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Factory Girls

産業革命後のアメリカ、ローウェルの繊維工場で、女性労働者の地位向上を求めて戦った女性たちのおはなし。

ソニンさん演じるハリエットをはじめとした女性工員たちが詞や随筆を寄稿していた「ローウェルオファリング」という雑誌があって、当時、女性に参政権すらない時代に女性の意見を表明できる一つの大きな場所だったの。

ローウェルオファリングの編集長を務めることになるハリエットと、新しく工場にやってきた、闊達で自分の意見を持っていてリーダの素質があるサラ(柚希礼音さん)は、工場での女性工員の地位を少しでも上げて働きやすくしたいという思いは一緒だったのだけれど、

ローウェルオファリングの注目度を足掛かりに政治的に「上手に」地位向上を図っていこうとするハリエットと、工場の中で今目の前にある人権侵害と戦おうとするサラの思いが少しづつ掛け違っていく

今法改正の真っただ中でいろんなことを考えて意見をここで言って、でもここでは言わない方が良くて、ってすごく考えて注意深く動かなきゃって思ってる私にとっては、まさに身につまされるテーマだったの。

まっすぐ動けるサラをまぶしく思いながら、でも、私がやっている方法だって私たちが手に入れる権利を現実的に増やしていくためには一番いいんだって思い、一方でなんだか譲歩しながら権利を獲得するのが現場を裏切っているような気持になっちゃう。

幕開き早々、ハリエットのローウェルオファリングでの功績をたたえる男性たちが、気安く体に触ったり、ハリエットの手からぞんざいに雑誌を取り上げたり、「女の割にはよくやるよな」って思っているのが透けて見えるし、自分のことを好きだって言ってくれて全面的に味方になってくれているように見えるベンジャミンカーティス(水田航生さん)が、ハリエットの「私たちの権利を守りたい」という熱い発言を遮る形でキスをするの。

私、このキスはほんとに暴力だと思うし腹が立ってしょうがないの。私だったらその場で即ビンタするんだけど、ハリエットはそれをしないで、ベンジャミンの大陸横断鉄道を作りたいんだって夢の話を聞いてあげる。水田さんのこういう無邪気に人を傷つける役だいすき。かっこいい俳優さんなのにそれだけじゃない、作ってない感じの作ってるだろうお芝居がすごいなあ。

こうやって、少しづつ心をすり減らし、殺されて行って、「みんなのために
ベストではなくベターな環境を獲得する」っておもってどんどん自分を追い込んでいくハリエットに私もうううううって思いながら感情移入しちゃった。

サラと協力する男性の労働組合のなかでも女性に対する差別が有ったり、労働新聞のリーダー、シェイマス(寺西拓人さん)も、移民として差別を受けていたり、対立線が一つじゃないところもすごくリアルで、しんどい。寺西さんの労働者のひと、ぞんざいかっこいい!!

サラやハリエット以外の女性工員たちもすごく魅力的だし、それぞれに自分の人生を背負って自分で自分の人生に決断を下して生きているかっこよさがある。

それぞれの役者さんたちのきらめきが、色褪せずに役の中でも色づいていて素敵だったな。マリーキュリーの鈴木裕美さんは、緻密に縦の糸と横の糸を張り巡らせて布を織るように演出されている感じがするけど、板垣さんはいろんな山の支流から水を集めて一個の大きな川の流れができるみたいな感じがする。どちらもすてき!!

アビゲイル(実咲凛音さん)は芯のあるしっかりした女性で、一番頼れるの。アビゲイルが一番「正しさ」をもってる感じがするな。あと、みりおんが美人すぎる。

ルーシー(清水くるみさん)は、皆より年下の頼りなくてかわいくて、突破力のある魅力的な子。恋をした時の「ドキドキが止まらないの!!」がかわいくて劇場中の庇護欲を持ってった。
 あと成長後のルーシーと、ルーシーのお母さんを演じられた春風ひとみさんが、動きとか喋り方がルーシーそっくりで、びっくりした。一瞬、え?くるみちゃん??って思った。春風さん、本当に素敵。魅力的。

