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当番さんちのお雑煮ナラティブ

当番さんちのお雑煮事情まとめ。色んな年のツイート詰め合わせ

【2020年1月3日】
「正しいお雑煮」はない。「慣れ親しんだお雑煮」と「そうでもないお雑煮」と「聞いたこともないお雑煮」があるだけ。「慣れ親しんだお雑煮」が口に合う人は幸せだけど、「慣れ親しんだお雑煮が口に合わず、故郷を出て他郷のお雑煮を食べたとき、やっとお正月が楽しくなった人」もいる。当番の母だけど。

各地各家のお雑煮が口に合ってお正月が楽しみなのは幸運なこと。人に作ってもらう立場で自分の好き嫌いを言いづらい場合もあるからな。春休みや夏休みには帰省をする当番母が年末年始には絶対帰省しなかったのは、母実家のスルメ出汁雑煮が嫌いだったからだ。

全国のお雑煮事情を見ていると、中には「これは好きな人にはたまらないんだろうけど当番は食べられないなあ」というお雑煮も多い。海沿いの地域だとムリそう率が跳ね上がる。当番が偏食で、海の無脊椎動物が入っていると食べられないからだけど。でも、それが大好きで、それを懐かしむ人もいるのよね。

伝統とは関係なく、無節操に「食べておいしいお雑煮」を選んで作れる根無し草生活の喜びよ。地域やご家族の伝統を守ろうと頑張る人々のお立場や努力も、それはそれで尊いんだけれど、自分がおいしいと思わない行事食を食べたり作ったりしなければならないのって、つらいもんだからさ。

丸餅か角餅か、茹でるか汁の中で煮るか焼いて入れるか、出汁は何か、具は何か。お雑煮って色々あるし、「全国のお雑煮色々」なんて記事や番組を見てはウマそうだと思ったものを作る生活をしてきたが。「おいしいけれど、自分の好みはここら辺にあるようだ」というのがだんだんわかってきた。

暫定で、当番がいちばん好みのお雑煮は鰹節と昆布の一番出汁で鶏もも肉を煮て、鶏の旨味と脂を加えたお出汁。具は、大根人参里芋。できれば大根をカブにしたいとこ。家族が椎茸を所望するから入れるけど自分用なら入れない。平茸があれば入れる。かまぼこ、母は入れるけど私は入れないでいい派。

かまぼこって温めて食べるより冷たいのを食べるほうがおいしいと思う。お雑煮に紅白かまぼこを入れるくらいなら当番ははんぺんをいれたい。紅白のはんぺん(お正月用に出るのよ)をね、梅の型で抜いてね。そしてお餅は角餅、モナカの皮っぽいところとモチモチのところが出るくらいよく焼いたのを入れる。

青みは茎みつば、あれば吸口に柚子皮。それが当番のいちばん好きなタイプのお雑煮。生粋の東京風とは言えない、どこ風なのかわからないけど関東風のお雑煮。二番目に好きなのは圧力鍋で煮たポトフのスープに焼いた角餅入れたお雑煮。具はタマネギ人参ジャガイモ、出汁ガラのお肉に、あればキャベツ。

あらゆるおいしい味が染み込んだ熱々の出汁を焼いたお餅に吸わせて食べたらもうそれは立派なお雑煮だって当番思ってるから、1月にポトフを煮たら二日目はポトフ雑煮になる。ロールキャベツをブイヨンで煮たらロールキャベツの出汁でもお雑煮作る。ロールキャベツの翌朝のお雑煮おいしいよ。

ロールキャベツの翌朝のお雑煮

・前日にロールキャベツをコンソメ主体のスープで煮て食べる。ロールキャベツを少し残しておく

・翌朝、冷えたロールキャベツを輪切りにして、ロールキャベツのスープと一緒に器に盛って電子レンジで加熱

・餅を焼いて、温めたロールキャベツのスープに投入。食べる

【2022年12月31日】
今夜のお蕎麦と明日のお雑煮の汁とお煮しめだけだというのに大晦日の食事当番忙しすぎる。若い頃はがめうし※と当番のふたりがかりであったとは言えよくお雑煮と煮染めと栗きんとん作った上に餅までついていたもんだよ今はもうできる気がしない(餅は餅つき機だが餅米の支度だって結構手間なんである)

