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【PP】「MOMOIRO CLOVER Z」全曲レビュー(前編)

 さて、私事ではありますが、ここ半月ほどやることがてんこ盛りで、なかなか机に向かう時間が取れずにいたのですが、代わりに車であちこち飛び回ることになったおかげで、5/17発売のももクロちゃんのニューアルバムを聴き込む時間がけっこう取れまして。まさに怪我の功名状態ですね。

 約一週間、比較的じっくり聴くことができたので、今回はDAOKOさんのアルバムリリースの時と同じように、全曲レビューをやってみようかなと思います。

 なお、アルバム発売前の雑記はコチラ。

 結論から申しますと、鼻血が出そうになるほどの名盤で、二周くらいしてアルバムコンセプトの意味が分かってくると、もう涙無くしては聴けない耳にされてしまったので、ここはもう、無駄に張り切って前後編でお送りいたしたいと思います。いや仕事しろ。(してます!)

 あ、あと、あくまで私見でありますし、純粋に自分の感じたことをそのまま書きたかったので、他の方のレビューやインタビュー記事などはすべてシャットアウトしました。もしかしたらメンバーや関係者が違うことを言っているかもしれませんし、オフィシャルで語られていることをドヤ顔で語っているところもあるかもしれませんけど、そこはご愛敬ということで、読み流していただければ幸いです。

■今回のアルバム構成も面白い!

 さて、前作・前前作となる、3rd「AMARANTHUS」と4th「白金の夜明け」は二枚一組で対になった構成を取っておりましたけれども、今回の5thアルバムは、なんと逆に「アルバム一枚で二部構成」という構成。またトリッキーなことやったもんですね!相変わらず、アイドルのアルバムとは思えないほど深く練られた構成に唸ってしまいます。 

 今回のテーマは、事前の予想通り「SHOW」。映画、演劇、ミュージカル、音楽、ありとあらゆる要素を詰め込んで、13曲(+おまけ1曲)でエンターテインメントとは何か、彼女たちが今見せたいものはなんなのか、を表現しているように思います。それと同時に、ショーマン、エンターテイナーとしての「ももいろクローバーZ」とはどういうグループなのかを再定義する、ということがアルバム全体のコンセプトになっていると思いますね。

 全体的なストーリーラインは、イントロダクションとなる「ロードショー」に始まり、2曲目がプロローグ、3~6曲目が第一部本編。ももクロのアーティストコンセプトが”The Diamond Four(以下、TDF)”となるまでの歴史をたどります。

 7曲目「リバイバル」が繋いで第二部が始まり、8~11曲目は、よりいろいろなジャンルを溶け込ませ、「これからのももクロ」を表現しています。

 やがて、ショーは12曲目「天国のでたらめ」でこれからの未来を示唆し、幕を閉じます。本編ラストの13曲目「The Show」は、ショーが終わった後、エンターテイナーという役目を脱ぎ捨てた素の感情の表現、というイメージですかね。先行シングルを、アルバムナンバーが繋いでいくような構成になっています。

【アルバム構成】

 01「ロードショー」→イントロダクション
 02「The Diamond Four」→演者紹介

 ☆第一部(今までのももクロ)
 03「GODSPEED」
 04「あんた飛ばしすぎ」
 05「魂のたべもの」
 06「Re:Story」
 
 07「リバイバル」→第二部へのブリッジ

 ☆第二部(これからのTDF)
 08「華麗なる復讐」
 09「MORE WE DO!」
 10「レディ・メイ」
 11「Sweet Wanderer」

 12「天国のでたらめ」→エンドロール
 
 13「The Show」→エピローグ

 何がすごいって、アルバムコンセプトより先に制作されているはずの先行シングルやタイアップ曲も、自然な形でストーリーに全部組み込まれているところ。それとも、一年以上前から全体構成をすでに考えていたのかしら、、、。

 アルバムとしての構成・ストーリーはありつつ、各曲にももちろん構成やテーマ、ストーリーが含まれている「入れ子構造」であるわけで、よくもまあ13曲できっちり矛盾なくまとめあげたもんだなあ、と思います。"モノカキノフ"としても、とても勉強になります。

