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欲望という名の電車

調べてみたら、ここのところ、ミュージカルとストレートプレイ半分半分くらい見てるけど、あんまり歌わないお芝居と歌うお芝居の区別をつけてなかったから、自分で調べて、そうだっけってなってる。
節がついててもついてなくても、お芝居って音楽的よね。

今日見た欲望という名の電車もずっと音楽が鳴ってて、素敵だし、お芝居にぴったりと思ってたらこのために作曲したオリジナルの楽曲だったみたい。すごい。全部がぴったりで素敵。

昔大竹しのぶさんのバージョンを見たことがあるっぽいんだけど記憶がないなあと思ってみに行ったけど、これは若い時に見てもわかんなくて記憶を飛ばすわ。
あらすじ、ウィキペディアのあらすじが情け容赦ないから見てほしい。


気位が高くて、自分の容姿にちょっと偏執的なプライドを持ってるブランチは、妹のステラが結婚した労働者階級で元軍人で体も頭もマッチョな「ポーランド者」であるスタンリーを心底軽蔑しているの。人間が違うと思ってるんだろうな。軽蔑していることを表明するのも躊躇がないし、逆に相手から攻撃されることが我慢ならないの。山本郁子さん、美しいことを鼻にかけて、でも年齢を重ねて美しさがなくなっていくことを不安に思ってて高慢なブランチだった!役者さんすごいなあ。

スタンリーは、急遽代役の鍛治直人さんなんだけど、鍛治さんスタンリーすぎる。自分の世界と違うものが入ってきた時に男の人が示す、拒絶とか怒りとかが、リアルで怖いよ。妻に「しつけ」だって言ってDVする男性の典型って感じだった。いるいる!!いるいるいるいる!!でも、こういう人を「おとこらしい」って思っちゃうのもわかるぅ。わかっちゃダメだけどそう思っちゃうの。マッチョってそうよね。

そんなわけで、物語の中心人物、ブランチもスタンリーも、身近にいがちな、殺したい人って感じなの。お友達と一緒に見たんだけど、終わった後喋っててブランチっぽさを持ってる人、身近にいるいるってなった!

スタンリーの妻で、ブランチの妹のステラは、スタンリーのDVを許しちゃうし、力強くてかっこいいって思ってる節もあるけど、ブランチと同じようにスタンリーを下に見てる部分もありそう。スタンリーはそれも気づいてそう。
ステラにはどうしても感情移入しちゃいながら見ちゃうんだけど、

最後、ステラは「姉が夫からレイプされたと言ってるのは、姉が精神を病んでいるせい」と「決めた」ように見えたの。そして、それが彼女の周りの世界での真実になったよね。本当は夫が姉をレイプしたのは事実だって薄々わかってるけど、ステラはそう「決め」なかった。彼女の世界の真実の選択はステラに委ねられてたけど、彼女は「家庭的な夫」「かわいそうに精神を病んだ姉」に決めた。
ように見えたの。

ずっとステラに感情移入してみてきて、彼女がそう決めたのもわかるなって思って、その選択にゾッとした。結局、上手に自分の人生を操縦しているステラが一番深い闇を持って、普通に生活してるのね。
家庭内の性的暴力があった時、被害者でも加害者でもない人が加害行為をなかったことにして、そのことが加害そのものより被害者を傷つけるケースを本当によくみてきていて、子どもより夫を取る母親に死ぬほど怒って来たけど、こういう選択なんだなって明確に目の当たりにして、改めてぐぐぐぐってなってる。

こういうお芝居は友達と一緒に見て、友達と、ああだこうだ話して、そういう見方もあるかあ、ってなるまでが観劇だなあって思うの。そうやって話せるお友達がいるの幸せ。カフェに入って怒涛のように話して、別れてもポツポツとLINEで話して、友達と共有できるものにこういうお芝居が入ってくるの、楽しいなあ。今はコロナで劇場ではお話できないけど、そういう意味でお芝居はコミュニケーションツールでもあるよね。「レイプをされた姉を見殺しにする気持ちがわかるかどうか」なんて、普通に暮らしてたら友達と共有しない話題だもん。

楽しかった。でもずっとグググって考えちゃうね。それが楽しいね。素敵な観劇体験でしたん!!

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