツビヨリ

    主にドイツのニュース・出来事・体験記などをまとめています。時折ドイツ以外のことも。

  • 独逸散文写真集

    ドイツの暮らしのなかで見えた、さまざまな情景、日本とは違う習慣、文化。 その瞬間を写真に切り取り、短い散文とともにつづります。 一年を通し、全12作。ぜひお手に取って、ご覧になってください。 ※完成記念セール中 【マガジンでの購入で、個別の全購入金額より半額お得にお買い求めいただけます!】

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チェロ弾き、ドイツに暮らして

これまでドイツの二つの街に住んだが、そのどちらも大聖堂を有していて、そしてどちらも「ライン川」に接する街だった。 私の“ライン”に対する印象は、愛する作曲家 ロベルト・シューマンの影響が強い。 荘厳に、悠々と。ただそこに存在する様。 シューマンは、ラインを古いドイツの神に例えたが、人の世界に起きる出来事などまるで気にもかけない堂々たるその姿は、確かに神を彷彿とさせ、そしてその広大さ故に見つめ続けると、彼―――シューマンのように引きずり込まれてしまうような、そんな畏怖を私

    • ストライキとあなたの命日|2023年3月26日

      あなたの命日である今日、現代ドイツは全土に渡る交通機関の大規模ストライキの前日。 そう、前日なのに。 私が乗る予定だった列車は急遽運行がキャンセルになるし、それ以外にも遅延や運行中止の頻発で、駅はてんやわんや。 すっかり気持ちが萎えてしまって、早々に予定を取りやめて、家まで引き返してきたのよ。 そうやって愚痴をこぼしたら、彼は一緒に怒ってくれるだろうか、それとも小馬鹿にしたように笑うだろうか。 そんな思いを馳せる。我が敬愛するベートーヴェン様に。 「26~28日の

      • ケルンはつとめて | 2023年2月26日

        「冬はつとめて」と明言したのは清少納言だが、私は「ケルンはつとめて」を押し広めていきたい。 “つとめて” は早朝を表す古語で、私は、ケルンを象徴する大聖堂と中央駅には、朝日がひときわ似合うと常々思っている。 暖色の強い光が 澄んだ青を背負った岩肌をあたためるように照らす様 いつもより少しだけ静かな駅舎内にガラスを越えて差し込む様 何度見てもその度に、美しいなと目を奪われる。 今年の春は早く来てくれたと喜んだのも束の間。 そんな訳ないでしょうと嘲笑うかのように、冷え込む

        • こころ満ちる出会い | 2021年8月6日

          知らず、自身の心が乾いていたことを実感する 美しい絵画に囲まれた数時間 心は『満ちる』のだということを 満たすものは芸術なのだということを 改めて知る コロナによるロックダウンの影響で、年単位に及ぶ自粛の後、私にとっては待ちに待った美術館訪問が叶った。 ケルン音大で再会した藝大時代の先輩からの素敵なお誘い。彼女には、こちらでの新居探しの際も大変お世話になった。 中央駅・大聖堂側出口で待ち合わせ、徒歩数分。 初めて訪れた『Wallraf-Richartz-Museum』

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        記事

          幸福は日常にふと転がる | 2021年5月9日

          安い家賃で音出し可能な部屋を見つけるというのは中々に困難で。 Ruhezeit(静休時間=騒音が禁じられている時間)が設けられているドイツといえど、音大生や奏者と近隣住民との騒音トラブルは珍しくない。 私が新しく住み始めたこの部屋も 「住人から苦情が入ったら即、部屋での楽器練習はやめてください」 と、契約時に大家さんから釘をさされた。 それから早数ヶ月。 はじめは戦々恐々としていた日々の練習にもありがたいことに苦情は訪れず。それどころか。 洗濯室で鉢合わせたアパートの古

