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#5 初めての海外旅行〜パリ編〜

ベルギーからパリへは電車で移動した

ブリュッセル南駅からTHALYS(タリス)という高速列車で パリ北駅まではおよそ1時間半 真っ赤な車両の最高速度は300km である


パリでの観光は 現地ガイドとともに周遊する日と自由行動の日があった 

せっかく現地ガイドがついているのに 時差なのか初めてづくしのせいなのか少々疲れもあり バス内で披露される現地ガイドの話はほとんど右から左状態で 予備知識もないまま まだ荒削りな自分の感覚だけでパリを受け止めることになった 

唯一彼女の言葉で覚えていることはフランス語の話で「英語でいう”please” これが言いたい時は”新聞くれ”もしくは”下ぶくれ”と言いなさい」というアドバイスだった 彼女いわくpleaseを意味するフランス語”s'il vous plaît”に発音が近い日本語がそれなのだそう 結局この旅でそれを検証する勇気はなく本当に乗り切れるかどうかはいまだに謎である

バス観光ではコンコルド広場、エッフェル塔が見えるトロカデロ広場、凱旋門、ノートルダム大聖堂など パリと言われて思いつくところを大まかにまわった 中でもノートルダムから見下ろすパリの街が まるで夕日が照らし出した絵画のように美しく印象的だった


その翌日にはモンサンミッシェルにも行った

ラ・メール・プラールの特大オムレツで腹ごしらえをしてから 修道院まではそれぞれのペースでゆっくりと登っていった 修道院内部は厳かな空気を纏っていて それは複雑な構造や混在する様々な建築様式を なんの違和感もなく一つの空間に仕立て上げていた


自由行動が許された日はほとんどの美術館はお休みという悲劇 ガイドツアーにも美術館は含まれていなかったので 数々の名画を肉眼で拝むことは叶わなかった

その代わり シャンゼリゼ通りを歩いたり クロックマダムを食べたり マカロンの美味しさを知ったり 頼れる二人のクラスメイトとともに文字通り自由に観光した

その自由行動の中でパリで最も美しいステンドグラスで知られる サントシャペルにも足を運んだ ステンドグラス自体まともに見るのはおそらくこれが初めてだった 他を見たこともないのにこの美しさが尋常でないことはすぐにわかった あまりの美しさに言葉を失うとはこういうことなのかと その感覚を肌でとらえたのもこの時が初めてかもしれない


友人の後ろをついて歩き 相変わらず目に映る世界を受け入れるのに必死だったわたしにも 不意に二人の力になれるチャンスが訪れた

散策中なかなか次の目的地につかないと気付いた友人が地図を広げて頭を抱える
任せっきりでただついてくだけの自分も申し訳なく思い地図を覗き込む この時わたしは一度通った道をまた歩いているとわかっていたので 地図の位置関係をすぐに理解できた

わたしは地図が読めるタイプ そして1度通った道はその景色ごと記憶するので 2回目以降ほとんど迷わない という地味な能力を発揮 この旅で唯一友人たちの役に立ったのがこの時だったと思う
 

 

旅といえばお土産

快く送り出してくれた母にお土産を買おうと思っていたのだが 帰国してもすぐに実家には帰れないし 取り急ぎ街で買ったノートルダム大聖堂の絵葉書を実家へのお土産とした

これがきっかけでそれ以降わたしは海外に行くたびに 実家にその地の絵葉書を送った なんだかんだ母親もそれが楽しみになっていたらしく 世界地図のポスターを買って壁に貼り 送られてきた絵葉書をその国のところでピン留めしてくれている

旅先で郵便局に寄るのが定番になったわたしは 旅の途中で公園や広場などに腰を下ろして 母宛に便りを書く 書いていると必ず思い出す 母がくれたこの初めての経験のことを 人生に一度きりかもしれないなんて言ったけど その後頻繁に海外から便りが届くようになって そしてまさか海外で暮らすようになるなんて あの時はまったく想像もできなかったんだよなぁなんてことも


初めてづくしだったブリュッセルとパリの旅 知識や経験がなくても感じ取ることができる世界観 自分の世界が大きく広がったこの旅行は その後の生き方を変えてくれた 今のわたしがあるのは間違いなくあの時の母のひとことのおかげだ わたしも娘にそんな経験をさせてあげられるような母親になりたいと思う


  







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