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ジェネシス:その深遠なる世界、私の基本

からふねです。
noteで調子を掴むために駄文をどんどん書いちゃいます。お暇ならお付き合いの程を。

ロックやポップスがお好きな皆さんの中には、(今どきはだいぶ減っているでしょうけど)アメリカやイギリスのバンドやグループ、アーティストが好きな方もいらっしゃると思います。
好きになったきっかけって、誰の曲でしたか?

私がいわゆる「洋楽」に目覚めたのは中学校三年、15歳の頃でした。ただ高校受験があったため勉強に追われ、本格的に聴くようになったのは翌年の高校一年からでした。
そのきっかけとなったのが、今回紹介するジェネシス(Genesis)というイングランドのロックバンドです。ジャンルとしては「プログレッシヴ・ロック」に属するバンドになるでしょうか。
私のちょっとした思い出も混ぜながら書いていきましょう。

1.第1期:ブロードウェイで羊は横になっている?

ジェネシスは1967年、イングランドのパブリックスクールの同窓生だったメンバーで結成されました。
レコードデビューしてからメンバーチェンジが何度かありまして、第1期の主要メンバーとしてよく知られているのは以下の五人です。

ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel) … ヴォーカル
トニー・バンクス(Tony Banks) … キーボード
スティーヴ・ハケット(Steve Hackett) … ギター
マイク・ラザフォード(Mike Rutherford) … ベース
フィル・コリンズ(Phil Collins) … ドラム


(写真左からトニー・バンクス、マイク・ラザフォード、ピーター・ガブリエル、スティーヴ・ハケット、フィル・コリンズ)

第1期はフロントマンとしてピーターを前面に押し出したステージングが目立ち、音楽性も歌詞も非常に複雑で難解な世界観を打ち出したものでした。
どんな感じだったのかというと……YouTubeにその頃のアーカイヴがたくさん残っております。
これは1973年に行われたライヴ映像。演奏されているのは4枚目のアルバム"Foxtrot"所収の"Watcher of the Skies"という曲です。

面妖なメイクをしているのがピーターです。何かしらの意味があったのでしょうけど、今となっては分かりません……
ただ非常に演奏はテクニカルで安定感があり、トニーの弾く「メロトロン」と呼ばれる鍵盤楽器の独特の音色が印象的でした。
こんな中でも"I Know What I Like"といったヒット曲も生まれました。この曲が収録されている5枚目のアルバム、タイトルが凄いです。"Selling England By The Pound"(イングランドを量り売り)ですよ? 当時のイングランド労働党のスローガンから取られたらしいですが。

ピーターは1975年、プライベートな問題を理由にジェネシスを脱退するのですが、在籍時最後のアルバムが"The lamb  lies down on Broadway"というものでした。何と2枚組のロックオペラともいうべき長大な作品。タイトルからしてよく分からんでしょ? 「ブロードウェイで羊が横たわる」?? 英和辞典片手に歌詞の和訳に挑戦してみましたが敢えなく撃沈しました。

その後ピーターはソロに転向し、孤高の音楽家になっていきます。ピーターのソロワークについてはまた別の機会に語りましょう。

2.第2期:残光

ピーターが抜けて4人になったジェネシスは、元々コーラスを担当していたフィルをメインヴォーカルに据え、活動を継続します。とはいえ、ライヴでドラムを叩きながらステージ前面に出て歌うというわけにもいかなかったようで、サポートドラマーを呼んでステージをこなしていた模様です。
この頃から徐々にバンド内の主導権をフィルが握っていくことになり、サウンドもよりドラムを強調した力強いものへと変化していきます。
この時期は凄く短くて、アルバムも"A Trick of the Tail"と"Wind and Wuthering"の2枚だけです。
ただ最近聴き返してみたんですが、結構いい曲が多くて侮れないんですよね。
まずはアルバム"A Trick of the Tail"のラストを飾る"Los Endos"。歌詞のない、インストゥルメンタルですね。ライヴでも最後の曲として演奏されることが多いです。

次は"Wind and Wuthering"から"Afterglow"。これまたライヴの終盤に流れる定番曲。タイトルからつい「夕暮れ」を連想してしまって、何となく寂しくなる曲です。

1977年にスティーヴが脱退し、ジェネシスはフィル・マイク・トニーの3人になってしまうのですが、彼らが世界的な知名度を得ていくのは、実はここからなんです。
因みにスティーヴはソロギタリストに転向しつつ、様々なバンドを結成もしました。
有名なのは、やはり同じプログレッシヴ・ロックバンドのイエス(Yes)のギタリストであるスティーヴ・ハウ(Steve Howe)と結成した"GTR"というバンドでしょうか。アルバム1枚で解散しちゃったけど。

