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とあるソシャゲの終わりに立ち会った、平成最後の夏の話

2018年7月31日。
「バンドやろうぜ!」というアプリが、最後のアップデートを実施した。

最後というのは文字通り最後だ。
これ以上、バンドやろうぜ!の物語が新しくアプリ上で紡がれることはないし、次のイベントの告知がされることはないし、新しいカードが実装されることもない。「バンドやろうぜ!」に触れたことのない人にとっては、事実上のサービス終了と同義だろう。

ただ、更新が終わっただけでゲームのプレイは出来る。課金要素は無くなったけどガチャもできるので、なんか音ゲーやりたいなって人にはおススメです。最後にリンクも貼っておきます。

まあいいや。
「バンドやろうぜ!」の話をしよう。

正直、実感は全くといっていいほどない。多分、まだ体が慣れていないんだと思う。「バンドやろうぜ!」は、大体17時に次のイベント告知がツイートされるので、17時が近くなるとわくわくする体にされてしまった。それはストーリーの最終更新が終わって1ヶ月以上が経った今でもそうだ。

そりゃそうだ。1年半もの間、ぼくたちの前を必死で走り続けていた彼らが、ある日突然立ち止まってしまったんだから。体が慣れるまで、同じくらいか、それ以上はかかるだろう。

2018年8月1日の深夜に、床に寝っ転がって、夏休み子ども科学電話相談の聞き逃し配信を聞きながら、昼間にツイッターで見たツイートをなんとなく思い浮かべた。「人間は思い通りにはならないから、人間を生きがいにするのは良くない」という内容のツイートだ。

「バンドやろうぜ!」の更新が終わることを知らなかったときの2018年5月14日以前の私には信じられないことだろうが、残念ながら「バンドやろうぜ!」も、思い通りになることはなかった。先のツイートによれば、思い通りにならないものは生きがいにしてはならないようだから、つまり「バンドやろうぜ!」も、もしかしたら生きがいにしてはいけなかったのかもしれない。

ともすれば、なにを生きがいにしていけばいいのかわからない。人間も、フィクションも、世界も、自分自身でさえ……この世界に、思い通りになるものが一体いくつあるだろう。

思い通りという言葉が指し示すものが「自分の想像した通りに、物事が現実になること」とするなら、完璧に、永遠に、死ぬまで思い通りになり続けるものは、この世にたったひとつしかないのではないか。それはつまり、「自分自身の肉体や精神で感じた何かに対して、心から抱いた感情」だけなのではないか。

例えば、空を見て綺麗と感じるだとか、花を見て美しいと感じるだとか、音楽を聴いて楽しいと感じるだとか、そういう原初の感情だ。見たり聴いたりした瞬間に脳へぶち込まれ、感情の中でも最も早く心に届く。それらを改めて噛み締める今は、平成最後の夏だ。

「バンドやろうぜ!」は、昨今のソシャゲには珍しくプレイヤーキャラが存在しなかった。しかし、途中から「見習い」というプレイヤーキャラが追加された。立ち絵はない、ボイスもなし。「見習い」にあるのは、2択の選択肢だけだった。

私は「バンドやろうぜ!」にハマる前には乙女ゲームにハマっていたので、選択肢には馴染みがあった。乙女ゲームの主人公たちは、与えられた選択肢を選んでいくことで攻略キャラたちの好感度を上げ、コミュニケーションをとり、最終的には結ばれる。それが、プレイヤーにとってのゴールであり、目的であるからだ。

「バンドやろうぜ!」の「見習い」には、さしあたって何か自分自身の欲求を満たすための役割が与えられたわけではなかった。とりあえず君にはここで働いてもらいます。くらいのフランクな導入。(ゆくゆくは、悪いやつがいるから、そいつをなんとかしよう!くらいにはなりました)

ただ、絶対的なゴールだとか、目的がなかった。「見習い」は、とにかく彼らが走り続けられるように追いかけ続ける。それが役割だったように思う。

2018年5月14日に突然立ち止まった彼らは、少しずつまた歩き出して、走り出して、あっという間に、見えないところまで行ってしまった。キラキラとした粉のような、言葉にできない原初の感情を残して。

「見習い」たちは、「バンドやろうぜ!」に置いてけぼりにされてしまった。

「バンドやろうぜ!」が与えてくれた、キラキラとした粉のような道しるべは眩しすぎて、「見習い」たちは少しそれたところを歩き続けるけれど、靴の裏には「バンドやろうぜ!」がくれた、キラキラとした粉のようなものがたくさんついている。歩くごとにそれはどんどん取れていってしまうけれど、「見習い」たちが歩いた後には、確かに光り輝いている足跡が続く。だから、別に大丈夫かもしれない。

そんで、少し話は戻るけれど、この先の人生、何を生きがいにするかって話。「バンドやろうぜ!」は、先に行っちゃって見えなくなっちゃったし、どうしようかな。自分自身は、もしかしたら思い通りにならないかもしれないし。ひねくれてるところもあるし。でも、「見習い」が思い通りになってくれるかもしれないって思う。だから「見習い」と一緒に、先に行って見えなくなっちゃった「バンドやろうぜ!」のことを追いかけるっていうことにすれば、多分走り続けられるかもしれないっても思うんだ。そんで、色んな原初の感情を噛み締めながら走っていけば、まあなんとかなるような、そんなような気もしてきたな。

というわけなので、平成最後の夏!キラキラとした粉のようなものを体感するにはうってつけ!寄ってらっしゃい見てらっしゃい!タイトル直球すぎて逆に潔い「バンドやろうぜ!」
どうですか?
課金要素ゼロの音楽アプリですよ〜。(2018年8月1日現在)

いつサービスが終了してしまうかはわかりませんので、まだ「バンドやろうぜ!」の残像が残っているうちに、ぜひやってみてくださいね。

🍎:https://itunes.apple.com/jp/app/bandoyarouze!/id1138620471?ls=1&mt=8

🤖:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.anx.banyaro

追記:
2019/3/29にバンドやろうぜ!はサービスを終了しました。しかし、劇中のバンドたちによるリアルライブが決定しているしメインストーリーを収録したドラマCDが順次販売される……一体どういうことなんだ?バンドやろうぜ!はソシャゲという足枷を捨てて空に飛び立ったのだろうか。サービス終了したのでサービス終了に怯えなくてもよくなったのでそれはすごいメリットだ!

そして、これからも一緒に進んでいける。
ただそれだけが確かだ。


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