LPガス事業社とGX(グリーントランスフォーメーション) 2023年版- ファクトの整理と戦略 -
LPガスと脱炭素社会
現在、弊社の事業ポートフォリオには、エネルギー事業(やさしいエネルギー/LPガス、新電力)、IT/DX事業(KOBIRA DX Partner)、貿易コンサルティング事業(グローカルビジネス事業部)の3つのセグメントがあります。
エネルギー事業は弊社では稼ぎ頭ですが、将来の脱炭素社会でLPガス事業がどうなるか様々な未来予測が存在すると思います。この記事では、今時点での経営の将来予測を示し、過度に楽天的にも悲観的にもならないようLPガス事業の未来予測を共有したいと考えています。
世の中、様々な書籍や意見がありますが著者の私見やポジショントークが入っているものも多くがあり、理解をしずらいと考えています。まずは中立の立場でファクト(事実、データ)を示し、その上で私の経営者としての考えを「小平メモ」でて示そうと思います。その上でお客様への説明や新しいメンバーへの説明に役立ててもらえたら幸いです。
日本のエネルギーの現状
ここからの説明は「令和3年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2022)をベースに行います。
ポイント: 2005年を境に国内のエネルギー総消費量は減少しています。省エネや自動車普及などが行き渡ったことが原因です。その中で家庭部門は15.8%を占めています。
ポイント: 国内に供給されるエネルギー(図の単位で17,965)のうち、原子力と再エネが14%、残りの86%が化石燃料(LNG、石油、石炭)に由来しています。また、最終的な最終エネルギー消費(12,042)のうち、73%が電気以外、27%が電気になっています。
エネルギー供給の基本的な考え方3E+S
前項で書いたように、日本は多くを海外からの化石燃料にエネルギーを依存しています。エネルギーの構成を変えて、化石燃料由来を減らしていきたいと国の方針にもありますが、ただ、それは闇雲に減らすというのではなく、エネルギーの基本、3E+Sを維持ちつつ脱化石燃料行っていくのが基本です。3E+Sとは以下のように説明されます。
「安全・安定して供給できること」(Safety)、「価格の安さ」(Economic Efficiency)という要素が、エネルギー政策で重要です。価格の急激な上昇や経済に必要な供給の途絶を避けるためには、最終的な目標に向けてバランスを取りながら進める必要があります。これが、大まかな方針となるでしょう。
参考(資源エネルギー庁): 「GX実現」に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める
エネルギー構成変化のロードマップ
エネルギー構成を変えるのは大きな事業なので、時間かかります。そのスケジュールが示されています。技術的な課題がまだいくつか残されているので、それも含めたイメージを経済産業省の「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」と同じく経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略」から見ていきましょう。
前提として、2022年段階で①まだ国内を電気100%にするには電気の生産量が足りない(現在全エネルギーの27%しか賄えてない)、②その電気も再エネ+原発では14%しか賄えていない(残りは化石燃料から電気が作られている)、と言う背景をベースに見ていく必要があります。
2030年のエネルギー構成目標
資源エネルギー庁の2030年における「野心的な目標」では、以下の割合のエネルギー構成が記載されています。( )の中には2020年のデータが示されています。
【2030年度のエネルギー構成目標】
石油: 31.0% (2020年は36.4%)
再生可能エネルギー: 22.5% (2020年は13.3%)
石炭: 19.0% (2020年は24.6%)
天然ガス: 18.0% (2020年は23.7%)
原子力: 9.5% (2020年は1.7%)
水素・アンモニア: 1.0% (2020年は0%)
これを見ると、再生可能エネルギーと原発の割合が増加。石炭が微減。水素・アンモニアが1%となってます。こちら資料内の説明に「野心的」とあるように色々と目論みがうまくいった場合のシナリオになります。再エネと原子力、水素アンモニアの合計で、33%となっています。
また最終エネルギー消費の割合に関しては読み取れなかったのですが、発電総量が8,640億kWhとあり、2020年の発電量と同程度なので、社会での大きな省エネ(最終エネルギー消費総量の減少)が起こらなかった場合、最終エネルギー消費の27%という今と同じ程度の割合になるかと思います。