          幸福は日常にふと転がる | 2021年5月9日

          新居 - Move in | 2020年12月

          赤灰の雲はまだらに 青の名残りをのぞかせている いつの間にか 光は呑まれ 部屋は影に沈もうとしていた 揃えたばかりの家具たちは まだどこかよそよそしい 緊張を孕んで 私を囲い 窺うように 私を見ている 大きな窓から 時が入り込む 縦横無尽に踊り 過ぎ去り まるで知らない場所のよう 私はただぼんやりと 座り込んで それを見ていた 『新居』 Move-in / December, 2020

          新居 - Move in | 2020年12月

          〖本好き欧州紀行〗ヘルマン・ヘッセの故郷 カルフ|ドイツ

          チェロ弾きだけど、三度の飯より本が好き! そんな私がお送りする〖本好き欧州紀行〗 ヨーロッパ各地に散らばる本好き必見の素敵スポットを実際に訪問。レポートと詳しい解説を交え、ご紹介していきます。 今回のスポットは、ドイツ人作家 ヘルマン・ヘッセの故郷 『カルフ(Calw)』 『カルフ』は、ドイツ南西部に位置する バーデン=ヴュルテンブルク州内の町で「黒い森(Schwarzwald)」の北の玄関口といわれています。 そして、作家 ヘルマン・ヘッセが生まれ、その半生を過ご

          〖本好き欧州紀行〗ヘルマン・ヘッセの故郷 カルフ|ドイツ

          ロックダウンの冬にも春の兆し ドイツの新システム『Click&Meet』

          数カ月に及ぶハードロックダウン下にあったドイツ。 スーパーや薬局、郵便局や銀行など、生活に必要な店舗以外は完全閉鎖。 その徹底っぷりは見事で、ドイツのマツキヨ「Müller」などは、高額化粧品や文房具・衣類など、生活必需品以外が陳列された棚や通路にはテープが張られ、立ち入り禁止に。 外食はテイクアウトのみ。それもお店付近での飲食は厳禁。 店外の座席は撤去され、店内は椅子がテーブル上に上げられている状態。 駅構内でさえ、座席にテープが張られ、ホーム以外では座れないように

          ロックダウンの冬にも春の兆し ドイツの新システム『Click&Meet』

          道示す星 ヴォルフガング・ベッチャー氏への弔辞

          2021年2月24日。 また一人、偉大なるチェリストが逝去なされた。 ヴォルフガング・ベッチャー氏 ベルリンフィルの元首席奏者であり、世界で活躍するチェロ奏者であった方。そして、私にとっては、ドイツへの道を作ってくださった方。 オスナブリュックと草津での二回。私は先生のマスタークラスを受講した。 当時録音していたそのレッスンは、今でも時折聞き返す。 シューマンのチェロ協奏曲、ベートーヴェンのチェロソナタ・・・ 特にバッハの無伴奏組曲第二番プレリュードは、ラスト部で

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          【Vlog】コロナ渦中ドイツ音大入試体験記

          ドイツ音大入試の実体験をVlogにしてみました! 撮影当時は昨年9月下旬。ケルン音大バロックチェロ科入試の前日から当日にかけて。 現在数ヶ月に及ぶハードロックダウン中のドイツですが、この時は少しずつ感染者が増え、その足音が聞こえ始めた頃。受験に際しても様々な規制や対策が設けられ、紆余曲折がありました。 しかし裏を返せば、この年だからこその貴重な体験。美しいライン川沿いの車窓風景と、まだまだ未熟な私のバロックチェロ演奏と共に、お楽しみいただけたら嬉しいです。 更に詳しい情報は、こちらの記事にまとめています!⇨ https://note.com/kaninchenbau/n/ndf2001ab0a25

          【Vlog】コロナ渦中ドイツ音大入試体験記

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          長くあたためていたエッセイが完成。http://kaninchen-bau.com/archives/6410 ギュスターヴ・モローという画家は、私にとってそれほどに大切で特別な人。 印象派の時代にありながら、文学を絵画に描き続けた彼は、シューマンと同じく、今の私が進む路を照らすあたたかな灯火となっています。