 さて、ここからようやく各楽曲のレビュー。記事前編では、アルバム前半、第一部までレビューしていこうかなと思います。

■01「ロードショー」

 アルバム1曲目を飾るアンセムソング。前奏から聞こえてくる構成音は、僕ら世代はにやりとしてしまうユーロビートのそれ。

 日本でユーロビートが一般化したのって、安室奈美恵さんの「TRY ME」がヒットしたのがきっかけだと思うんですけど、「TRY ME」のリリースは1995年。ちょうど、メンバー4人が生まれた頃の音楽なんですよね。約25年前に流行した音楽の要素を取り入れることで、現在の4人の"TDF”生誕を意味してるんじゃないでしょうか。

 前奏から本編Aメロに入ると、ユーロビート的音要素は残しつつも、拳を突き上げて歌うような骨太で力強いサウンドに変化していきます。これから何かが始まろうとしているぞ、という期待感を盛り上げてくれますね。用意はできているか?ついてこい!という強烈なメッセージがびしびしと伝わってきます。

 歌詞はまさに、今回のアルバムを作った動機、コンセプトについての説明のような内容です。皆さんはSHOWの一部、SHOWを見せるのはMCZ、ずっとMCZのターン、とは、この"SHOW”が従来型エンターテインメントの形態を踏襲していることを意味します。昨今の参加型・体験型のエンターテインメントではなく、彼女たちの言う「ショー」とは、エンターテイナーがオーディエンスに向けて提供するもの、という解釈である、ということですね。それが、以降、アルバムの楽曲に共通するコンセプトになっています。

 これまでのももクロ楽曲は、「ファンとライブで一体になって作り上げるもの」であり、彼女たちはライブという「参加型・体験型エンターテインメント」の旗手であったわけですが、この"SHOW"に関しては、4人が「魅せる(聴かせる)もの」「観てもらうもの」であって、是非ともそのショーをそのまま受け取って楽しんでいただきたい、という思いと覚悟が明確に語られているのです。ライブでコールと一体になることで完成していた従来曲とは一線を画し、今回のアルバムの曲は、音源の時点で「完成形」となっているのだ、ということでしょう。

 ただ、「演者と観客」というきっちりとした線を引きながらも、それは今までの関係性が溶け合ってできたものなのだ、という思いも垣間見えます。決して、これまでのファンをないがしろにするものではなく、4人の成長の集大成を見てほしい、という意図があるように思いますね。

 今回のアルバムのコンセプトは、今後の彼女たちの方向性においても非常に大きな意味を持っているのだな、ということが伝わってくる一曲です。

■02「The Diamond Four」

 さて、2曲目「The Diamond Four」は、第一部・第二部を通したオープニングにあたる部分だと思います。これからSHOWを見せてくれる4人の「エンターテイナー」”TDF”のご紹介。

 曲調は、ABBAとかEarth, Wind & Fire的な70~80年代のファンキーなポップをベースにしつつ、HIPHOPをフィーチャーしたアゲアゲ曲になっております。ジャクソン5もはいってんのかなー。タイトルだけ見た時は、こんなハッピーチューンになっていると思わなかったですねえ。

 PVも含め、曲のコンセプトは「マンマ・ミーア」みたいなジュークボックスミュージカルをイメージしてるのかな、と思いました。「マンマ・ミーア」と言えば、ブロードウェイでロングランされたミュージカルで、ABBAの曲で構成していて、映画化もされて、と、今回のアルバムの元ネタとしてはうってつけの作品かなとも思います。また、ロングランというのは、長く活動できるグループになりたい、という、4人のかねてからの目標に合致するイメージじゃないでしょうか。

 まあ、僕はミュージカルについてはあんまり知識がないので、もっと他の元ネタもいっぱい詰まっていそうです。わかる方がいらっしゃったら、こっそり教えてください。

 そして、歌詞もまた、遊び心がいっぱい。「模範"回答少女"はわかるの"かいと?"」「あなたのハート」「いただきまーす」とくれば、モノノフのみなさんニヤリですね。「ついてこい!」のフレーズも、高城さんのコメントからの引用でしょう。

■03「GODSPEED」

 アルバム前半第一部、「これまでのももクロ」のストーリー。GODSPEEDは、そのストーリーの起承転結の「起」にあたるポジションだと思います。

 ももクロ楽曲に「定番」があるとするなら、まさにその「ド定番」といってもいいストレートなアレンジ。今回、アルバム全楽曲中、唯一「ウリャオイ」がすっと乗っかるリズムの楽曲となっております。それはつまり、グループ結成後、アイドル戦国時代の中で活動していた、ベーシックなアイドル時代を表現しているように思います。

