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NOPE

マグさんと見た!!

SFホラー

見終わった後、もしかしたらSFホラーのことが大好きなのかもしれない…!!といやこれかなり変な映画だからNOPEのことが好きなだけでは…??でかなり悩んだし今も悩んでる。SF映画もあまり見てない(TENETのことが大好き)だし、ホラーも詳しくない(ベディリタリーのことが好き!!)なので当然SFホラーは好きだろうなと思うんだけど、どうなんですかね。わかりません。ノープ、SFホラーというかSFでホラーって感じだしな…。

父親が空から降ってきたコインにぶつかって死んだという話、かなり「最悪な奇跡」の話をするんだと思ってた。つまり黒人に生まれて白人社会である映画業界の中で生きることみたいな話をメインでするのかなとか思ってた。ぜーーんぜんそんなことない。もちろんOJが馬に乗ってカメラに映ること自体が始めの2秒の続きであり、それをみんなから望まれていること自体に大いなる意味があるって話はしてるからメインテーマではあったと思う。ホラーとSFをとっぱらったら一番上にある要素だし本筋だし。でもなんか、それ以外のショッキングな映像もめちゃくちゃあるから…。

ノープのSFの部分、つまり実は「それ」がUFOではなく、単体の生き物であるというセンス・オブ・ワンダーな種明かしシーンがめちゃくちゃよかった。他もめちゃくちゃいい!!他もめちゃくちゃいいけどここの気がつきが一番楽しかった!!!

ここに至るまでの関係なさそうで実のところ目的までの丁寧な動線だった馬の話の置き方も好き。「馬を見ないで、近寄らないで」「ゴーストのいななきが聞こえるか?あいつは縄張り意識が強いんだ…」っていう思い出や馬に真摯に向き合ってきた経験がキャトルミューティレーションっていう神秘の現象を「捕食」っていう生命活動まで格を落として、恐怖は増加させたところがほんとに好き。本当に好きだし、40人一気に捕食された後の「食道を通ってるシーン」をかなりギリギリまで映す絶望の描き方も最悪で良かった。

捕食シーンも猿のシーンもそうなんだけどホラー描写が始まるたびに「この怖さがどこに落ちるのかがわからない」っていうのがあった。主人公がなんらかと遭遇してしまった時は「まあ生き残るだろ」みたいな予測が立つし、アホなことした大学生とかが危ない目に遭うと「おっ!!死ぬぞ!!」ってなるんだけど、ノープは「今生きてる人物の過去」とか「そこに居ただけの街の人」とかがホラー展開に巻き込まれるのでほんとに予想がつかない。現在大人になってるから本人は生き残りはするんだろうけど人々が丁寧に殺されてる猿のシーンとか、心臓が宙に浮いたまま5分くらいそのままにさせられた。

年齢制限的には16+だった気がするんだけど、18+ではない匂わせ方がかなり質感があった。猿のシーンはもうめちゃくちゃに描写しても怖かったと思うんだけど、血まみれの猿が何かを食べてる近くに人が倒れてて、さっきまで動いてた足がもう動かなくて、助けに来た人が柱の向こうで叫び声をあげてて、その全てが想像で保管されていく過程がかなり怖かった。「この人が無事に生き残る」以外の情報が与えられないホラーシーンってこうなるんだ…になったし、終わった後に「じゃあこいつの今のメンタルはなに??」になるところまでセットで恐ろしかった。

猿のシーン、つまり動物の理不尽さというか気ままさの話だし、ごく稀に動物側から返ってくることがあるって話だし、運命なんてないって前振りだった。あのシーンがあるからOJに従う賢い馬が担ってた動物のイメージが払拭されるし、「僕は選ばれたんだ」という思い込みは子役の彼の人生を救ってたけど命は助けなかったよね。みたいな。選ぶ側は常に動物というか強者であることの示唆だった気もするし、転じて選ばれないからと言って何もしないなんてしない!!という人生讃歌だったきもする。毎日馬のために朝が早いOJが撮影に前向きになるのがまさにそうだった。

運命なんてない、映画の話をしてるからなおさら輝くテーマだったと思う。カメラが撮っている時に「たまたま何かが映る」があっても、カメラを回すことにたまたまは存在しなくて、そこには撮りたいものがあるはず。つまり、黒人の騎手はたまたま映ったのではなくあるべくしてカメラに映ったのだ。とかそういう感じ。めちゃくちゃよくない?!!?!!カメラがここにあるべくしてあることに意味を付与させるのが丁寧。

なんか全体的に見たことないはなしの作りのはずだしSFホラーなのにめちゃくちゃ熱い展開で最高だったな…。

OJ〜!!!!

OJのサムズアップ集が欲しすぎる。

口下手で愛想がなくて対人関係はてんでだめだけど他人を思いやる気持ちがないわけではない人間の「あぁ」とか「いいぞ」とかかなり良かった。何らかに効く。

そんな彼が「毎日仕事ばっかり!」って妹に言われた時のセリフが「まだ俺たちの番が来てない」から始まるんだから最高すぎるよ。毎日馬の世話をしているからと言ってそこで納得してるわけではない彼の信念があそこではじめて現れるから人が動くわけ…。

あと登場人物たちがかなり良かった。キャラクターが立ってる、というとちょっと違う気がするんだけど全員にこれまでの人生がある感じがした。キャラクターが魅力的な映画って当然おなじ脚本家から生まれているからどれだけ違う経歴でもテンポのいい会話をするし語彙が被るし相手の意図をアイコンタクトで掴んだりとかするんだけどノープはそう言うシーンが本当になくて、全員が違うテンポで話をして違う速度で話に追いついて、違う経歴から組み立てられた語彙で話してる感じがした。

よく喋る妹とOJが話す速度と密度が違うのもそうだし、妹は行動的だけど覚悟を決める速さは兄の方が早かったりとか、エンジェルは早口だからぽんぽん情報を言うけど、悲観的だからカメラを回したあとの話については誰よりも一歩遅れて意味を悟ってたりとかしてたと思う。

作戦会議のシーンとか結構バラバラな方を向いてたし喋ってたのに、ことカメラを回し始めたとなるとやるべきことは一つだからみんな行動でチームワークを示してたのも熱かった。カメラを回してからのワクワク感、人が50人くらい死んでる映画のテンションではなかった。

めちゃくちゃ楽しかったな…。それの到来が視覚的にわかりやすかったりとかルールが明確なのもよかったし、途中まで雲とかUFOの見た目してたやつが最後に敵いそうもないでかい生物に変貌するところ含めて楽しかった。前半の湿度の高いホラーシーンも好きだしノープのことめちゃめちゃ好き。

あとノープはそれがいる森の話が公開時に流れてた時に名前を知って、今もそれ森の後に見たんだけどこの順番で本当に良かったと思ってます。

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