地方自治とは:3

板子一枚下は地獄

 前回雨をおしてビラ配りをしたものの回り切れなかった所を歩く。風もなく絶好のお出かけ日和なのだが爺連れの野暮な仕事。
小さな入り江で小舟を出して素潜り漁をする光景が見えた。

大型の船を所有している漁師は少ない。少しでも獲れた魚の付加価値を高める為の獲れた日のその日にセリ市を開き、その晩のうちに出荷すると言うスタイルが70年近く続いていたが…

 やんごとなき事情で途絶えてしまった。

 その日に獲った魚は一度冷蔵保存されて翌朝の市を通して出荷。まあ平均的なやり方ではあるのだが、今までの得意先は仕入れ先の変更を選ぶしかなかった。
 生業として、漁師を選んだものの突然の路線変更に戸惑いと失望で辞めることを選んだ元漁師さんに出会った。

「普通の朝市では家族養えない」
丁度、自家用だと言うアスパラガスの土寄せを耕耘機でされていた。

 板子一枚、命がけで守ってきた伝統が効率化と言う名目でオーソドックスなかたちに変わり品数が徐々に減って行くのだろうか。

 空き家が目立つのはその件とは無関係かも知れないが、まだ十分暮らせる大きな住宅のポストに詰め込まれた電力会社のお知らせ通知が侘しい。

 日本の一次産業はどうしてこうも自分達の首を絞めることをこうも繰り返すのだろうか。
【食】の一端、それも自分達のエリアに最も近い沿岸漁業を守らなくてどうする。

 魚は勝手に台所にやって来ない。

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