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好きなことをできないなら食べられなくてもいい! フリーライター 荻原魚雷さん

古本にまつわるコラムやエッセイを数多く執筆し続けている荻原魚雷さんにお話しを伺いました。

荻原魚雷さんのプロフィール
出身地:三重県
活動地域:都内
現在の職業及び活動:フリーライター
座右の銘:「やりたくないことはやらない」(山田風太郎)

フルタイムで働かない、そういう働き方もあっていいと思います

Q1.荻原さん(以下、敬称略)はどのようなことを大切にされていますか?

荻原:ずっと自分の書きたいものにあてる時間をどうちゃんと確保しながら生活をしていくかを意識してきました。忙しくならないことを最優先に考えています。世の中にはきっちり仕事をするのが得意な人もいますが、スキマ産業で人と違うペースで仕事をする人もいると思うので、それも許容してもらえてどちらも選択しやすい社会になればいいなと思います。
若い人と話していても就職活動がすごく厳しいと聞きます。カメラマンの友達は、アルバイトをする時期以外は地方で好きな写真を撮っています。そういう、フルタイムで働かないという働き方もあっていいと思います。

最初から就職しないで、「先がどうなるかわからない」とか不安定なのが当たり前になると、みんなが「生活できなくなったらどうしよう」と心配するようなことに麻痺してきます。実際に困ったら、バイトでもなんでもすればいいと思います。
原稿料だけで生活しようと頑張って忙しく働いても、古本屋に行く時間も読む時間もなかったら全然楽しくないんです。暮らしがそんなに裕福ではなくても、仕事量が程よいくらいで自分の好きなものが書ける方がどう考えても楽しいと思うんです。

人と出会うことで自分に向いた才能に気づいていく物語も好き

Q2.荻原さんにとって古本の魅力とはなんですか?

荻原:新刊書店で買えない本だったり、自分が生まれる前の本を買ってきたら、どういう時代背景でこの本が書かれたのか、こういう本が出てしまったのか、本から派生して調べていく面白さがあります。古本を読むときにただ一冊で終わりではなく、「これを読んだらこの本も」と、きりがない。面白い作家の本を読んでデビュー作にさかのぼろうと思っても、田舎の本屋さんだとできません。過去にさかのぼりたいという想いは田舎にいた時から募っていました。音楽も今みたいにネットがなかったから、初期の作品のためには中古レコード屋で探さないとならなかったです。

記者:なぜ過去にさかのぼりたいのですか?

荻原:半分くらいは作品をはじめから順番に制覇したい、というコンプリート欲求ですが、さかのぼっていく途中で分岐していって、たとえばその人の友人の作家だったり同時代の作家のグループの作品も読みたくなります。縦にも横にもとにかく止まらなくなっていって、繋がっていくものを追いかける楽しさがあります。
人間関係の中で色々な才能が分岐していくというか、天才肌の人の近くにいたから「自分はまじめに研究しよう」となってすごくいい評論家になったとか、人と出会うことで自分に向いた才能に気づいていく物語も好きです。

狭いところに届く楽しさ

Q3.そもそも作家になる夢を持ったきっかけは何ですか?そこにどんな発見や出会いがあったのですか?

荻原:小学四年生ぐらいからラジオのハガキ職人(番組ではがきを読まれ景品をもらう)をして、月に40枚くらい出していました。お題があって、そのお題に合わせてネタを考えるんです。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話をずっと考えていて、読まれると子供ながらに自分が考えていることを面白いと思ってくれる人がいるんだと自信になりました。
学校でも感想文とかではなく学級新聞が好きでコントとかでたらめな記事を書くと、鼻で笑うタイプもいればごく少数「面白かった」と言ってくれる人もいました。そういう狭いところに届く楽しさを見出していました。

記者:狭いところに届く楽しさを見出す感覚はメジャーなものに価値を感じないという感じでしょうか?

荻原:メジャーなものはもうたくさん語られていてあまり付け加えることがありません。野球で言えば1軍の選手よりも2軍や、1軍2軍を行ったり来たりしている選手や引退した後の選手が何をしているかなどが気になります。スターに興味がないというのではないですが、作家でも「夏目漱石」とかではなくてあまり記録が残っていない面白い人もいますし、当時は売れなかったけれど今なら面白いんじゃないかと思って調べるのが好きなんです。

「19歳から始めています、30年やってきました。」それ一行書くために

Q4.その感覚が今のお仕事にも活きていらっしゃると思いますが、ターニングポイントはいつでしたか?

荻原:書くことだけで食べようと思っていた20代でしたが、30歳手前にそれを続けていくのをやめて書きたいことを書いてあとはバイトでも、と舵を切ったのは大きかったですね。
業界紙の仕事のときはメインである取材やインタビューが自分は得意ではありませんでしたし、文章の面白さよりデータの正確さを重視されました。面白く書いてもそんなことはやらないでいい、といわれると自分の得意なところを完全に封じられて働かなくてはならなくて体調も悪くなりました。自分が調べたいことをどこかで発表してあとは色々な仕事をしてやろう、好きなことをできないなら食べていけなくてもいいと思いました。
書いていた同人誌が京都のミニコミだったのですが、だいたい他の仕事をしながらやっている人が多くて、「日曜作家」みたいな感じだけれど時間をかけて面白いものをつくっていました。自分が好きなのはそういうものなんだと思いました。

物書きになりたくて19歳で上京した時に若者向けの雑誌を中心に仕事をしていましたが、当時の雑誌は最新の情報や流行についての企画でいっぱいだったので、古本と中古レコードが好きだったりすると商業誌と関係する場がなく、自分の好きなことが仕事になるという発想がありませんでした。商業誌で仕事をしながら同人誌で好きなことを書くということを長くやっていました。好きなことが仕事になったのは『小説すばる』(集英社)という文芸誌で古本のエッセイを書いたのが初めてです。仕事を始めてから19年近くかかりました。長くやっていると30年前のことも書けるようになって、若い頃にはできなかった書き方もできるようになったのでもうちょっと続けたいです。
「19歳から始めています、30年やってきました。」それ一行書くためにすごく苦難の道がありましたね。


記者:荻原さんはご自分の好きなものを妥協せずに貫いてこられたんですね!そのためには色々な働き方がある。元気の出るお話をどうもありがとうございました。インタビューは以上になります。
   

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荻原魚雷さんについての詳細情報についてはこちら
↓↓↓
著書:『古書古書話』(本の雑誌社)
『古本暮らし』『閑な読書人』(晶文社)
『活字と自活』『書生の処世』『日常学事始』(本の雑誌社)
『本と怠け者』(ちくま文庫)など。
web本の雑誌 http://www.webdoku.jp/column/gyorai_kaidou/


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【編集後記】
今回インタビューの記者を担当した見並、岸本です。
物静かな口調で、好きなものを書き続けるために沢山の決断を繰り返しながら続けてこられた強い意志を感じました!これからもご活躍期待しています!

この記事は、リライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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かおりん

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