名称未設定

住んでるアパートの窓から立派なお家が解体されていくのが見える。
周囲はグレーの布で囲われているが、窓から重機が家を解体していく様子が見える。

壁が外れるとなんとなく間取りが分かる。
住んでいた人の気配を感じて不思議である。
自分が7月に引っ越してきた時点で空き家で、壁には蔦が伸びていたので半年以上は空き家だっただろう。
それでも、壁や床のパーツの埃っぽさから生活の香りが自分の家まで届いてはいないのに、嗅いだような気持になる。

あの立派なドアも解体され、あの階段もなくなり、
今日仕事から帰ってきたら鉄骨とべろべろの壁だけになっていた。
名称未設定の感情が沸いた。

鉄骨の向こう側には木が生えていて、急に向こう側の空が広くなった。
解体されていく様をただ傍観していただけだが、不意に「おつかれさまでした」と言いたがっている自分がいた。

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