語る、聴く、観察する。三角形の中に生まれるものと、今夜のごはんどうするか問題

先週、Nサロン『家庭料理の新デザイン』のワークショップがあった。この数ヶ月、かなり濃密な打ち合わせをしてプログラムを作り上げた。このワークショップを組み立ててくれた臼井隆志さんの、ワークショップの経緯がnoteがアップされている。(ボツになった案も公開されています)

家庭料理の問診をする

ワークショップのタイトルは『家庭料理の問診』。三人一組で自分の食を相手に語る、というだけの、極めてシンプルな内容だ。これまで主婦たちが行っていた井戸端会議にカウンセラー的な問診を加えた、ハイブリッドな「イドバタカイギ」といってもいい。

臼井さんのnoteにシナリオまで公開されているので、私はこのワークショップで自分がやりたかったことを書いてみたい。(ちょっと長めです)

「私の課題はどう解決したらいいんですか?」

ワークショップは和やかに、かなり良い温度感のうちに終わった。で、質問タイムにこんな質問が出た。

「自分の食の課題がかなりたくさん見つかったのですが、これをどう解決していけばいいんですか?」

この質問は私の心の中ではすでに何度も繰り返し問うてきたものだったけれど、やはり参加者からズバリと指摘されると、刺さる。今回のワークショップは、その答えを見つけるものではなかったからだ。
解決法を探しに来ている人に直接的な解決法を教えない。それが、このワークショップの弱点でもあり、同時に挑戦でもあった。

もちろんその場でも精一杯答えたつもりだが、うまく喋り足りなかったことがあったので、多少補完しながらこの問いに対する答えを書いてみる。

情報の海のどこを泳ぐか

家庭料理というプライベートな分野で、このように客観的に自分を見るという機会はあまりない。課題が見つかるということ自体、普段の生活では、なかなかできないことであり、それがこのワークショップの効用のひとつだ。

課題解決のための実用情報というのは、実は世の中にあふれている。

納得できる答えがその中からうまく見つからないのは、情報がたくさんありすぎるから、つまらない情報しかないからではなく、自分自身が何を求めているのかが見えていないから

「料理に割ける時間が足りない」という一言にすら、実はさまざまな背景がある。仕事で夜遅い、他にやりたいことがある、料理の腕がなく時間がかかる…もっといえば、時間がない悩みはフェイクかもしれず、その奥底に別の本当の悩みがあるケースもある。

困った状況があるときに(あるいは起こっていなくてもよりパフォーマンスをあげたいときに)最も大切なのは、適切な「問い」を見つけ出すことに尽きる。問題解決力は、課題発見力にかかっているというのは、ビジネスの現場では常識なんじゃないかなと思うけれど、これが家事にはなかなか取り入れられない。(あまり家庭にビジネスの感覚を持ち込みたくないという無意識が働くのかもしれない)

ふわっと「みんなの問題」について考えていても、答えはみつからない。自分が解決すべき悩みだと思えるからこそ実感を持てるし、選んだ方法が本当に大事かどうかの判断も直感的にできる。つまりは効率的なのだ。

①自分の起点を認識し、②しっかりと肯定した上で(そうでないと解決のモチベーションが上がらない)③課題を立てること、つまり、この広い海の中で自分が泳ぐべき場所を探すこと。それが遠いようでいて実は最も問題解決への近道になると考えて、このワークショップを設計した。

具体的な解決方法を考えるための場づくり

ここまで書いてきたところで、今回の私のゼミはもしかして、自分の食を何とかしたい人ではなく、人の食をなんとかしたい人向けなのかもしれないなあ、とふと思った。つまり現代的な食の課題をどうするかという大きな話。個人にこれを落としていくときは、もっと細やかな詰めが必要になる。

食事は日々のことで、待ったはない。毎日残業で疲れて家に帰ったとき、あるいは子育てに追われているとき、もうギリギリの中で今日の悩みがあったら、すぐ解決したいと思うのが人の素直な心だろう。