          長くあたためていたエッセイが完成。http://kaninchen-bau.com/archives/6410 ギュスターヴ・モローという画家は、私にとってそれほどに大切で特別な人。 印象派の時代にありながら、文学を絵画に描き続けた彼は、シューマンと同じく、今の私が進む路を照らすあたたかな灯火となっています。

          メリークリスマス🎄 こちらドイツはハードロックダウンクリスマスですが、私は一人平日と変わらずKölnへの引っ越し作業に勤しんでいます。寂しい?いいえ、これぞリア充! 今年は新たな分野に挑戦する年。厳しいコロナ禍でも懸命に前へ突き進んでいきたいと思います。皆様素敵なクリスマスを!

          メリークリスマス🎄 こちらドイツはハードロックダウンクリスマスですが、私は一人平日と変わらずKölnへの引っ越し作業に勤しんでいます。寂しい?いいえ、これぞリア充! 今年は新たな分野に挑戦する年。厳しいコロナ禍でも懸命に前へ突き進んでいきたいと思います。皆様素敵なクリスマスを!

          実録 『コロナ渦中のドイツ音大入試』 【前編】

          みなさん、こんにちは。ドイツ在住チェロ奏者で時々物書き、上原ありすです。 今回は、コロナ渦中に受験したドイツの音楽大学の入学試験について、書いていきたいと思います。 歴史に残る出来事と言われるこのコロナ騒動。現在でも国ごとに様々な感染対策が為されています。 音大入試時においても規制がかかり、例年と違う点が多く見られました。 それに伴い、大変なことばかりではありましたが・・・思い返せば、今だからこその貴重な体験。折角なのでお伝えしていきたいと思います! ちなみに私は、日

          実録 『コロナ渦中のドイツ音大入試』 【前編】

          日本在住のドイツ人Youtuber🇩🇪Maxie Pickertさんのインタビューを受けました!ドイツの音大で学ぶ魅力、留学へのプロセスなど答えています😊音楽留学を考えている方々、興味のある方はぜひご覧ください! https://youtu.be/54IVxP4BIc8

          日本在住のドイツ人Youtuber🇩🇪Maxie Pickertさんのインタビューを受けました!ドイツの音大で学ぶ魅力、留学へのプロセスなど答えています😊音楽留学を考えている方々、興味のある方はぜひご覧ください! https://youtu.be/54IVxP4BIc8

          http://kaninchen-bau.com/archives/5519 サイトにエッセイを投稿しました🖋 コロナの影響で、部屋にひとり、自身の内面と向き合う時間が増えたこの頃。自分のルーツを巡る話を書きました。 亡くなった祖母との繋がり。それは映画であり、女優のマレーネ・ディートリッヒなのです。

          http://kaninchen-bau.com/archives/5519 サイトにエッセイを投稿しました🖋 コロナの影響で、部屋にひとり、自身の内面と向き合う時間が増えたこの頃。自分のルーツを巡る話を書きました。 亡くなった祖母との繋がり。それは映画であり、女優のマレーネ・ディートリッヒなのです。

          司会・通訳・役者としてドイツでご活躍の緒方綾子さんのチャンネル「タビタビュー」にて動画出演させていただきました!私の住むマインツを巡る散歩動画です! 緊張で空回るOPから徐々にほぐれていく私。暖かい目でご覧いただければ嬉しいです😅 https://youtu.be/iJKoxTHMsIM

          司会・通訳・役者としてドイツでご活躍の緒方綾子さんのチャンネル「タビタビュー」にて動画出演させていただきました!私の住むマインツを巡る散歩動画です! 緊張で空回るOPから徐々にほぐれていく私。暖かい目でご覧いただければ嬉しいです😅 https://youtu.be/iJKoxTHMsIM