3.第3期:目に見えない手

スティーヴが抜けてギタリスト不在になったジェネシス。ベースのマイクがギターも兼任することになりました。そして一層フィルの存在感が反映される音楽性へと変貌していくのです。
因みにライヴではどうしたのかというと、サポート・ベースとしてダリル・スチュアーマー(Daryl Stuermer)という凄腕プレイヤーを招き入れました。
この時期と前後して、フィルはソロ活動を開始します。元々彼のバックボーンだったソウル・ミュージックやリズム&ブルースへの敬愛を色濃く打ち出したポップな作品群になるわけですが、その敬愛を徐々にジェネシスにも反映させていき、唯一無二のロックサウンドへと変貌していくのです。
私が一番聴いていたのは正にこの時期で思い入れも強いので、くどくど書きますね。古くからのファンの中にはこの時期を「ジェネシスとして認めない」と公言する人もいますが、気にしないでいきます。

9作目のアルバム"...And then there were three..."は、4人時代の力強いリズムは影を潜め、寓話のような歌詞と音世界が目立ちます。少しだけピーター在籍時に戻った感じ? それでも"Follow you, Follow me"という佳曲が最後に収録され、ポップな要素も見られます。

10作目のアルバム"Duke"。前作の色を継承しつつ、フィルのドラムは再び力強さを取り戻しました。ここでまた、ライヴ終盤の定番曲"Turn It On Again"が生まれます。ポップなんですが、Aメロが4/4じゃない変拍子だし、歌詞をよく聴くとちょっと気持ち悪かったりもします。

11作目の"Abacab"。大胆にポップに振り切り、何とホーン・セクションまで導入した曲もあって、リリース当時は賛否両論分かれたと聞きます。ここではタイトルトラック"Abacab"を選びました。レコード収録ヴァージョンはイマイチなんですが、ライヴではめちゃかっこよくなります。フィルとサポート・ドラマーのチェスター・トンプソン(Chester Thompson)との「ツイン・ドラム」がまたかっこいい!
このチェスターと、前述したダリル・スチュアーマーはフィルのソロ活動でもお馴染みのメンバーです。

12作目にして自らの名を銘打った"Genesis"。
このアルバムは、(次に紹介するアルバムに次いで)名曲が多いので3つばかり紹介しましょうか。
まずは冒頭を飾る"Mama"。この世に生まれてこれなかった子供が母親に向かって「どうして僕に気づいてくれないの?」と叫ぶ歌でして。徐々に激しくなっていくリズムと、フィルの叫びが、非常に狂っております。顔の下から懐中電灯照らして「ハハッ! ハーッ!」ってよくやったなぁ……

次は"That'a All"。うって変わって、とてもシンプル。どこかビートルズを連想しちゃいますよね。

3曲目……2部構成の大作"Home By The Sea"と迷ったんですが、ここは敢えてラストを飾る"It's Gonna Get Better"を選びました。冒頭と終盤に流れる、まるでループペダルで繰り返すようなトニーのシンセサイザーのリフレインが余韻として印象的に残ります。

そして13作目の"Invisible Touch"。私が人生の中で一番聴いているアルバムです。数えてはないですが多分数千回は軽く超えているかと……
フィルがメインになってから進めてきたポップ路線と、元々のプログレッシヴ・ロックとが高いレベルで融合した、名盤中の名盤だと思っています。
本作からも3曲選びます。
まずはタイトル曲"Invisible Touch"。フィル・マイク・トニーの3人がとてもリラックスした様子でじゃれ合うMVが印象的でした。彼らが唯一全米No.1を獲得した曲でもあります。

次は"Land Of Confusion"。当時のアメリカやヨーロッパ、中東を中心とした世界情勢を憂いながら「希望を捨てずに前に進もう!」とうたった歌です。なのに……MVがこんなんです。

最後は"Domino"。このアルバムは8曲で50分にも満たない、非常にコンパクトにまとまった作品なんですが、その中でこうした重厚な2部編成の曲を入れてくるのはさすが。
これは彼らがイングランドのウェンブリースタジアム(現在のものが建てられる前にあった方です)で1987年に行われたライヴ映像からで、ご覧の通り超満員でしたから正に栄光を極めたといった感じです。日本なら国立競技場でL'Arc-en-Cielがライヴしたようなもんでしょうね。
この年、ジェネシスは来日しまして、私は友達と大阪城ホールで彼らのライヴを見届けました。生まれて初めてチケットを買ったライヴ・コンサートでした。当時の日本の消防法による規制によって、この映像ほどの巨大セットにはならなかったんですけどね……

14作目の"We Can't Dance"。ポップ路線から少しプログレッシヴへの揺り戻しを感じました。いい曲は多いのですが、正直アルバムとしてはだらだら長くて中だるみを感じてしまいました。果たして前作ほどの大ヒットにはならなかったんですよね。
ここからは2曲。
ファーストシングルである"No Son Of Mine"。「お前は俺の息子じゃない」という悲しすぎるタイトル。この曲をはじめとして、全般的に悲しく憂鬱な歌詞内容が多く、多分それがセールスにも響いたのかな……と今にして思ったり。

ラストは"Fading Lights"。「遠く遠く薄れていく光、それは我々みんなを取り残していき、やがて変わりゆく世界の中で消えていく。それこそが我々の人生だ。よく覚えておけ」と、静かに諭す曲です。