2030年には、現在の全エネルギーの27%が電力によって賄われる社会が見込まれます。そのうち33%は再エネや原子量、アンモニアによって供給され、67%は化石燃料からの発電によって賄われます(「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」には、最終エネルギー消費量を4分の3程度まで削減する計画が記載されており、それによって化石燃料分のみを減らせれば、電力の割合は増加します)。
2050年のエネルギー構成目標
「2050年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略」の中では2050年のエネルギー構成についてはミックスになるという内容だけで想定割合は述べられてません。ただ、電源に関しては同資料内に希望的な予測として、「2050年に、再エネが発電量の約50~60%、水素・アンモニア発電が10%程度、原子力・CO2回収前提の火力発電が30~40%程度」とあります。
同じく、2050年時点で再エネを計3,360~3,530億kWh (2021年の日本の総発電量が8,635億kwh)の導入目標とあります。2020年の 再エネ発電量が1,820億kWhですので(参照)、2050年には再エネの発電量を今から倍に増やすと言う目標が立てられています。
LPガスにまつわる業界予想
2030年までの短期予想
経済産業省 2023~2027年度石油製品需要見通し(案) 液化石油ガス編の資料から短期的な需要予測をしていきます。
2030-2050年の予測
2027年予測で横ばいなので、2030年くらいまではLPガス業界大丈夫そうです。次はそれ以後の予測を見ていきます。
ただ、その後の人口の減少が大きくなります。2020年に71万世帯だった鹿児島の世帯数が2034年には64万世帯、2040年には60万世帯と顧客数が大きくカーブを切り始めます。また高齢化率も上がるので、単位消費量は下がります。
同時に省エネを国が強力に押し進めるので単位世帯あたりの消費量も減少する想定。
その後のシナリオとしては2040年から2050年にわたっては、国内では、上記にある「省エネ」と「脱炭素エネルギー」へのエネルギーの移行が起こるタイミングになります。
「脱炭素エネルギー」への移行というのは、現在のLNG・LPGの議論の中では、「合成メタン(もしくはプロパン)」や「水素由来エネルギー(アンモニア)」への移行です。上記の図にあるように2040-2050に移行していくという見通しがあります。天然ガスやLPガスに混合したり、シリンダーやバルクのインフラを利用可能ではと言われています。
最後に社員向けのまとめ (全て小平の私見です)
国内のLPガス業界は2030年代半ばまで今のままで小規模業者や撤退業者の顧客取り込みで大丈夫と見込んでいます。また今以上の電力へのエネルギーシフトは電力の安定供給から踏み込み辛いと想像しています。
2030年半ば以降は人口、世帯人数の減少と省エネでマーケット自体が大きく縮小すると思わます(2023に比べて20%+αくらいの減少を織り込んでおく)。特に2040年ごろから電気供給が電化に耐えられるボリュームになってきたら、家庭用LPガスが、ニッチエネルギーになる可能性は高いです。
2020年代から、社会全体で大きく脱炭素、再エネ投資が始まるので、乗らない手はないと思っています。海外やDXを事業にもつKOBIRAのリソースを活用して独自のポジションを確保したいです。(エネルギーのパーソナライゼーションサービスやりたい、金融商品のアップセルもやりたい)
LPガスの設備投資に関しては、今なら15年の投資回収にはギリギリ耐えられると思うので、その前提で考えたいです(その後のバイオ燃料、水素キャリアのインフラとしての活用の筋もありそうですね)。
このような社会の変化の中で社員はどういう技術やキャリアを想定するべきかは、何年まで働くかによります。
2020年代に定年の方 → 今のままLPガスベースで大丈夫
2030年代に定年の方 → LPGがベースで大丈夫ですが、電気の営業や家庭のエネルギーコーディネーターとしての知識は習得ください
2040年以降に定年の方 →LPGに加えて、再エネ、電気、脱炭素の知識と技術を今から計画的にガッツリ身につけておいた方がリスクが低いです。ただLPガスの技術は、2040年以降も合成LPガスやバイオガスで脱炭素社会の中でポジションが残るなら役に立つ可能性が高いです。
感想ですが、いろいろな資料読んでみて、全体的に社会全体を再エネと電気にしたいというのは分かったのですが具体的には今後の技術のイノベーションに期待ということかと思います。
おそらく間違いなど色々あると思うので、優しくご指摘ください。
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