きっぷ券売機|思いやれないデザイン #4

日常で出会う、思いやりに欠けるデザインを批判して世の中をほんの少し良くすることを目指すマガジン「思いやれないデザイン」。経緯は、ユーザー的不服従|『誰のためのデザイン』

今回の思いやれないデザインは、仙台駅で出会ったこちら。

きっぷの券売機。

一見きれいなディスプレイで使いやすそうなのだけど、たぶん20秒くらい目的を果たせず困ってイライラしたので思いやれないデザインに認定。

目的はなんだったかと言うと、ただ同じ切符を複数購入したかった。けれど、この券売機で同じ切符を複数購入するのは本当に大変だった。

プロセスはたぶんこんな感じだった。

① 機械の上に貼られてるマップをみて行き先に必要な金額を把握(記憶)
② 複数買いたかったので、枚数を変更できるパネルを探す
③ 見つからないので、お金を選んだ後に枚数を決めるのだろうと思い該当する金額をタップ。
④ 購入確認画面になってしまい枚数を選べるボタンがない!(エラー
⑤ ディスプレイ下の取り消しボタンを押して再度画面を眺める(十数秒以上)
⑥ ディスプレイ左に枚数を変更するボタンがあることを発見!
⑦ 無事に希望通りの枚数を購入(はあ疲れた)

今回のエラーが起こったのは『誰のためのデザイン』に照らすと、対応づけが悪いためだと考えられる。

きっぷを購入するために必要な操作はディスプレイで行うのに、なぜきっぷの「大人/子ども」の種類と枚数だけがディスプレイの外のボタンに対応しているのだろう。券売機の歴史を辿ることで解明できそうな気がするけれど、きっと尾骨のような過去の名残なのだろう。

これまでに取り上げたセルフレジリクライニングシートでも同じだったのだけど、ユーザーは1度に1つの対象にしか注意を向けられない。これは認知心理学では選択的注意(selective attention)と呼ばれている。今回のケースで注意を向けた(無意識に向けさせられた)対象はディスプレイだ。

ディスプレイの外のボタンなんて(網膜には写っていたのかもしれないけど)意識にはのぼってこなかった。操作手段と空間的に無関係に配置されたヘルプは意味をなさない。選択的注意から得られる教訓は、手段は1つのユニット(今回ならディスプレイ)内にまとめるようデザインすべきということだろう。

それでは、どうデザインすればこの券売機は良くなるだろう。

まず、ディスプレイの外にある物理ボタンをディスプレイの中に移すことが必要だ。

今回、私にとって問題となったのはディスプレイ左にある「複数枚 まとめ買い」というボタンだが、その上にある「おとな」と「こども」のボタンもディスプレイ内に移した方がよいし、下にある「よびだし」と「とりけし」もディスプレイ内に移した方がすぐに見つけられてよいはずだ。

ボタンをディスプレイ内にまとめたら後は画面遷移のデザインだ。

おそらく初期画面は現在の金額ごとのボタン表示から変えた方がよい。

細部は甘いが、こんな感じのが初期画面ではどうだろうか。ユーザーはまず、必要なきっぷの種類(おとな/こども)とそれぞれの枚数を選択できる。これであれば後で2名以上の団体はすんなり選択できる。

しかし、これはもっとも利用の多いだろうおとな1人にとっては面倒な1ステップかもしれない。それなら初期値をおとな1枚、子ども0枚にしておけばよい。

この次の画面では、現在の初期画面を出すのでもよいが、せっかくならここも変えてみてはどうだろう。

なぜなら、ディスプレイのはるか上にある巨大なマップをみて行き先を探すのは、慣れた人にでさえ骨の折れる作業であり、土地に不慣れな観光客にとっては絶望的に困難な課題だからだ。ずっと探してると首も痛くなる。

このままでは2020年には券売機の前が海外の方々であふれかえり、きっぷを買うためには人ごみをかきねばならなくなるだろう。満員電車の拡張だ。

もし、運良くマップから目的地を見つけ出し金額を知れたとしてもまだ問題がある。それは金額を忘れてしまうことだ。人間の記憶は良くも悪くもテキトーなので、金額を覚えてからディスプレイで該当するボタンをタップするまでに、何か他のこと(誰かに話しかけられたり)に気をとられでもすれば金額なんて簡単に忘れてしまう。ユーザーになにかを記憶させておかないと次に進めないシステムは褒められない。

そういうわけで、2画面はこんな風にしてはどうだろう。

目的地の名前すら覚えていない人はそうはいないのではないか。それなら、この検索窓で目的地の名前を入れてもらえばいい。キーボードはiPadみたいに下の方に出せばよい。そうすれば、金額はシステムが計算できるわけで、ユーザーは金額を記憶する必要はない。

地図好きにとってこのデザインは少し悲しいものではあるので、背景を広域の地図にしておいて、目的地が入力されたらその土地にズームするアニメーションなんかがあると地理的情報の楽しさも伝えられてよいのではないだろうか。

ここまでくれば最後の画面は、券種ごとの枚数と目的地、そして金額を明示すればよいだろう。もちろん投入金額も最後の画面に表示した方がよい。


日本の都市はただでさえ異常な人口集中でUXが悪いのに、2020年に本当に海外から人がたくさんやってきたらどうなってしまうのだろう。恐ろしい。

きっぷの券売機のデザインを良くしたからといって解決できるようなものではないだろうが、たぶんやらないと駅構内もヤバいことになる。少なくとも私は、2020年はより一層の引きこもりを実践するか、東京を脱出したい。

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真に器量の大きな人間は「できる」と思わせてくれるものだ―トウェイン
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敢太

思いやれないデザイン

『誰のためのデザイン』を拠り所に、日常の悪いデザインをみつけては批判します。#ユーザー的不服従のタグをつけてくださったnoteは勝手に追加させて頂くかもです。
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