 前回記事で、期せずしてこれまでのアルバムについて振り返りをしたんですけど、前半第一部を構成する4曲は、これまでリリースしてきた4枚のアルバムとコンセプトがリンクしているように思います。過去のアルバムコンセプトを説明することで、これまでの歴史を間接的に振り返るようになっているんですね。これまで、いかにアルバムコンセプトが彼女たちの成長度合いに合わせて練り込まれてきたか、を端的に表していると思います。

 GODSPEEDは、アルバムでいうと1st「バトルアンドロマンス」とコンセプトが似ています。アイドルとして、真っすぐにみんなを応援しよう、という応援歌。元気のない人の背中を押してくれる音楽です。

 タイトルである「GODSPEED」は、一単語で「成功を祈る」といった意味があるそう。タイアップが駅伝とマラソン中継だったので、「GOD SPEED」と文節を分けたときの、「神速」の意とダブルミーニングになっているんでしょうが、同時にそれはファンに向けた応援歌でもあり、アイドルとしての成功を夢見てアイドル戦国時代を駆け抜けていた無印時代~メジャーデビュー以降、ブレイクに至るまでの4人を意味していると思います。

 エンターテイナーという存在は、活動していくうちに音楽性や方向性、指向性といったものがだんだん変化していきますから、「らしさ」というものを定義するのはとても難しいことですが、多くの人が「ももクロらしいな」と直感的に思うのはこの曲かな、とも思うんですよね。今回のアルバムで変容していく彼女たちの音楽性を披露する前に、これまでに培ってきたもの、原点のようなものを冒頭に入れておきたかったのかもしれません。

 歌詞は、一見、「キミ」という支えになる近しい存在との間の絆を描いた、(比較的ベタな)応援歌のように見えるんですけど、普通なら「家族」「恋人」「メンバー」あたりをイメージするはずの言葉の中に、どことなく「キミ」との距離を感じさせるフレーズがあったりします。心でつながってはいるけれど、少し遠い所にいるような。もちろん、いつも一緒にいる近い存在を感じるフレーズもあるわけですけど。

 となると、「キミ」は、誰か一人の人間をイメージしているわけじゃなくて、複数の人間の要素が詰まった存在なんじゃないのかな、という気がしますね。聴く側も、そして歌う側も、いろいろな「キミ」を想えるようになっているんでしょう。

 ももクロ黎明期、一緒に走っていたあの(青い)人も、「キミ」の中に含まれていることでしょう。

■04「あんた飛ばしすぎ」

 今回のアルバム曲中、随一のライブ向け楽曲。こんなの「楽しい」が約束されているじゃないですか。

 にしても、まさかGARLICBOYSをカバーするとは、、、、

 もう、曲についてはパンク!としか言いようがないのでレビューもくそもあったもんではないのですけれども、ライブではみんなにペンラ振らせるつもりなのでしょうかね。

 いや、モッシュするよね?(※禁止です)
 なんなら、サーフするよね?(※一発出禁です)

 フェスで聴こう!フェスで!w

 アルバム構成的には、ももクロストーリーの「承」にあたる曲で、おそらく、2011年~2014年ころまでの上昇気流に乗った時代を表しているのかなと思います。アルバムでいうと、2nd「5TH DIMENSION」ですね。5次元までぶっ飛んでしまおうとしていた頃ですから、そりゃあもう飛ばしすぎでしたもんね。

 ももクロ仕様にリメイクが加えられた歌詞では、4人のメンバーがいかに飛ばしすぎているかが語られておりますけども、メンバーというか、周囲のオトナたちがそこそこ飛ばしすぎなんだよね、と改めて思いしらされる曲でもあります。

■05「魂のたべもの」

 ”あん飛ば”のパンキッシュなサウンドから、ここで一気に短調へと暗転。ももクロストーリー・起承転結の「転」の部分です。タイトルだけ見た時は、玉井さんがまた「腹減った」とか連呼する曲かと思ったんですけど、全然そうじゃなかった。

 ももクロストーリーとしてはメンバー4人の苦悩の日々を歌った曲であり、紅白落選やメンバー脱退といった、グループとしての挫折の日々を表現していると思います。アルバムでいうと、人の死と復活をテーマとした3rd「AMARANTHUS」に相当するでしょう。

