コロナ禍で仕事が完全になくなったイベント裏方がもがいた、書き残し #6

新聞社に存在する“内勤”“外勤”の文化とは?

前回ちらりと説明したように“内勤”は社内に在勤し記事執筆や資料作成など紙面に関するあらゆる作業を会社でこなす。
一方の“外勤”はスポーツ大会や芸能のイベント、記者会見などの現場に出掛け、外から記事を送り込む。

この役割分担について読者的にはまあそうだよねとしか思わず、なんの疑問も持たないが、その世界に生きる人にとっては大きな属性の違いであり、そこには大きな溝があるらしい。それを教えてくれたのが、前回の投稿に登場した部長だ。

社内では日ごろ全員が黙々とパソコンに向かって、ひたすら記事を書いている。一人で書き、デスクに提出を延々繰り返すため、他の人とコミュニケーションをする必要がまったくないため、基本的に記者間の会話がない。そういう職場なので私も原稿のチェック時以外は誰とも話せないため、職場の構造をつかめずにいた。

ある日屋上で、持参したお弁当を食べていたら、例の部長が私を見つけて話しかけてくれた。タバコを吸いに来ていたのでマスクを外した顔を初めてみて「おお、この人こんなに優しい顔してるのか!」と内心思った。部長と話すのは採用面接以来だ。

雑談の中で私が「ウチの部署っていろんな属性の人がいるんですよね?」となんとなく切り出すと「そうそうそうなの!!感じるそれ??」と待ってましたと言わんばかりにまくし立てて話し始めた(笑)

「ウチの部署(ウェブ配信担当部署)はネットなんてものが出てくる前は存在しなかったからね。ここ10年とかでネットに対応しなくちゃってなった時に、あらゆる部署から寄せ集めされたメンバーなんだよ」と振り返る部長。

「最初は社内でも追いやられててね。オフィスでも隅っこの方に追いやられてたワケ。ところが段々ウェブ配信が占める部分が大きくなってきて、紙面担当のやつらとも連携しないと立ち行かなくなってきたから、そうなってようやくオフィスの真ん中に陣取れたわけよ。最近ね」と実はかつて、はみれ部署だったことを暴露。

さらに「メンバーは内勤出身者が中心で、どうしても外勤出身の立場が弱くなりがち。内勤のやつらは『外勤連中がまた外から好き勝手言ってやがる』とか『まったく締め切りも守れんのか』とかブツブツ言うわけ」と両者に溝があることを教えてくれた上で「そこでこの部署に配属されたのが外勤出身のオレなのよお!」と喪黒福造ばりにド――ンと宣言。(笑)

「オレはバリバリの記者だったのよ。いろんな現場に行っててね。記者は内勤から『あれどうなってますか?』とか24時間365日いつ問い合わせが入るか分からないから、昔なんか風呂場にまでポケベル持ち込んでたのよ~」と武勇伝を披露。「そんなバリバリの外勤だった俺が、内勤優勢の職場を均すためにウチに配属されたというワケなのよ」と教えてくれた。どうやら部長も溝埋めに奔走する日々らしい。

他にも、東京本社で紙面用に書かれた記事が全国の販売店に実物の新聞紙として届くまでの流れなど教えてくれた。

おそらくこの日聞けたことは新聞の世界のごく一部分なんだろうなあ。もっといろいろ聞いてみたいので、部長のしゃべり心をくすぐれそうなネタを秘かに探す日々なのであった(笑)

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