マーシャ(平野綾さん)は、華やかな世界にあこがれてる、スノッブな子。ひょうじょうがっくるっくるかわってかわいい!!なんんというか、ほんとにかわいい。無表情だってかわいいのにこんなにくるくるかわるのほんとにかわいい。

グレイディーズ(谷口ゆうなさん)は、ちょっとゆっくりめで、いつでも穏やかなひと。こういう人がいると場が和むよね。みんなで歌える歌をつくったりして朗らかにしてくれる。自分の悲しみを抑えてみんなを包んでくれるキャラクターが大好き!

フローリア(能條愛未さん)は、おどおどしてて、気が弱くて引っ込み思案にみえるの。でも勝気なマーシャに家族からの虐待をばらされても、「それは事実だけど私はそれを乗り越えようとしている。慰めなくてもいいから、ただ、見ていて」っていう強さにハッとさせられる。あの台詞素敵だな。

ヘプサベス(松原凛子さん)は、勝気な感じ。お金が欲しくて経営者側に寝返ったように見えるの。でも、そちらでもひどい目に合っているの。マーシャとやりあうときの感じもかわいいし、浅慮なところが魅力的なんだろうな。まっすぐに自分の間違いをサラに伝えるのもすてきだったな。

ガールズ全員がとんでもない歌のうまさで、アンサンブル女子も含めて全員で歌うところとか、やばい。世界中の歌唱力がここに集った。やわらかい、1840年代っぽい田舎っぽい旋律で、曲があることでしんどいだけじゃなくわくわく感が出るなあ。

初演を見た時は、ファクトリーガールズって群像劇だなって思ってみてたけど、群像劇というより、皆が主役って感じ。それぞれの人生をそれぞれが生きていて、いろんな物語が錯綜している。そしてどの物語も魅力的。

悪者たちも、原田優一さんが演じられるアボットは、きっと気弱で、暴力が好きじゃない、生粋の文系経営者なのよねきっと。今の時代に一番いそうなタイプ。ちょっと舞台の登場人物と現実世界をつなぐ役割もあるような、わたしたちの原田優一感もあって、ほっとしちゃう。あと歌がばっかうまい。

そして、戸井勝海さんのウィリアムスクーラーさん、こういう議員さんいる、、、女性の地位向上のために自分は貢献しているんだって心の底から思ってるの。女性を下に見ながら、あなたたち弱者を守りますよって言ってるんだけど、本当に対等な立場としては見ていないの。
穏やかないい声で演説されたら騙されちゃうんだけど、私は騙されないんだから!と客席でなんとか踏ん張ったのでした。や、でも戸井さんに山高帽とか似合いすぎるのよ。かっこよすぎるのよ。あと声がいいのよ。歌が素敵なのよ。
原田さんと戸井さんの歌とか、あと100回聞きたいの。

しっかし嫌な奴だった!!こういう議員さんいるの!!!!法務委員会とかにいるの!!!くっそう!自分だけ正しいみたいな顔でさ。しかもその議員さんは戸井さんじゃないからただただ腹立つわあ。

実際に起きている事件は1840年代の昔のお話で、あのころから比べたら女性に参政権も認められて差別はなくなっているけれど、虐げられている人は相変わらずいて、貧困はまだまだ変わらずあって、やらなくちゃいけないことはたくさんある。無意識に誰かを下に見ている人もいるし、戦い方の違いで袂を分かつこともある。

真正面から「これは間違ってる」っていって国に対して物申して、デモをやって、記者会見やってる同期をまぶしく見つめながら、私は、どこまでだったら調整可能なのかの妥結点をさがしていて、ちょっと自分がずるいような気がしてたりもする。

だから、こうやって物語の中でそれぞれの思いを描いてもらって、自分自身の人生を認めてもらった感じがしました。みんなほんとに魅力的だからぜひみてほしいなああ。


あと、戸井さんがかっこよすぎて寿命が延びました。かみさまこの世に戸井さんをありがとうございます。

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