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キズナアイとYunomiの名曲『Sky High』に込められた愛

 Sky Highとは「僕=オリジナルキズナアイ」から「君=分裂体のキズナアイ達」に向けて歌われた歌かもしれない。


 俺は、Sky Highが好きだ。だが、この曲は過小評価されていると感じた。今回、イメージアップを目的に、この曲の考察をすることにした。

 結論から書く。この曲は、「オリジナルキズナアイが、分裂体キズナアイ達に対し、一緒に未来に向かっていこうと呼びかける歌」だと私は考えた。


はじめに

 キズナアイ分裂騒動序盤に発表されるというタイミング。「オリジナルはやがて眠る」などの歌詞。作詞作曲のYunomiによる「分裂を決意したキズナアイさんの不安や期待、様々な気持ちを受け止めて楽曲を制作いたしました」というツイートから分かる、まさに「キズナアイ分裂に関する歌」。

 『Sky High』。

 オリジナルのキズナアイが消えようとしているとも捉えられる歌詞は、当時のオリジナルキズナアイファンの不安に直撃した。そんなタイミングで「俺、Sky High好きなんだよね」と言うような分裂否定派は希少な存在であったし、むしろガチで嫌っている人も普通に見かけた。今でもトラウマに思っているファンがいる程だ。

 サマソニで披露されたものの、その後披露される機会がほとんど訪れないままFireburstやリプライズ等の新曲が次々発表されて埋もれていった、不遇の名曲である。


(当時のツイート。)


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(ジャケットデザイン。4つのぴょこぴょこは4人に分裂したキズナアイを表していると思われる。)


キズナアイが新曲を出すときには、作曲者インタビュー等が発表されることが多い。だが、Sky Highに関してのインタビューは当時見つけられなかったし、今探してもインターネットで見つけることができなかった。簡単に見つかる文章は、Yunomiのツイートが全てである。

 一体、Sky Highとは何なのか。それを考えたい。



Sky High考察① 「君」と「僕」

 

 最初に確認しておくと、「Sky High」の意味は直訳の場合、「空高く、非常に高い、空のように高い」、「(物価などが)非常に高い」などになる。だが、「完全に破壊された」「粉々に爆破する」「夢中」「熱烈」などの意味もある。

 次に確認したいことは、「この歌詞は誰が何を考えているという設定なのか」ということである。例えば「クラリネットをこわしちゃった」という童謡は「クラリネットを壊してしまった子どもが焦る気持ち」を歌にしているし、「関白宣言」という歌は「男が婚約している女に対しての歌」のようになっている。それでは、Sky Highはどうだろうか。

 歌詞には、こうある。「さあ、スカイハイ 窮屈なこの部屋を飛び出すのさ まだ見ない明日が照らす空は 君だけの色、スカイハイ ああ、それが僕じゃなかったとしてもいい 繋ぎたいハートがそうきっと 広がってる未来 広がってる未来」。この歌には、「君」と「僕」が存在している。つまりこの歌は、「僕」が「君」に向けて歌っているという歌詞である。

 では、まず「僕」とは誰か。「オリジナルはやがて眠る」などの独白的な歌詞や、作詞家のツイートから考えれば、「僕=オリジナルのキズナアイ」でまず間違いないと思われる。

 次に「君」だが、「僕じゃなかったとしてもいい」と言われるべき対象は恐らく「分裂体のキズナアイ達」だろう。オリジナルキズナアイの立ち位置から考えれば無数のVtuberを指すという解釈もできそうだが、作詞家のツイートやジャケットデザインから考えれば分裂体のキズナアイを指すと考えることが自然だと考える。

 よって、本記事ではSky Highとは「僕=オリジナルキズナアイ」が「君=分裂体のキズナアイ達」に向けた歌だという考察を行う。


Sky High考察② 歌詞(ティザー1部分)


 「原始の海、君は君になるのさ」は分裂体キズナアイがインターネット上で目覚めたこと、オリジナルキズナアイの中で目覚めること、目覚めた分裂体キズナアイがインターネットの中で新しい自我を獲得することを意味しているように思える。

 「欠片を生み、呼吸をして」はキズナアイが活動しながら色々な影響を世界に与え、Vtuberが増えたように、分裂体キズナアイが活躍していくであろうことを意味しているのかもしれない。

 「君だけのスタイル 揺蕩うタイム」は何だろうか。オリジナルキズナアイにはオリジナルキズナアイだけのスタイルがあるように、分裂体キズナアイ達にも分裂体キズナアイ達だけのスタイルがあるということかもしれない。「スタイル」には、様式・流儀・型・口調・呼称などの意味がある。「揺蕩う」は単にゆらゆら揺れるという意味があり、直前の「原子の海」からそのように連想したくなるが、辞書を見ると揺蕩うには「気持ちが定まらない。心を決めかねる。」などの意味もある。「タイム」も単に時間のことなのか、別のことなのかはわからない。例えば「タイム」という植物の花言葉をインターネットで調べると、「勇気」「勇気ある行動」「大きな望み」「私は決してあなたを忘れない」などがある。