1996年、フィルはジェネシスからの脱退を表明します。理由ははっきりしませんが、ソロ活動に専念したかったのかなぁ……と。
フィルのソロワークについてもまた別の機会に語るとして、とうとうマイクとトニーの2人になってしまったジェネシス。さすがに解散か? と思われたのですが……

4.第4期:難破、そしてローマ

1997年、ジェネシスは復活します。新たなヴォーカリスト:レイ・ウィルソン(Ray Willson)を招き入れ、"Calling All Stations"というアルバムを出しました。
このアルバム、母国イングランドはさておき、アメリカでは悲しいぐらいに話題になりませんでした。レイは本作1枚であっさり脱退し、1998年からバンドは再び活動休止に。
リリース当時ほぼ聴いていなかったのですが、今聴き返すと悪いアルバムじゃなかったんですよね。
たとえばリードトラックである"Congo"。歌詞自体どこかぼかしてますけど、当時アフリカの中部で起こっていた第一次コンゴ戦争のことを歌っていると思います。フィルがいた頃と違って非常に重いサウンドです。レイの歌声は、ちょっとだけピーターを思い出すかな。

そして"Shipwrecked"。「難破船」という意味ですね。明るさはないですが、トニーの奏でるリフレインがとても印象的で……

8年後の2006年、フィルのジェネシス復帰が発表されました。アルバム制作? と思われたのですが、まずはヨーロッパツアーが開始され、久しぶりにフィル・マイク・トニーの3人が揃いました。やっぱりこうじゃなくっちゃ! またアルバムが出来れば来日も……! と当時は思ったものでした。
下の映像は2007年にローマでのライヴから"Firth of Fifth"からの"I Know What I Like"へのメドレーです。古参のファンのために、こういった古い曲のメドレーを彼らはよくやるんですよね。
このライヴの模様は、映像作品にもライヴアルバムとしても残っております。

2008年、フィルはジェネシスをはじめとした音楽の表舞台からの引退を表明。理由について直後には明らかにしませんでしたが、翌年一部報道で「脊髄の手術をした影響で手の動きに支障が出ているため、ドラムが叩けなくなった」と判明。その後、何だかんだ色々あった末に引退を撤回しソロ活動を再開していますが、フィルがドラムを叩くことはなく……
そんな訳で、ジェネシスは現在まで「解散宣言のない活動休止状態」が続いています。

5.今後:再結成?

ここ数年、「再結成の可能性を排除しない」趣旨の発言が3人からよくなされています。

無論、「息子にドラムを叩いて欲しい」というのはフィルの希望を込めたジョークなんでしょうけど。
ライヴでの共演も増えてきています。フィルがソロツアー中に、サプライズでマイクと"Follow you, Follow me"を演奏したとか。

ドラムを叩くフィルがもう見られないのは寂しいのですが、それでもジェネシスの3人を可能であればもう一度観たい! とはずっと思っています。ジェネシスがいなければ私は洋楽を聴くことも恐らくなかったわけですから。出来れば京セラドーム大阪あたりで来日公演してくれると号泣するんですけどね……

6.おわりに

いかがでしたか? すんごく長くなってしまいましたが、ジェネシスという素晴らしいバンドの魅力が少しでも伝わったのなら嬉しいです。
Apple MusicやSpotifyに、既に音源はたくさんあります。興味をもった方は、気軽に彼らの音世界に触れてみてはいかがでしょうか。

補足:トニーとマイクもソロ活動してまんねんで

そうそう! 書いていなかったですが、トニー・バンクスとマイク・ラザフォードのソロ活動も紹介しておきます。

といってもトニーはそんなに派手な活動はしていません。インストゥルメンタルが中心で、映画のサウンドトラックを製作したりといった感じです。
下の動画はトニーの1stソロアルバム"A Curious Feeling"のタイトルトラックです。歌ものですが、歌っているのはトニーではありません(そのはず)。

1989年に自身の名字を冠したプロジェクト"BANKSTATEMENT"を立ち上げましたが、これもアルバム1枚で終わっちゃいましたねぇ。

翻ってマイク・ラザフォードのソロといえば……ソロ名義も2枚アルバム出してはいるんですけど、やはり"Mike + The Mechanics"(マイク・アンド・ザ・メカニックス)です。

まずは"All I Need is a Miracle"。ポップですねぇ。トニーの"BANKSTATEMENT"もそうですけど、マイクもまた元々ポップな資質を持っていたんですよね。第3期のジェネシスがああした変貌を遂げたのは、きっと必然だったんでしょう。

そして忘れちゃならないのがこの曲、"The Living Years"。
父の生前に対立を解消できなかった男の後悔の念が、当時在籍していたポール・キャラック(Paul Carrack)の美声で切々と歌われる名曲です。静かに刻まれるリズムギターのリフが印象的。
日本でも島田歌穂さんがカヴァーしました。「姉さん、事件です!」でお馴染みTBS系のテレビドラマ「HOTEL」の主題歌でもあったので、ご存知の方もおられるのでは?

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