私はふだんはスープのレシピや料理イベントなどを通して、食を簡単に効率的にするための方法を発信している。でも、スープで何もかも解決はできないということも承知している。逆に私のスープを必要としている人にまだまだ届いていない、そう思うこともある。

だから、広い視点で食を見通せる場を作りたいし、みんなが肯定される場を多くの人とシェアしていきたかった。それぞれの唯一でありリアルな食を聴き、肯定することからスタートする。その場に問題解決のプロがいれば必要な情報にすぐアクセスできる。
そういうやりとりが許される場に、新しい解決方法が生まれると直感した(直感でしかない)。

つまり、私の望みをひとことで言うなら、みんなが誰かとごはんの話を気軽にできる場や空気を作りたい。ということだ。そんな、わけのわからない私の希望を、臼井さんというワークショップの達人が形にしてくださった。本当に感謝している。
そして恐ろしく整理が上手で、なおかつそれとはまったく別の能力でこのワークショップ作りのキーパーソンとなった平野さんにもこの場を借りてお礼を言います(平野くん話はまたどこかで書くつもり)。

さて、このワークショップは新しいカテイカなどの活動でもぜひやってみたいので、もし参加してみたいという方がいたら連絡ください。Nサロンで一度受けた方も、何度でも。ワークショップでも言ったけれど繰り返し語ることが必要だし、聴き手によってまた違う自分が見えてくるかもしれません。ごはんの話をいっしょにしましょう!

+++

さて、ここからはNサロンの受講生へ。最終回はみんなの悩みを少しでも解決する超実用、実際、実存的な調理実習です。1回目2回目に参加できなかった人もぜひどうぞ。場所は千駄木。食品購入の都合上、申し込み制になります。追ってFBでお知らせしますね。(家庭料理の新デザインFBグループも作ります!)

日程:4月4日(木)19時半~21時半
   4月9日(火)19時半~21時半

最後の写真は、今回ゼミを支えてくれているnote平野さん(右)と、お世話になった臼井さん(左)。私も含め三人とも紺ジャケで、ユニフォーム化しました。





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お礼にあったかいスープをどうぞ。
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有賀 薫

新しいカテイカ

「新しいカテイカ」は、もっと生きやすい家事へシフトする家庭運営プロジェクト。家事を考えるコラムやイベントレポートを発信します。 https://note.mu/atarashiikateika
3つのマガジンに含まれています

コメント3件

私はワークショップで実はちょっとモヤッてしまったのですが、あそこで大事なのは「(一般的には良いとされてないかもしれないけど)②しっかりと肯定する、ことだった気がします。(否定しないというレベルではなくて)
別機会なんですが、翌日に子育てのペアトレに参加して自分の罪悪感のもとを丁寧に肯定してもらったことで、これでいいんだと思えたし、あーきっと有賀さんのやりたいことはこういうことだったんだ、と思いました。
近々noteに書きます!
ご感想ありがとうございます。肯定が重要、まさにその通りです。ワークショップを設計した臼井さんはそこのところを強調されていたのですが、私のアナウンスでそこを強調できなかったことは、今回の反省点のひとつでした。
無意識→意識に出す→肯定する、この順ですが、今回Nサロンゼミの受講生は、普段私のワークショップに来る方よりもさまざまな方がいます。男性も多いし、料理をあまりやらない方もいる。料理に対する問題意識がまちまちなので、無意識→意識に出す、というところについ重点を置いてしまいました。藍さんのようにすでに問題意識はお持ちで、その先の肯定が必要な方にはまた別のやり方があったかもしれません。
こうした感想が参加者の方から出てきたことが、ありがたいです。FBにグループを作っていただく予定なので、そこでまたお話を聞くことができるかもしれません。
臼井さんのnoteも読みました。すみません、私が冒頭いなかったのも影響していたみたいです。。理解不足でした。

いろんな受講生がいる中で、いろいろと考えてくださり、ありがとうございます! このゼミは、それぞれの講座開催日の間にも、考えを深めるキッカケをくれています。
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