 曲調は、オーケストラやコーラスが後ろを支える重厚でダークなアレンジ。既存曲でオーケストラやコーラスが入る曲ですと「NEO STARGATE」や「猛烈宇宙交響曲」がありますけども、国立競技場大会の時の東響コーラスさんのカルミナ・ブラーナの音圧がほんとにすごいのに感動したのを今でも覚えていて、もう一回あの規模で聴きたいな、と思ったりもしていたんですけど、フルオーケストラ&コーラス隊を従えたこの曲もいつかライブで見てみたいなあと思いましたねえ。新国立で聴けるといいなあ。

 歌詞も、渇いて飢えていく心が、満たしてくれる「何か」を探す、苦渋に満ちた言葉が並びます。ライブやイベントでは我々に変わらない笑顔を見せ続けていたメンバーですが、その裏にはやはり悩みや涙の日々があったんだろうなあ、と胸が痛くなります。グループ解散も考えた。笑顔を失った。それはまさに、エンターテイナーとしての「死」。その過程で抱えた悩みや葛藤。そういったものが痛いほど伝わってくる曲ですね。

 それにしても、メンバー4人ともぐっと色気のある声が出るようになったなあ、シンガーとしても成長したんだなあ、というのが一番わかるのはこの曲かもしれないですね。特に、オーラスはじめのれにちゃんのソロは今まで聴いたことないほどしっとりした艶と伸びがあって、鳥肌が立ちます。

 ももクロの楽曲って、サビのユニゾンがいつも同じ声に聞こえるんですよね。6人から5人になった時も、5人から4人になった時も、構成していた声が一つ減っているはずなのに、ユニゾンの印象があまり変わらない。声のボリューム調整だけの問題じゃなく、質も変わっていないと思うんです。いつも誰かが抜けるたびに他のメンバーが急速にレベルアップして、空いた穴を埋めてしまうんだと思いますね。

 5人体制になってしばらくは、元々ポテンシャルの高い有安さんに引っ張られる形でリーダーがぐいぐいと歌唱力を上げていきましたけども、今回特筆すべきはれにちゃんな気がします。これまでのウィスパーボイスは、癒し系という魅力がある反面、あまり腹式呼吸ができていなかったせいでもありましたし、ライブではリズムが不安定になることも多かったんですけど、ミュージカル「ドゥユワナダンス?」を経験した結果か、たった一年で圧倒的にパフォーマンスが上がりましたね。まるで別人じゃないか、と言いたくなるほど。

 あーりんもラップのフロウが出来上がってきて個性に磨きがかかりましたし、玉井さんも声の大人っぽさや安定感が出てきましたけど、やはりれにちゃんの成長速度が今回の楽曲レベルの引き上げに大きく寄与したんじゃないかな、と思います。

■06「Re:Story」

 さて、第一部のラストを飾るのはRe:Story。まるで、曲自体が一つの青春ロードムービーのようで、エンディングにふさわしい曲になっております。PVで4人の子供たちが袖ヶ浦海浜公園の前の道を走っているのを見て、千葉県在住者としてはちょっと嬉しくなりましたね。

 過去のアルバムでいうと、色あせることのない生の喜びを表現した「白金の夜明け」に相当。苦悩を乗り越え、穏やかな日々に至った「今のメンバー4人」を表していると思います。

 曲は、ミディアムテンポのゆるりとしたポップが基本なんですけど、王道ポップと見せかけておいて、Bメロのバッキングギターの音とかサビの転拍子とか、「ウリャオイ」「アイドル楽曲」からの音楽的脱却を図っている感じがありますね。穏やかではありながら、GODSPEEDのアレンジの頃から、少し成長したんだぞ、というアピールをしているのかもしれません。
 既存曲だと「HANABI」もかなりプログレッシブな転拍子を使っていますけど、あそこまでじゃないにしろ、音楽的アクセントがぴりりとスパイスを効かせたような楽曲だなあ、と思いました。

 きっとね、ファンの方の中にはライブでいっぱいウリャオイしたい、そういう楽曲がいいんだ、という人も多いと思うんですけど、ウリャオイが乗るってことは、音楽的には4/4ってことですから、それ一本鎗だとアレンジの幅が狭まって楽曲としてはつまらなくなってしまう。ウリャオイからの脱却も、ひとつの成長の形として今後受け取っていく必要もあるのだろうな、と思います。

