その神社は「夜光おみくじ」で有名だった。
晴れた夜空の日にはよく見えるらしいと聞き、私と夫は神社に向かった。
神社の裏庭は高台になっていて、見下ろすとホタルのように光る小さな虫がたくさんふわふわと飛んでいた。
参拝者は並んで、一人ずつ柏手かしわでを打つ。
するとホタルのような虫がふわふわ動き、集まって、マスゲームのように文字を作った。

小吉

「すごーい」
しかし、一般の人に大きくきれいな柏手は打てず、末吉や小吉がほとんどだ。重要な願い事がある人は、神主さんに頼んで柏手を打ってもらい、大吉を出していた。
やがて私たちの順番になった。
私は末吉だったが、夫は意外によく響く柏手を打った。

大吉

「おおー」周囲から思わず拍手が起きた。
夫は照れて顔を赤くした。
帰ろうとした私たちを、神主さんが追いかけてきた。

夫は年末年始の柏手係にスカウトされ、かなりの臨時収入を得られるようになったが、忙しくてお正月気分が全くない。
今年も一人紅白を見るか・・・

（413字）

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「ホタル」で検索。夏のゲンジボタルだそう。