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箱入り息子の恋

「箱入り息子の恋」を観た。

2013年公開の、今や大スターの星野源の初主演映画である。

35歳まで恋をしたことがなく、市役所に勤めて実家暮らし(お昼も家でお母さんが作ってくれたのを食べる!)、友達はペットのカエルだけという「箱入り息子」の天雫健太郎(星野源)と、過保護な親に育てられた盲目のお嬢様・今井奈穂子(夏帆)のお見合いから始まる初恋の物語。

ドラマ「逃げ恥」でも「プロの独身」役をやっていた星野源だけど、健太郎もとても不器用ゆえに人との接触を避けてきた男の子。映画を観ていて、心がぎゅっとなる、心が震えたところがあった。

ひとつは健太郎が自分がなぜ、人との接触を避けてきたか、を打ち明けること。シーンで言ったらお見合いのシーン(から一連)になるんだけど、あがり症で人とうまく話せない、目を見て話せない、そこから変な人と思われる、どんどん自信がなくなっていく、心を閉ざしていく・・・という気持ち。感情を出さずに、何を考えているのかわからない「つまらない」生活をしている健太郎。その健太郎にも、そうなる理由がある。健太郎のような人はたくさんたくさんいると思う。わたしもとても共感を覚えた。今は処世術というか、人と初対面でも話せるような「技術」を覚えたが、本当の本当は目を見て話すのは怖いのだ。本音を言えば、人と接するのは今でも怖い。でも、ある程度、外側はうまくできるようになったから、元々あったそんな弱い部分があることを忘れていた。健太郎の訥々と話す言葉は、そんなわたしも抱えている、「自分以外の世界と接する時の怯え」を素直に代弁してくれていた。

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もうひとつは、健太郎の事故のあと、一度は結ばれた二人が別れてしまったとき。奈穂子が白杖をつきながら(普段はお母さんに送ってもらっている)、一人で吉牛に行ったシーン。吉牛は健太郎と奈穂子の初デートの場所。奈穂子は二人の思い出の場所に一人で訪れたのだ。そして、あの時健太郎に教えてもらい、初めて食べた牛丼を頼む。牛丼を食べながら、次第に菜穂子の顔が歪んでいき、最後には号泣してしまう・・・。わたしもつられて号泣した。みんな一度は失恋をしたことあれば、この切なさ、わかると思う。奈穂子が吉牛に向かっていた時から、わたしには奈緒子の気持ちが痛いほどわかってしまった。好きな人に会いたい。けど、会えない。せめてあの人と行った思い出の場所に行こう、という気持ち。その場所に行ったら、思い出して切なくてもっと苦しくなることはわかってる。でも会えない代わりにその場所に・思い出に会いにいくしかないんだよね。あまりにも切なくて、一緒に胸が苦しくなってしまった。それを向かいの席に座って目の前で見ていた健太郎は奈緒子の気持ちが痛いほど伝わったと思う。そしてまだお互いに愛し合っていることも。

すごーくなんでもないストーリーといえば、なんでもないんだけど、ものすごく複雑に作られた人間ドラマでもないんだけど、「とっても素直に」二人の気持ちが伝わってくる作品だった。人とうまく接することができない不器用であるが故のつらさ、初めての恋に生きる楽しさを見つけるうれしさ、知らない世界を好きな人に教えてもらうよろこび、どんなにがんばっても恋がうまくいかない切なさ、ふたりでいるしあわせ・・・。とってもピュアに生きているよろこびが伝わってくるような映画だった。それは二人が箱入り息子と箱入り娘だったからかもしれない。

・・・夏帆がすごーくかわいかった❤︎ あとラストはうーん、ああいう濡場でなくてもよかったかなと思った。でも裸で庭に倒れてる星野源はカエルみたいでそういう効果もあるのかな・・とか。

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