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#10 時代を追うな

またテレビに飯尾さんが出ていた 遅咲きと言われる飯尾さんが 下積み時代に数人の大物からかけてもらったという言葉を紹介していた 「時代を追うな」と言ったのはタモリさんだった

ファッションや音楽などをはじめ 時代や人の嗜好には流行りがある

流行りの服がイマイチ似合わなかったり 流行りの曲にイマイチハマれなかったり 時代に必要とされるスキルを持ち合わせていないと感じた時 「生まれる時代間違えたな」っていう人がいる わたしもそう思うことがあった そうか自分は生まれる時代を間違えたのかって なんとなくその言葉が唯一自分を納得させられる気がした

自分が書く文章はこの時代に合っていないという自覚はある じゃあどの時代に合うものかと聞かれても答えはないのだけど それでも自分はこれが好きでやっているし 時代に合わないこんなやり方でしか生きられないって思う だけどただ一人でもそれをいいって言ってくれる人がいて 認めてくれる人がいたらその人のために頑張りたいし 自分のために続けたいって思う


昔からまったく芸風が変わらないと言われた飯尾さんはこう言った 「これしかできなかったんだ」と その言葉がわたしにとっては「それしかできないことをやり続けていいんだ」って聞こえて なんだか今の自分を肯定してもらえた気になった

わたしは何かを長いこと続けられたことがない 大体のことはその先に可能性を感じられなかったし 見込みのないものを続けるって概念はなかった 長い時間何かと向き合う勇気もなかった きっとずっと時代を追っていたんだ 世の中に合う生き方をするのが生きるってことだと思ってた だからそんな風に生きられない自分を好きになれなかったし 無能なんだと思ってた

いつも自分に何ができるのか探し回って よくいう「何者かになろうとしていた」んだと思う というよりは「何者かにならなければいけないんだ」と思っていた 結局今日まで何にもなれなかった それはきっと時代を追うのに必死で自分を見ていなかったからだ 自分が好きなこと それが一体なんなのか やりたいことはなんなのかちゃんと向き合わなかったから 

誰かや何かのために生きていなきゃダメなんだって思っていた それは興味のないことも時代が必要としているなら それに向き合わなきゃいけないんだって思ってた 自分を押し殺しても必要なことなんだって信じてた 

いい悪い 上手い下手 プロかそうでないか ということでしか計れなかったから 知らなかった 好きなことを好きだって胸を張って言っていいことも それがたとえ下手でもやっていいんだってことも わたしはずっと自信がないまま手をあげるのは恥ずかしいと思っていた

だけど 「いいんだよ 好きなことやこれしかできないってことをやり続けていいんだよ たとえ時代が求めてなくても 自分が求めてることならやっていいんだよ」 タモリさんと飯尾さんの言葉が 自分にそう言ってくれている気がした


今時代に乗って生きてる人たちも長いこと報われない時間があったかもしれない 光が当たる時間はほんのいっときのことだ 表で見えていることはほんの一部なのだ それでもきっと信じてやってきたから 光と時代が交差するタイミングをしっかり捉えることができたのだろう


文学や美術分野でも流行りに似た話題になる時期やタイミングがある

でもファッションなどの移り変わりのスパンが短いものに比べると 話題になった時期を多少逃しても今頃それ?とはなりにくい 話題になる作品には時代背景などのタイミングも関係するけれど 常に変化するカルチャーほど流行を追うのにあくせくする必要はないように感じる

これらは流行りに乗るということよりも それぞれ適切なタイミングで出会うことの方が大事だ 


文学作品といえば書籍 電子書籍もある程度一般化する中で わたしはやはり紙の本にこだわりたい気持ちがある そして自宅にいながらネットで買うこともできるけど 基本的には自分の足で本屋に行って数ある中から出会えた本を持ち帰る その場で手にした本の重みには作者の思いはもちろん この一冊がたくさんの人の努力と愛情によってこの手に届けられたのだということを感じられる

ものの価値は同じでもそれにかけた時間や労力が付加価値となって より魅力が増す それを感じ取るのに流行はそこまで重要じゃないと思う 

世の中や時代がいいというものやことだけじゃなくて 自分が今何をいいと思うか いいと思うことを信じられるか それが大切なんだって気付かされた


だからわたしも時代を追わないと決めた 


なんて言いながらもポッドキャスト配信に挑戦しようとしている矛盾を飯尾さんやタモリさんは許してくれるだろうか?

でもこれはきっと「時代を追う」のではなく 「自分を追う」ってことだ これからは自分の好きなことを信じて追ってみたい


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