沖縄戦から護った祖先の記録 下郡剛『琉球王国 那覇役人の日記 福地家日記資料群』


■2018年1月25日(木)雪

 会津図書館の新館ワゴンから借りてきた本。

 倉本一宏監修「日記で読む日本史17」
 下郡剛『琉球王国 那覇役人の日記 福地家日記資料群』(臨川書店、2017)。

 1944年の10・10空襲の際には、福地唯義氏がリックサックに押し込んで豊見城方面に逃げ、その後の疎開先熊本へも帯同したため現存し、沖縄戦の戦禍をくぐり抜けることができた貴重な資料である(『那覇市史』「解題1」)。

 自筆本には写本や活字本からは読み取ることのできない、行間に込められた記主の想いがある。(略)
 このような貴重な資料群の先行研究が、1998年に『那覇市史』として刊行されて以降、その中の「解説」と「解題」しかないという点も極めて興味深い。このことは、日記を素材として琉球の歴史を語る研究は多く存在しても、史料そのものを研究する視点が不足していたことを意味するのであろう(207頁)。
 
 福地家所蔵の下書き日記から抹消されたこの重要情報(ペリー一行の首里城訪問)は、親見世の清書本には残っていなかったはずだという点である。下書きの日記には多くの削除記事、訂正記事が残る。そしてそれらの抹消記事などは必ずしも間違っていたから削除、ないし訂正されたとは限らない。下書きの日記には、清書本には残らない、貴重な情報が含まれているのである(212頁)。