ミーハーが世界を変えていく 〜ネットワーク科学からみたミーハー〜

シリコンバレーは一見のどかな田舎だが、世界を変えるスタートアップを次々と生み出すカンブリア紀の海のような土地だ。なぜシリコンバレーがそのようになったかという考察は多くされている。Stanford大学があるからとか、周りの成功者の率が高いから自分もという錯覚を起こからとか。これらは正しいだろうけど、別にそれだけというわけではない。

目次

・ネットワーク科学
・シリコンバレーのネットワーク
・ミーハーが世界を変えていく

ネットワーク科学

少し前に流行った『群衆の英知もしくは狂気』というゲームをご存知だろうか。ネットワーク科学を一般の人でもわかるようにと、@ncasenmareさんによってデザインされた素晴らしいゲームだ。

ぜひ実際に遊んでみてほしいのだけど、ネットワーク科学に「感染」という1つのコンセプトがある。「感染」には単純な感染(ウイルスが例)と、複雑な感染(酒豪になるが例)の2種類があった。

スタートアップにとってプロダクトが拡散することは成功の大きな要因の1つだ。そしてこのゲームから、アイデアとプロダクトは単純な概念になっている方が拡散しやすいことがわかる。でもこれは当たり前に知られたことだ。

感染には、概念の単純さの他にもう1つの要因があった。閾値だ。ネットワークをつくる1人1人の閾値が低い方が感染が起きやすい(閾値は生物学の中でもっとも優れた概念の1つだと思う)。

シリコンバレーのネットワーク

シリコンバレーに話を戻そう。先のゲームの学びの1つを当てはめれば、シリコンバレーの秘密の1つは、そこに暮らす人々が「スモールワールド」をつくれているからということになる。でもこれじゃあ実感としてはよくわからない。

閾値に着目すれば、「シリコンバレーに暮らす人々の閾値が相対的に低い」ことこそが、シリコンバレーの秘密の1つではないかと考えられる。より正確に言えば、「新しいものを試す閾値」と、それを「シェアする閾値」の両方が低いということだ。シリコンバレーで働く何人かの友人を想像する限りでは間違っていないように感じる。

イノベーションの文脈でよく知られた理論の1つにRogers, E.M.の「イノベーション普及理論」がある。原書が高くて読めていないから批判できる立場ではないのだけど、世のビジネスマンが口にする各層の割合(数字)ってどれくらい意味があるんだろうか。

イノベーターとかアーリーアダプターとかがあらゆる集団で見出されることは仮に確かだとしても、たしか小数点第一位まで出されたその比率は集団によってちがってくるのではないだろうか。つまり、この理論の観点から言えば、シリコンバレーは2つの閾値が低いために、イノベーターやアーリーアダプターの割合が高いとも言えるのではないだろうか(この理論について、どういう集団を対象に割り出された数字なのか、そしてその普遍性についての考察をご存知の方がいれば教えて頂けると嬉しいです)。

ミーハーが世界を変えていく

日本では2つの閾値が低い人を総称する言葉がある。「ミーハー」だ。でもそれは、ネガティブなニュアンスをまとっている。

これが日本がシリコンバレーに比べてイノベーションを生み出せない理由の1つでもあるのではないだろうか。イノベーションの親である、「新しいものを試す閾値」と「シェアする閾値」の低い人々を、「ミーハー」と揶揄してしまうのが日本だ(もちろんこれは、明治維新から存在する日本の良き反動の現れなのだとも思うが)。

でも実際に世界を変えていくのはミーハーだ。どんなに優れたイノベーターがいても、ミーハーがいなければそのアイデアやプロダクトは感染せず、イノベーションにはなりえない

言葉の意味はそんな簡単には変わらない。だから、ポジティブなニュアンスをまとったミーハーを意味する新しい言葉が必要だ。例えば「パイオニア」みたいな。

とにかく、ミーハーに代わる新しい言葉をつくり、新しいものを試す閾値とシェアする閾値の低いことがポジティブに受け入れられる社会をつくることが、カンブリア爆発ならぬイノベーション爆発を起こす土地に近づく鍵なのではないだろうか。

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簡単すぎる人生に、 生きる価値などない。ーソクラテス
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敢太

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