 歌詞の中に「Re:Story Of My Life」というフレーズが出てきますけども、メールの返信の時なんかにつく「Re:」というのは、reply(返信)とかreturn(戻る)の接頭辞「re-」とは関係なくて、ラテン語の「res」という語が語源だそうで、意味は「~に関して」。僕は、携帯メールの件名が「Re:Re:Re:Re:Re:Re:」で埋め尽くされた世代の人間なので、なんの頭文字なんだこれは、と調べましたよね、当時。

 Re:Story Of My Life、とは、「これまでの私の人生に関して」といった意味合いでしょうかね。僕も英語がネイティブなわけではないのでちょっと違うかもしれないんですけど、「story of my life」って、「俺の人生ってこんな感じなんだよね」みたいな、若干の諦観や皮肉、みたいなニュアンスがあるらしいんですよ。人生いろいろあるけどさあ、みたいな。One Directionの「Story of my life」は、そんな解釈をされていたんじゃなかったかな。

 曲中の「My Life」とは、ももクロのメンバーとしてこれまで生きてきた4人の、人としての人生を振り返ったもの。とてつもない伝説を残し続けてきた今までの軌跡を振り返って、でも同時に、無理をして悲鳴を上げた自分たちから少し力を抜いて、「光と音を放ち続けている街に背を向け」、今、自分たちのスタイルでできることをやりながらまた先に進んでいこう、という意味になっています。たぶん。

 ラストで、これが「The Story Of My Life」になるところがまた趣深いですね。これが、ただひとつの自分の人生そのものである、という後悔無き誇り。紆余曲折あったでしょうけど、4人の心が今そういうところに落ち着いているなら、いちモノノフとしてもとても嬉しいことです。

 今回のアルバム、先行シングルとして「Re:Story」がリリースされて数ヵ月後、近い雰囲気の「Sweet Wanderer」がやっぱり先行で発表されたときに、なんで一つのアルバムで「被り曲」を入れたのかな?と不思議に思ったのですけども、こうしてみると、この2曲は3rd「AMARANTHUS」と4th「白金の夜明け」の最終曲と同じ役割を持っているのかもしれないですね。
 AMARANTHUSの最終曲は「HAPPY Re:BIRTHDAY」で、死からの復活を意味していました。白金の夜明けの終わりは、生の中で死に向かっていく一度きりの人生を語る「桃色空」でした。今回は、AMARANTHUS・白金が表現していた「人間の一生」を、「ももいろクローバーZ」というグループに置き換え、AMARANTHUS=第一部、白金の夜明け=第二部、という対比にしてみても、ストーリー的にしっくりハマります。

 これは、前回、3rd、4thの二枚のフルアルバムで表現したことを、一枚のアルバムに凝縮しようと試みた結果なんじゃないかな、と思います。より密度を濃く、純化させること。まるで、真っ黒な炭素をぎゅっと固めることで輝きを得る、ダイヤモンドのように。

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 ということで、アルバム前半、第一部・"TDF"誕生の軌跡にあたる部分までをレビューさせていただきました。第一部で表現されたものは、4人が辿ってきた道とTDFの誕生、だと思います。そう考えると、運営も含めた”チームTDF”というネーミングが、どれほど固い絆を表すものだろうと、いい歳こいたおじさんは涙が止まらなくなって困ります。運転中に前が見えなくなったらどうしてくれるのかと。

 今回の記事を書きながら、ああ、この歌詞はこういうことか、この構成にはこういう意味があるのか、といった新たな気づきもありまして、今回のアルバムタイトルが「MOMOIRO CLOVER Z」であることにも、そういうことなのかあ、と非常に納得できた気がします。いや自分一人で勝手に納得してるだけなんですけども。

 制作側がどういう意図で今回のアルバムを作りあげたのか、その本当のところはわからないわけでしてね。もしかしたら、壮絶なる勘違い深読みと無理矢理なこじつけに過ぎないかもしれません。そうだったらごめんなさい。


 さて、07「リバイバル」以降、後半は「エンターテイナー」としてさらに純化していくダイヤモンドな4人の本領発揮となる「SHOW」、そしてこれからのももクロの未来が示唆されますけども、書きたいこと多すぎて一記事ではとてもまとめ切れそうにないので、今日のところはここまで。

続きはまた後編にて。

↑↑後編はこちらから。↑↑

 ストーリーinストーリーという入れ子構造の小説は僕も書いたことがありまして、結構大変だったなあ、という記憶があります。アイドルに限らず、アルバムコンセプトにこれだけ凝ってるアーティスト、なかなかいないんじゃないかなあ。

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp