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自問自答

 引越しの荷造り、ただやるのも苦痛なだけなのでZAZEN BOYSを聴きながら作業に勤しんでいた。清楚系ビッチや処女のギャルがいるように、俺もまた散々オルタナだなんだと言っておきながら向井秀徳の作品を真剣に聴いたことはなかったのである。よくある「はじめての〜」みたいなプレイリストを再生してみると、俺の中で曲は二極化した。「ポテトサラダ」「サイボーグのオバケ」等は前衛的過ぎてちょっとよく分からない。「パンツ一丁で踊れ」って歌詞、理解云々を通り越して笑ってしまった。
 逆に「KIMOCHI」は言わずもがな、「自問自答」「半透明少女関係」等は頗る良い。月並みな表現になるが、刺さった。

 今晩は引越し前ということでツードックスに足を運んだのだが、マスターの「想像力を働かせないと駄目だよ」という言葉が胸に引っかかった。導入は相変わらずの下ネタ(書くのも憚られる)だったが、大事なのは本質であって、マスターが本当に伝えたかった事はそこなんじゃないかと思う。

 俺は想像力を働かせて大学生活を謳歌できただろうか。繰り返される、自問自答。

 足りなかった。としか言いようがないだろう。想像力を働かせるに値する好機はいつでも目の前にぶら下がっていたが、積極的に取り組めないことが多々あった。しかしだ、過去の出来事は変えようが無いからこそ、あくまで前向きに捉えていきたい。誤ちを気に病まず、ただ認めて、次の糧にすれば良い。それが大人の特権だとフル・フロンタルが言っていた。

 大人になるのが嫌だと思うのは大学生の常だが、なっちまうもんはしょうがない。ならば、特権を携え、今度こそ謳歌、とまでは言わないが、少しばかりはマシな生活を試みようではないか。

 ルーティンワーク。自宅と会社の行き帰り。仄暗く感じてしまう。それが「冷凍都市の暮らし」だとしても、俺が二十歳前後でつかみ損ねた想像力の欠片もまた、諸行無常の中で繰り返されると信じたい。重力の井戸から解放され、可能性の獣になる余地がまだ俺には少しばかり残されている。そのために俺は、「それでも」と言い続けなければならない。

 冷凍都市の暮らし。あいつ姿くらまし。

 それでも、

 繰り返される諸行無常。蘇る性的衝動。

 

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