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個性コンプレックス-本当の自分が分からないけど、多分インドにはいない-

個性的という無個性に没しないようにという話

男らしく女らしくとかじゃなくて自分らしく
子供らしくおばさんらしくとかじゃなくて自分らしく

今、私達は既製のこうあるべきという価値観からそれぞれの価値観へと歩み始めている

それは既存の枠組みの中で息苦しい思いをしていた人が無理をせず生きられるより良い社会への第一歩だと思う

しかし、「人と違うことは素晴らしい」という価値観は苦しい枠組みと紙一重だ

私は「人と違うことも同じことも同じくらい素晴らしい」と思う

極端な個性や変わった生き方をする人への賞賛は変わった生き方に不向きな人を焦燥に追い立てる
行き過ぎた個性尊重の弊害として、何者かにならなければという焦燥感があるのではないか

100人に1人だとか1万人に1人だとか、レアリティの高い特性だけが個性として尊重されるのはおかしい
誠実な付き合いができるだとか地道な積み重ねができるだとか電車で席を譲れるだとか素晴らしい特性が変わった個性より尊重されないものであるはずがない

他と違えばいいってものではないのだ
変わったものだけを求めていくと誠実さを失う
それ以上の個性をアピールするためにはもっと派手でクレイジーなパフォーマンスをと強い刺激を求めて本質を見失いそうになる

例えば、私は昆虫が好きだ
でも、昆虫が好きだからといって家の床を昆虫で敷き詰めることはしない
当たり前だと思うだろう
だってそれは正しくないから
それと同じように私は昆虫を生で食べたりしないし、乱獲したりしない
そうする人より愛が足りないのではなく好きだからしないのだ

誠実であることは時に地味だ
地味であるということは人目に止まらないということでもある
あえて褒められる機会は少ないだろう
だからこそ何度も褒めていきたい
大輪の薔薇ばかりが美しさではない
私は野の草の美しさを知っている。同じだけ美しいと思う
安作りの造花では敵わない本物の美しさがある

だから、個性的にならなければと躍起になって既存の個性的像の中に埋もれないでほしいと願っている
インドへ自分を探しに行く人よりもヒッチハイクで自分の限界を試す人よりも自室で自分自身について思索できる人の方がどれだけ自分があることだろう
特別なことをしなくても自分が分かる方がよほど本当の自分でいる時間が長い
もし、インドで本当の自分を探したいと思ったら、何故インドて本当の自分が見つかると思うのか考え尽くすのだ

組織で働く人を社畜と馬鹿にして「好きを仕事にする」をキャッチフレーズにフリーランスこそが自由で個性的な生き方だと喧伝するような人達がいる
私は今、学生と作家とタレントのわらじで三足歩行というイレギュラーな生活を送っている
個性的と呼ばれるものかもしれないけれど、私には組織で働く個性がなかったというだけの話に過ぎない
今まで色々なアルバイトをしたけれど、その多くで私は職場一の無能の名を欲しいままにした
私は21世紀生まれの女子高生よりも伝票を書くのが苦手だし、レジ締め作業は頼りにならない私に代わって県で一番偏差値の低い高校を中退した女の子がやってくれていた
今、毎朝起きて約束通り会社の仕事をこなすことが苦手な私に代わり得意な人が会社に行ってくれる
その代わりに私は2週間コスタリカのジャングル走り回ったりする仕事を担当している
私は尊敬し、感謝している
私の仕事はやや理解が難しいけれど、リスペクトしてもらえると嬉しい
お互いを尊重することに意味があるし、奇妙な動物も地球の多様性の一つなのだ

今日、歳若き青年が「人間としての魅力と収入は比例する年収800万以下の男とか選ばない。金も稼げないようなショボい男には魅力を感じない」と言っているのを見た
事実、換金性に優れたタイプの人間的魅力はある
だが、数限りなくある人間の魅力のほんのいくつかに過ぎない
事務能力のなさから無能扱いされているが、誰よりも電車で席を譲るスピードが早い男を私は知っている
電車で席を譲るスピードにはちょっと自信があった私が大抵先を越されるのですごい人だと尊敬しているし、私はそれを人間としての魅力だと思っている
稼がなくたって少しもショボい男なんかじゃない
強い属性に身を埋めることが全てではない
人の魅力は突き詰めていえば、誠実さであることである
各人が生まれもった魅力は必ずしもお金につながるものではないし、派手で人目を喜ばせるものではないかもしれない
でも、それこそがその人の魅力なのだ
引け目を感じることなんてない

これまでの私は他人を馬鹿にする強い属性の人間に対して強い怒りを持って代わりに戦って打ちのめそうとしてきた
でも、誕生日にサンリオピューロランドに行ってきた今の私は違う
ミラクルギフトパレードでキティはみんなの大切なものを壊した闇の女王を「誰だって暗い気持ちになる時はあるわ。光を見たくない時だって」と庇い、「彼女を信じること」によって闇から救い出した
必要なのはかわいい・やさしい・おもいやりである
是非みんなミラクルギフトパレードを見てほしい

稼がなければいけない・個性的でなければいけない・自由でなければいけないと雁字搦めになっているのはむしろ稼いでいない人や個性的だと言われない人よりも社畜と他人の仕事を罵ったり稼がない男はショボいと思っている彼らなのだ

人はどれだけ能力があっても永遠に勝ち続けることはできない
だから、彼らもいつか自分を雁字搦めにしているくくりからこぼれ落ちてしまうことがあると思う
私はその時彼らが辛い気持ちにならないでほしいと願っている

自由は決して自由な人に見えることではないし、個性も同じく個性的な人に見えることではない

みんなが本当の自分らしさを互いに尊重できる日に向かって私達はもう歩き出している


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