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韓国の在来種タネの保存活動について 〜 토종씨드림SEEDreamの活動紹介

2021年9月4日の韓国草の根塾オンライン土曜セミナーで韓国の在来種タネの保存と普及活動を行っている토종씨드림SEEDreamから活動の紹介がありました。具体的な内容は会員限定で配信しているYoutube動画を御覧ください。会員以外の方で動画を見たいという方は田中までメッセージを送ってください。

この団体の活動については、今までほとんど日本に紹介されたことがないと思いますし、会の主張や理念も日本では馴染みのない概念などが使われ、活動範囲も広く多岐に渡っています。ここではホームページにある会の紹介の文章を日本語にして皆さんに読んでいただきます。また、いくつかの点については田中のコメントも加えようと思います。

この団体のホームページを見るとつぎのような文句が出ています。

在来種の種子は、共有資産です。
種子の所有権を主張する企業や個人に独占されないための唯一の方法は、種子を保持して、選抜育種することができる権利を農民に戻すことです。

この考えはとてもラジカル(根源的)なものだと思います。労働者に労働権があるように農民にも”農民権”があり、その一つがタネを保持して選別育種し、分配したり販売したりする権利は農民にだけある、という考え方です。では、토종씨드림SEEDreamとはどんな団体なのでしょうか?

토종씨드림SEEDreamとは、在来種のタネと伝統的な農業で生命を守り隣人と分かち合おうとする人々が結成した韓国初の民間団体

在来種のとは
一定の場所で純系で長期間にわたり、その地方の自然環境に適応したその地方独特の生物(種)で、野生のものと栽培のものの両方を含みます

토종씨드림SEEDream シードリム とは
種子(seed)と夢(dream)の合成語で地域のタネがよく保持されるという「種の夢」が実現することを意味すると同時に、「種を差し上げる」の二重の意味を込めています

토종씨드림SEEDream設立
2008年4月、女性農民会総連合、全国帰農運動本部、年頭農場、フクサルリム、韓国固有種研究会、環境農業研究会、農漁村社会研究所などの団体の代表と個人が「消滅する地域の種の保全」という緊急の課題を解決するために団体と個人が集まって結成した非営利の民間団体。 2020年現在、全国に45以上の地域の在来種タネの保存普及の地域グループがあり、また全国帰農運動本部。全国都市農業市民協議会、全国女性農民会総連合、京畿道都市農業市民協議会など帰農や都市農業団体が参加。

ピョンヒョンダン代表をはじめ、在来種タネの専門家であるキム・ウンジンウォンガン大学教授、キム・ソッキ作家、家庭菜園普及会のイ・プジャ代表、チャン・ジェハク在来種タネの学校の運営責任者等が会の運営にあたっています。

토종씨드림SEEDream設立の活動
各地域では、地域の特性に合わせて地域団体と地元の種子を収集し増やしてタネの普及を行い、在来種タネの教育や保存普及活動の活性化が行われています。토종씨드림SEEDreamは、毎年、全国を回って地元の種子を収集、特性調査と増殖し、全国の会員に種子の活用方法と普及し、各地域の特性に合わせて現金化や活用の方法を提示しています。何よりも在来種のタネが農民の手によって保持される「農民権」を保護し、生命の多様性と持続性を持つことができるように政策と法制度化を図りながら、農民、都市農家、一般消費者などの食卓に地元の農産物が上がり、在来種のタネがその地元で保全されることを願っています。

この団体の理念には在来種の保全による生物多様性の向上があるため、行き過ぎた画一化とか規格化には反対をしています。いま、韓国の生協や学校給食の食材の生産現場でも有機農業が進んでいますが、同時にサイズとか色とかの規格化・画一化が一般の慣行栽培と同じように要求されています。このような規格化・画一化は本来有機農業が持っていた目的から外れたもので消費者の要求を優先した結果です。

また、在来種の自然な交配は認めますが、人為的な交配による新種の開発やそれに伴う特許権については批判的です。토종씨드림SEEDreamが出発した当時は在来種の研究やタネの増殖販売をしているフクサルリムが入っていましたが、この問題を理由にフクサルリムはこの会から離れています。

そしてなによりも在来種を保有して、それを使って農業を営む小規模農家と共に歩もうという基本姿勢があります。これらの農家は有機認証をとらずに個別に販売をして生計立てている場合が多いようです。この点では日本の有機農業や自然農業の農家と似ているかもしれません。一方、生協や学校給食の食材を作っている生産者は中規模以上の農家であり、規格に従った生産を行える技術や余裕がある農家といえます。僕の知っている農家も父親が生協の生産者としてはじめ、そのあとをついで大規模に米を作っています。

このように見ると、韓国のオーガニック農業は2つのグループに分けることができるようです。今回紹介した在来種のタネを大切にする小規模農家、生協や学校給食に供給する中規模〜大規模農家。この分類が正しいか、調べてみて、また報告します(韓国草の根塾、田中)

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