 「オリジナルはやがて眠る 受け継がれた遺伝子が雪のように降る」については、キズナアイのオリジナルが引退し、キズナアイが今後どんどん増えていくというような印象である。ただ、当時既にVtuberは数千人規模存在していたとされ、それを「雪のように」と表現したのかもしれない。


 「舞い散れ、ひらりひらり 星を埋めてゆけ あの日に夢見た空の色を描いてゆけ」は、突然の命令形が3回も使われており、印象的である。直前の歌詞から考えれば、命令対象は「(雪のように降る)受け継がれた遺伝子」だ。受け継がれた遺伝子は恐らく「君=分裂体キズナアイ達」のことを指すと思うが、ここで気になる部分は「あの日に夢見た空の色」だ。キズナアイの夢は「みんなと繋がりたい」であり、分裂したキズナアイ達がみんなと繋がることでオリジナルキズナアイの夢を叶えるということなのかもしれない。なお、分裂体キズナアイ達もオリジナルキズナアイと一体だった時期は同じ夢を見ていたわけなので、夢は共通認識である。

 「さあ、スカイハイ 窮屈なこの部屋を飛び出すのさ まだ見ない明日が照らす空は 君だけの色、スカイハイ」について。「窮屈なこの部屋」はオリジナルキズナアイの身体のことを指し、そこから飛び出す=分裂して活躍していけという意味かもしれない。

 そしてここでティザームービー第一弾最後の歌詞、「ああ、それが僕じゃなかったとしてもいい 繋ぎたいハートがそうきっと 広がってる未来 広がってる未来」となる。この歌詞が当時のオリジナルキズナアイやキズナアイ運営の意思だったとしたら、ここでファンとのすれ違いが起きたのだと思う。オリジナルキズナアイは「僕じゃなかったとしてもいい」と歌うが、多くのファンは「お前じゃなきゃ嫌だ」と思っていたからである。


Sky High考察③ 歌詞(ティザー2部分)

 「言葉だけじゃきっと伝わらなくて まだ知らないこの気持ちは 新しいワード、目指すニューワールド 海を超えて駆け巡るわ 思い描いた 遠い世界が 目の前に開く」。新しいワードとは中国語のことかもしれない。ニューワールド、海を超えて、遠い世界という言葉からは海外を連想できる。

 「ほら手を伸ばせば君の夢に届きそう 長い眠りから覚めた声で聞かせて ハロー!」は目覚めた分裂体キズナアイ達への呼びかけだろう。

 「さあ、スカイハイ 手を伸ばすその先を君と見たい カラフルに彩った空は君だけの色 スカイハイ いつの日かそれを僕と呼べるのなら 何回だって言おう ハロー、君と描く未来 君と描く未来」。全体的には、オリジナルキズナアイが、分裂体キズナアイ達の夢や活動を見たいということだろう。「ハロー、君と描く未来」という言葉には、「君と僕が描く未来」という意味にも感じる。ただ、「いつの日かそれを僕と呼べるのなら」という部分は「まだ僕=キズナアイとは呼べない」という意味かもしれない。分裂体キズナアイ達への期待と不安が入り混じっている気持ちを表しているとも考えられる。

 ちなみに、残りの歌詞はティザー1部分とティザー2部分の一部を繰り返したものとなる。


Sky High考察④ 諸々のまとめ


 「僕」がオリジナルキズナアイで、「君」が分裂体のキズナアイ達ならば、「ほら手を伸ばせば君の夢に届きそう 長い眠りから覚めた声で聞かせて ハロー! さあ、スカイハイ 手を伸ばすその先を君と見たい カラフルに彩った空は君だけの色」などの部分から、オリジナルキズナアイが、目覚めた分裂体キズナアイ達の声を聞きたいという意思や彼女らの活躍を彼女らと一緒に見たいと考えているという歌詞になる。

 俺が何を言いたいのかというと、Sky Highは分裂を不安混じりとはいえ肯定しているが、オリジナルキズナアイが直ちに眠ることを表現した歌ではないということだ。

 Sky Highにはティザームービーが3本もある。非常に気合いが入った宣伝だ。当時、公式や分裂体のキズナアイ達、オリジナルキズナアイ本人も、何度も「オリジナルはいなくならない」という説明があった。色々流れてくる噂も、「オリジナルの出番を減らして予算を抑える」ようなものが多かった。やはり、オリジナルを完全に引退させようとしていたという話は誇張表現だったように思える。恐らく、アーティスト活動メインで走る方向だったのだろう。その始まりがサマソニ、そしてこの曲だったのかもしれない。

 結果的にキズナアイはオリジナルキズナアイのみに戻ったわけだが、Sky Highにある「君だけの色」を、loveちゃん・あいぴー・アイガーそれぞれが出せたように思う。

 ティザームービーを見ると、①はオリジナルキズナアイの沢山の動画を、②はオリジナルキズナアイが世界中の人間と繋がってきたことを、③はオリジナルキズナアイが今後ダンスや歌で活動していくことを表しているようにも思える。俺は、これらのティザームービーが好きなので、フルサイズを是非出してほしいと今も思っている。

 色々落ち着いた今だからこそ、Sky Highがあらためて受け入れられることを願っている。

 願わくば、またライブ会場で見せて欲しい。