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環境過敏症という病気

電磁波や化学物質、低周波音に反応

身の回りの建材や家具、衣類に付着した柔軟剤の香料などから揮発する微量の化学物質が原因で、動悸や吐き気、腹痛などが起きる「化学物質過敏症」という病気があります。また携帯電話やスマホ、WiーFiなどの電磁波で頭痛やめまい、睡眠障害などが起きる「電磁波過敏症」もあります。電磁波過敏症の人の8割は化学物質にも敏感で、低周波音や気圧の変化にも敏感に反応します。こういった環境因子によって体調不良が起きる病気を総称して「環境過敏症」と呼ぶこともあります。

電磁波過敏症の診断ガイドライン

電磁波過敏症は、携帯電話などの無線通信の普及とともに世界中で報告されるようになりましたが、通信業界とのつながりが深い研究者は電磁波と症状の関連性に否定的な傾向があります。一方、オーストリア医師会は、電磁波に関する健康相談が急増しているため、医療現場で患者に対応する医師のために、診断治療ガイドラインを2012年に作っています。

このガイドラインの問診票では、電磁波に関わる症状がどのくらいの頻度で起きるかどうかや、携帯電話やWi-Fi、デジタル式コードレス電話の使用状況などを尋ねています。問診票に書かれた主な症状は、不安感、胸部のしめつけ、うつ、集中困難、落ち着かない、多動、イライラ、疲労感、頭痛、めまい、睡眠障害、音過敏、耳の中の圧迫感、耳鳴り、動悸などさまざまです。一見すると、ごくありふれた症状ですが、気になる方がいたら、問診票でチェックしてみてください。ガイドライン全文(PDF)は下記サイトで紹介し、ダウンロードできます。問診票はガイドラインの最後のほうに記載されています:https://www.ehs-mcs-jp.com/研究-各国動向/

オーストリア医師会のガイドラインでは、こんな質問もしています。

「あなたの家庭や職場で携帯電話を使っていますか?いつからそれを使っていますか?1日にどのくらい使っていますか?あなたの健康問題との関連性に気づいていましたか?」

このような質問を、携帯電亜だけでなく、コードレス電話、Wi-Fi、省エネ型の照明器具、Bluetooth機器についてもしています。また、家庭や職場の近くに携帯電話基地局や、送電線、変電所などがあるかどうかも質問しています。

電磁波測定と対策

そして、オーストリア医師会では、研修を受けた専門家が患者の自宅や職場で電磁波を測定することも医師にアドバイスしています。ドイツやオーストリア、スイスには、バウビオロギー(建築生物学)という考え方があって、建物の化学物質対策だけでなく、電磁波対策なども行ってきました。そのため、電磁波測定の知識のある建築関係者が多数いるそうです。

電磁波と症状の関連性が疑われる場合は、具体的な電磁波対策をするよう、ガイドラインでは勧めています。例えば、

・全てのデジタル式コードレス電話の電源を抜くこと。昔ながらの有線電話(固定電話)を推奨する。

・全ての無線LANアクセスポイントの電源を抜くこと。

・ベッドや机を被曝量の少ない場所へ移動すること。

・特定の家電や照明の使用をやめること、などです。

電磁波過敏症の有病率は?

電磁波過敏症の有病率は、台湾とオーストリアでは13.3%、イギリスで11%、ドイツやスウェーデンでは9%、日本では約6%程度です。日本で行われた調査では、電磁波過敏症の約8割は化学物質過敏症も併発しています。一度発症すると、電磁波を避けて生活しなくてはいけませんが、今はどこにでもwi-Fiがあり、小学校にもWi-Fiが導入されているほどです。

たとえば、私が電磁波過敏症発症者を対象に行ったアンケート調査では(有効回答75通)、仕事を持っていた人の約半数が退職に追い込まれ、体調が悪化するので交通機関を利用できないという人が12%もいました(「臨床環境医学」21巻2号123-130)。

患者さんのなかには、怪我や手術で入院した際に、病院にもWi-Fiが入っているので睡眠薬を飲んで眠ることができず、医師と相談して予定していた入院日数の半分で退院した人もいます。

また、無線通信を行うスマートメーター も、日本だけでなく世界中で健康被害を発生させています。今年から第5世代移動通信システム(5G)が始まりますが、大規模な健康被害が発生する可能性もあり、医師や研究者が5Gをやめるよう求める署名を集め、欧州連合(EU)に提出しています。

自分や家族の健康を守るためにも、身の回りの電磁波発生源を見直してみてはどうでしょう?使用頻度を減らしたり、なるべく離れて使ったりすることでも、被曝量を減らすことができます。今後は具体的な電磁波対策や5Gのリスクについてもご紹介したいと思います。



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