※がめうし→「太陽が水瓶座で月が牡牛座」の略。仮称

いかん、きのう下味つけておいた豚肩ロースも煮ておかなきゃならなかったんだわ。

当番「がめうしー! ちょっと来てお雑煮のダシ味見して!!」

♒♉️「アータお雑煮のダシくらい自分で味をキメられるようになりなさいよ何年やってんの……」

当番「〇〇年だが! 味見繰り返してたらわかんなくなってきたんだよ!!!」

♒♉️「バカたれ……(味見)……塩!」

当番「はいよ!!」

月乙女座当番、月牡牛座のような不動の味覚が持てず毎年雑煮の味付けがブレる。

【当番さんとこのお雑煮 大晦日の作業】
カツオとコンブの一番だしに戻した干し椎茸・鶏腿肉細切れを入れて煮る

アクをあらかた取ったら大根とにんじんの薄切りを加えて更に煮る

日本酒・濃口醤油・塩で調味する

里芋薄切りは別に下茹でしておく

ここまで前日の作業

【当番さんちのお雑煮、当日の作業】
前日に調味しておいたお雑煮のベースを温める

根三つ葉をザク切りにする

紅白かまぼこを薄切りにし、下茹でしておいた里芋と一緒にお雑煮の鍋に入れて温める

角餅を焼き、椀に入れ、お雑煮の具とダシを上から注ぎ、三つ葉を散らす

【2023年1月1日】
当番家のお雑煮は当番母が母実家のお雑煮の味を嫌って「食べておいしいお雑煮」を求め数年試した末の「関東風らしい」ということしかわからないスタイル。現住所のご当地風お雑煮でもなければ東京風お雑煮でもない。晒してもまず故郷を辿られることはないデラシネ雑煮※である。

※デラシネ 根無し草のこと

当番が物心ついたときは既にこのお雑煮であったので、当番にとっての「うちの雑煮」はこの先もずっとこれなのであるが。カツオとコンブでダシとって、鶏腿肉の脂で香りとコクを足して、椎茸は当番が嫌いだけど入れないとダシの味が決まらないから渋々入れて、当番の椀にだけは椎茸入れないお雑煮。

鶏皮から出た金色の脂が浮いている、濃口醤油控えめの、ほぼ塩と酒で調味した金色のすまし汁に大根・にんじん・鶏腿肉・里芋・にっくき椎茸・紅白かまぼこの沈んだお雑煮。餅は焼いた角餅、吸口は根三つ葉のザク切り。

当番は独り身なので、そう遠くない将来はお雑煮の味が決まらないからと渋々椎茸を入れて、でも食べたくはない椎茸をもてあますことになるだろう。椎茸くらい食べなさい?それはそう。でも椎茸食べると新年早々何とは言わないが椎茸臭くなるんだよね。

当番母実家の伝統の雑煮はスルメでダシを取るそうで、その雑煮を嫌って他の季節には帰省しても正月にだけは絶対帰らないのが当番母である。徹底している。ゆえに当番は件のスルメダシ雑煮を口にしたことがない。

そもそもイカタコエビカニの類が嫌いな当番は、当番母が伝統のスルメダシ雑煮から離れ関東風ベースのデラシネ雑煮を開発してくれて大いに命拾いしたのである。

この「当番母は実家のお雑煮が嫌いで」から始まる話も当番さんちのお雑煮ナラティブであり。当番さんが独り身なので今後誰にも引き継がれはしない当番さんの代で終わることが確定しているお雑煮ナラティブだが、それはそれでいいのだ。みんながみんな実家のお雑煮を継がなくてもいい、たかがお雑煮だ。

たかがお雑煮だから、一族の伝統の味がおいしくて好きならそれを作って、おいしくなくて嫌いなら好きになれるお雑煮を開拓してそれを食べる方がいい。お正月から食べたくない味のものを祝い膳だからと口に入れなきゃならないのは苦行にすぎる

地域と血族の伝統から離れることにためらいがなく、自分の舌のみを信じる我が母によるデラシネ雑煮が、当番にとっての「実家のお雑煮」である。とても短い伝統の味だが、当番にとってはこれがオリジンである(まあ今は当番が作るので、毎年味がブレるのだけども)。

当番は焼いた切り餅の、よく焼けて空洞ができた餅の角がモナカの皮みたいに軽くパリパリの質感になり、それがお雑煮のダシを吸ってフニャフニャノビノビとなった香ばしく儚い霞のような部分を食べるのが好きだ。

なお、当番家では切り餅の在庫があるうちはあらゆる汁物に焼いた切り餅が投下されるので年明けしばらくは「ポトフ」とか「オニオンスープ」とかに焼いた餅がプカプカしているのである。ポトフに焼いた切り餅入れて粒マスタードで食べるのうめぇよ。

オニオングラタンスープのバゲットが餅になったりもするのである。チーズ完備である。カロリー!

【2021年1月7日 おまけの三つ葉話】

朝陽の差し込む台所の窓辺にいる

正月のお雑煮に使った根ミツバくん。お猪口に立てて水をやっていたら新しい葉が伸びてきた。暖かくなるまで部屋で育てて、大きくなったら土に下ろしてやる。春になると拙宅の庭で馬に食わせるほど採れるミツバは、毎冬こうやって補充されていく。

四月は三つ葉のブーケが毎日採れる
大葉に見えるけれど三つ葉

1月にこうだったものが4月末にはこうなりますね……サッと湯掻いてポン酢醤油で食べるのがうまいよ。ミツバのクセが嫌いだったら瓶詰めのなめ茸とか、ゴマドレッシングとか、甘みのあるタレをかけて食べると緩和されるよ。


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