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いつか許す日のために今は許さない

私はこの7年ほど酷い容姿コンプレックスに苦しんできた
まだ唐突に苦しくなる瞬間はあるけど、最近、一つ前へ進んだ

私の容姿コンプレックスの原因は身近な人の言動からくるものだった
メディア露出のある仕事を選んだこともあり、高校生クイズで初めてテレビに出て以来、匿名の知らない人からの中傷はそれ以上に膨大な数あるけれど、私を知らない人が無責任に打ち込んだ文字列なんて全く気にしたこともない
むしろ、そういう人に勝手に好みの容姿だとジャッジされる方が大変そうだなと思う

私が身近な人の無神経な言動に出会うたびに苦しんでいたのは、生まれつきの容姿だけで私という人間の、良いところも悪いところもたくさんある特性が全てブスという括りで蔑ろにされることへの絶望だった
優しくて賢くて誠実で愉快な私が、容姿が誰かの好みでないだけで全て無くなってしまうの?って化物級の自己肯定感と超ド級の自己否定感のねじれに絡め取られて苦しかった

私に容姿コンプレックスを植え付けた主犯格と言える人間は、友人とも言えるような男達だったのだ

でも、今私が恨んでいた主犯格は一人もいなくなった
2019年5月13日、最後の一人から謝罪文を受け取った
これで恨んだ人間、全てを謝らせた

そいつらよりずっと強くなって叩きのめし、言論の自由を奪った訳ではない。そうしようと思ったことがない訳でもないし、事実、同時並行で圧倒的な力を身につけるために邁進してきた
でも、彼らを変えたのは力の差ではなかった。私は自分が正しいと思う価値観の元、怒り続け、同じフィールドに立って貶めることなく、彼らを人として尊重し続け、彼らが困った時には友人として手を差し伸べ続けたことだった

彼らは私と友人であることを選び、間違いを認め、私を尊重してくれた
最低なことを何度も言われたけれど、ただ私の信条と誇りにかけて尊重し続けていたことで私を恩人と称してくれたことが素直に嬉しかった

私が恨んだ人間はみんなただの友人になった。私に酷い言葉を投げかけたことを間違いだと認め、もう一度尊重しあえるただの友人となった

最初から酷いことなんて言わずに尊重してくれる友人なんていくらでもいるし、そういう人こそが正しいのは間違いのない事実である

それでも今回のことには大きな意味があったと思っている

私は容姿で馬鹿にするような奴は元からそういう奴できっと変わらないし、分かり合えないとどこかで思っていた
私が正しいと思う怒りをぶつけても響くことはないとどこかで思っていた

たとえ、変わらないのが事実であったとしても、変わらないと思ってしまったら、もうそこで全てが終わってしまうから、ただ自分が諦めないためだけに人は変わると信じて怒り続けていた

でも、彼らは変わったのだ

私は勝った
私の周りの女を容姿で見くびって虐げることを良しとする価値観に
そして、反論するのが怖かった自分の弱さに
彼らも勝った
いつの間にか植えつけられていた悪しき価値観に
そして、それを正しいと疑わなかった自分の弱さに

十代の頃、容姿は事実なのだから、言われても仕方ないと思っていた。ブスだと気軽に馬鹿にされたときに怒ったらヒステリックだと思われそうで、ヘラヘラと道化に徹して生きていた。そうじゃないと私の居場所がなくなると思っていたから
でも、怒らなきゃ分かってもらえないことだってあったのだ
私が生きている24年の間にだっていろんな価値観が変わっていった。長い歴史を見れば枚挙に暇がない
声をあげた誰かがいて、言われて気付いた人がいて変わってきた
言葉は質量を持たないけれど、無力ではないのだ

世界はありとあらゆる争いが溢れている
争いは終わらないのかもしれない、人と人が分かり合うことはないのかもしれない
誰かが勝てば誰かが負ける以上、かつての私がそうだったように負けた方は恨み続け、寝首を掻くことを夢見続けるだろうし、その危険がある以上、勝った方は警戒を続ける
ハダカデバネズミだってそうやって生きている

だから、間違っていると思う価値観に対抗し、誰よりも強くなることで勝ち切ることが全てだと思っていた
でも、それだけではないのかもしれない
日常で出くわす不誠実な強さに心痛める日々だけど、誠実な言葉はいつか本当に届くのかもしれない
何度も自分に言い聞かせるように誠実さだけで勝ち切る日がくるといっていたけれど、今日からの私はそれをもっと信じて生きて行ける

一度植えつけられた価値観を正すのは容易ではない
本気で反省して謝った後、同じ間違いを犯すことなんていくらでもあるし、実際、反省した彼らも元から持っていた価値観の名残を感じる発言をすることはある
私はその度に何度でも怒ると思う。このまま事切れてしまうのではないかと思うほどに強く激しく怒るだろう
そして、何度でも許す
目的のない怒りには終わりがない。終わらない怒りは苦しい
私はいつか許す日のためにこれからも絶対に許さずに怒り続ける
強くなった私の勝ちです

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