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「配信チームを育てる仕事」がすごく楽しい

こんにちは、青山です。

ご縁あって「インハウスのオンライン配信チームを育てる仕事」に多く携わっています。この仕事のゴールは「クライアントの配信チームの自走体制を作ること」です。

「オンライン配信を代行します!」という業者は数あれど「オンライン配信チームを育てます!」という業者は中々いないんですよね。

アクセラレータープログラムを運営する会社さんから国立博物館まで、お仕事をご一緒する中で見えてきたものをnoteに記します。


1.考えるべきことがたくさんある

当然のことを当然のように書きましたが、考慮すべきポイントが本当にたくさんあります。クライアントさんによって

・配信チームに懸けられるスタッフの人数
・スタッフのIT/機材リテラシー
・どの規模の配信が出来るように自走していきたいか
・自走までのタイムリミット

すべてが異なります。
まずは雑談しつつ、スタッフさんの特性を見ながら伴走内容を調整していくことからスタート。

スタッフさんに配信の知識が一切ない場合、ひとまず「目指している配信の完成系」をひたすらインプットし、音響や映像機材の知識がある方は「配信の理論」からお伝えしています。

そして、自走後の配信パターンがある程度決まっている場合には完成形の安定運用を、応用が効く配信を目指す場合は理論を。
もっと言うと、チームが配信や機材そのものに興味を持ちそうな場合は理屈を、そうでない場合は完成形をなど、アプローチは様々です。

悩ましいのは「正解」がないことです。
料理と同じように、同一の機材を用いるにしても、接続する順番やそれぞれに持たせる役割など、何パターンも完成形が作れてしまうのが配信の世界。

プロ(と名乗るのも烏滸がましいですが)としては、現場の電波状況や気温・湿度、安定運用要素のプライオリティなどの状況に応じて、様々なリスクを考慮しつつ正解を作り上げます。
しかし、配信慣れしていない方に選択肢を与えすぎると大抵混乱します。

配信内容に応じて柔軟性のある対応が出来るチームを作り上げるか、それとも現時点で最もリスクの低い機材構成でひたすらに安定運用を目指すチームを作るか。
このあたりも時間や予算、そして人を見ながら最初に設計します。

いやー、考えるべきことが本当にたくさんある。楽しい。


2.配信は手段であり目的ではない

これまでご一緒した皆さんに共通しているのは「配信はあくま手段であり目的ではない」ということ。
例えば博物館であれば「来場できない方々に、作品を身近に感じて欲しい」という目的を叶えるために配信を用います。

私自身も本職はイベントプロデューサーであり、コンテンツをより魅力的にするためにMC/台本書き/配信技術/PA/SNSマーケを身につけ、はたまた店舗運営やコンサバな企業で稟議を通す方法まで覚えました。

この、私が配信技術を身につけた過程とクライアントさんのステータスの近さは、配信チームに寄り添う上でプラスだったと感じています。

カルカルでの勤務は本当に全て学べるのでおすすめです。刺激的だし。)

そんな「何でも屋」だった経験は、クライアントが何を成し遂げたいのかを察知する際、大いに活躍します。

博物館の「オンラインワークショップを開催したい!」という案件の際には、日頃ZOOMを使いまくっている経験とワークショップをデザインした経験が効いてきました。

トーハクさんのワークショップ「なりきり光琳」
小学生とその保護者向けに事前に送付したキットとZOOMを用いて開催。
参加者のITリテラシーを加味して当日の運用を設計。

また、アクセラレーターのデモデイをオンラインで開催したい!」という要望の際には、かつてスタートアップ・VC界隈に混ぜてもらっていた経験から「デモデイの重要さ」がわかります。

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デモデイの配信要件って「PCでの資料投影が出来て、投資家との質疑応答ができる」だけじゃないんです。
「どのあたりのラウンドの方々が対象ですか?でしたら絶対緊張してると思うのでなるべく資料投影は各自のPC使わせてあげたいですね。勝負時だ。」みたいな配慮の方が大事です。
配信機器のハード面の要件定義はもちろんのこと、実際に配信に携わる方々のソフト面の配慮を先回りすることが、クライアントの目的を達成する重要なファクターでした。
そして普段は自分が出演者側の人間でもあることがプラスに作用しています。

関係者の皆さんに配慮し、本番でかゆいところに手が届いた瞬間が何よりも気持ち良いです。楽しい。

3.顧客が本当に必要だったもの

先述の「配信は手段であり目的ではない」にも通じる話ですが「顧客が本当に必要だったもの」という、システム界では有名な小咄があります。(人によってはトラウマ画像)

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(引用:顧客が本当に必要だったもの|システムコンサルティングの第一歩)https://s-jsd.com/entry/1422.html

相談をくださるクライアントさんは、当然ながら配信に関して詳しくない状態です。その状態で

・テレビ番組のようなレイアウトで〜
・同時に複数箇所からの中継で〜
・クロマキー合成も使ってみたくて〜

など、様々な要望が出てきます。
そして、これらの要望をクリアできる配信代行業者さんは沢山いらっしゃいます。しかし、自走を目指すとなると話は別です。
できることを増やすほどシステムは複雑になり、トラブルシューティングも指数関数的に難しくなります。


どこまでのことに対応できる機材を選定し、チームを作るか。


この判断が肝になります。
ひたすらにハイスペックな機材を集めても、うまく活用できなければ23区内をF1マシンで爆走するようなものなのです。
とはいえ、出来る範疇のことだけ実装しても面白くないので「伸び代」を残して自走体制を構築しています。

ちなみに、チームがその時点で請け負える範疇外の案件が来た場合は素直に「配信代行」として発注してもらっています。それはそれで楽しい。

4.クライアントが自走できちゃうと仕事減らない?

こんな話をすると「ワリのいい配信代行の仕事なくなっちゃうじゃん!」と言われるのですが、そもそも私は世の中にコンテンツを溢れさせることが仕事なので大歓迎です。

「これ、チャット欄祭りにしましょうよ」
という声で博物館初のプレミア公開が決まった浮世絵摺り。
実際にチャット欄には「識者」が集い大盛り上がりでした。

…というのは置いといて、むしろ「これ以上は自分たちの手に負えないから代行業者に頼もう!」という人々が増えるほど、相対的に配信代行の価値も上がるのではないでしょうか。
先述の通り、伴走しているクライアントさんからも案件難易度によっては別途発注をいただくことがあります。

世の中がちょっとクオリティの高い配信コンテンツで溢れたら楽しい。

5.まとめ

決して配信の最先端に立っているわけでもなく、teck geekでもない私が重要なミッションを沢山頂けていることは本当にありがたい限りです。

繰り返しにはなりますが「手段であり目的ではない」というスタンスで配信の知識や技術を身につけたこと、これがクライアントのニーズに合致しました。
そして「自走させるのが前提」で伴走できているのも、私が配信代行を本業にしていないからだと思います。
仮に配信代行が本業だったらもう少し「欲」が出ちゃう。人間だもの。

また「教える」という部分において、事務局として参画しているNPO法人SOMAでの教育的観点からの刺激も大いに役立っています。

様々なことが変わってしまったコロナ禍において、日常生活の中でタッチできるコンテンツの量・質が低下してしまったのは否めません。
(逆にこの環境下だからこそ魅力を発信できたコンテンツもあります)

自分の仕事が世の中のエンタメにひとつ価値を生み出す一助になっていれば何よりです。

ね。配信チームを育てる仕事、楽しそうでしょ?

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