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空腹飯店

皮蛋


「あれはなんですか?」

「あれは知ってるよお前も」

「えっ」

「カタカナのイメージがあるな」

「カタカナ…ヒ、ヒ、ヒ」

「ピータン」

「ピータン!ピータンかー!当てれましたこれは!」

「じゃあ次、あれわかるか?」

「どれですか?」

「あの青の」


青椒肉丝


「チンジャオロース」

「正解」

「いやこれはわかりますよー、よく見ますもん」

「じゃあその右」


古老肉

「えー、わかんないす」

「絶対に知ってる料理」

「知ってる料理?古くて老いた肉…?ハム、とか違いますよね」

「惜しい、酢豚」

「酢豚!?いや、酢豚は酢豚でいいじゃないですか!なんて読むんですか?」

「さぁ、読みは知らんけど、酢豚」

「酢豚は酢豚って書きましょうよー!えー」

「じゃあとりあえず、今のやつぜんぶ頼むか」

「いいっすね」

「あ、すいませーん!………えっとじゃあ、あの、酢豚…あ、あれと、あれと、あれと、あと、あれと、あれとあれと、あれと、あ、あとあれを、1つずつ、えー、大丈夫?」

「あ、はい」

「あすいません、やっぱ最後のやつ、えー、あれ、1じゃなくて、2、お願いします」

「…先輩、最後なに頼んだんですか?」

「最後?」

「なんか新しいやつ行きましたよね?」

「あー、あれね、右から2番目のやつ」


空腹


「空腹?くうふくってなんですか?」

「空腹は空腹よ」




「あー、けっこう腹いっぱいですね」

「次なに頼む?」

「いやーもう無理っす、見てくださいこの腹」

「先に頼んでた方が効率いいだろ、あー来た来た」

「ひゃー!!」

店の中国人のおばさんが置いた皿には、爪のない親指が2本、動いていた。爪のない親指が動いている!

「ちょっと!!なんですかこの、つ、爪のない親指は!?」

すると厨房の奥の方から自分の背丈ほどある白いコック帽を被った中国の偽ドラえもんがこちらへ早歩き!ピタと止まるとあのダミ声で笑い出した!

「ブフフフフ、これは空腹(クーフー)と言って、空腹(くうふく)を呼び覚ます虫さ。噛まずに飲み込むとひとたび胃の中にある食べ物をバクバクと食べて胃の中を空っぽにするのさ。空腹(クーフー)自身は人間の胃液に弱くすぐに溶けて無くなるのさ。けして噛んではいけないよ。空腹(クーフー)はだ液にも弱いか

パンッ!

破裂音がしてコトンと床に落ちたものは手裏剣だった!どこからか手裏剣が飛んできて偽ドラを破裂させたというのか!?


「手裏剣!伏せて!先輩!伏せましょう!手裏剣が飛んできますよここ!手裏剣!先輩!ちょっと!なに食べてるんですか!ヴェ…」

「…すみません、さっき頼んだやつ全部もう1周お願いしていいですか?あ、オール!リトライ!オーケー?」

「先輩!」

「お前も食え」

先輩が爪のない親指をつまんでテーブルの下で身を縮めている僕の口に押し込もうとしてきた!

「ギャー!!痛った!!」

驚いた拍子に僕はテーブルに強く頭を打ちつけたが耐えながらフラフラめまいのままよろけながら店から飛び出してバイクに轢かれて1週間入院の末にあの日以来まったく連絡がつかなかった先輩にまさかと思い再びあの店を訪れ恐る恐る窓から覗いてみると先輩はまだテーブルいっぱいに中華を食っていた!あほがと言って日本に帰った!

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