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オービック:超高収益企業。キーエンスとの類似と相違

こんにちは、からKINGです。
皆さんはキーエンスはご存じですよね。
超高収益、BtoB、高収入、などなど業界に縁の無い人でも誰でも聞いたことがある日本が誇る超優良企業です。

ではオービックはどうでしょうか?
TVCMを見はやってますが、実態はあまり知られていないのではないでしょうか。
ちなみに勘定奉行のOBCはオービックの関連会社ですが同じ会社ではありません。

キーエンスとオービックには意外なほど共通点が多く、高収益企業の共通点はあるのか、探ってみたいと思います。

■業績指標に見る各社の比較として、
キーエンス、オービック、同じくIT業界の比較として富士通を、高収益企業の代名詞任天堂を並べてみます。

各社 2021年3月期決算

キーエンスもオービックも、業績指標が驚くほど似たような構造となっています。
まず売上原価(直接仕入・原価)が極端に低く脅威の粗利率80%超え。
それぞれ高収入で知られる人件費や、マーケティング費用を支払った後でも残る営業利益は50%強。
ほぼ無借金のため営業外費用も少なく経常利益は50%強。
売上規模は違うので単純比較はできませんが、会社の収益構造がここまで似ているのは、事業運営も似ているのでは?と想像してしまいます。

※ちなみに任天堂は無借金で負債は5723億円に対して現金及び預金が1.1兆円。総資産2.4兆円のうち約半分が現金というバケモノ企業です。

■オービックの事業について、
オービックの事業は、
・SI事業:システムインテグレーション。自社製品のオービック7をはじめとするシステム開発とハードウェアの販売事業。
・SS事業:上記システムのサービス&サポート事業。
・OA事業:OA機器一般およびサプライ用品の販売。
関連会社のOBCの勘定奉行シリーズの売上も投資持分利益として計上されています。
基本的には基幹業務(ERP)システム一本で成り立っており、「経営資源の選択と集中」と外注0の「製販一体」体制となっています。

基幹業務システムというと、大企業層には上には富士通やIBM、NTTデータ、NECなどのSIerがおり、中小中堅向けには大塚商会やSCSKやOBC、最近ではfreeeやマネーフォワードなど、多くの競合がひしめき、決して簡単なフィールドではありませんが、オービックの強さはどこにあるのでしょうか。

■最近のオービックの取り組み
オービックは外部に情報があまり公開されて無く、なかなか実態を掴むことが出来ませんが、
・ERP導入のための上流工程(コンサルティング・設計)から下流(構築・導入後サポート)まで一貫して手掛けており、上流工程を筆頭に付加価値の高いサービス提供をおこなう。
・近年はオンプレミスのパッケージからクラウドへシフトしており、ハードウェアの販売量を落としつつもクラウドで「継続した、利益率の高い」売上に移行している。
・クラウド版を武器に、より上位の企業層へ食い込んている。
 オービック7は決して安くは無いですが、従来型の大手向けシステムに比べると、特にクラウド版は割安。
・徹底した採算の管理で利益率の基準に満たない案件は獲らない(想像です)。
・システム開発、販売、サービス&サポートまで外注0で全て自社で行っている。社員数は2014年の1971人から2021年の2049人と微増も一人あたり売上高は1.5倍。

■キーエンスとの類似点
・いずれも販売チャネルは直販のみとしており、自社でマーケティング・企画・開発・販売からアフターサポートまで行っている。
→顧客の声が商品開発にダイレクトに届くため、高速な商品開発や改善が可能になる。
・取扱い商品は自社商品のみのため、商品知識や提案スキルなど、営業が強い。顧客の課題・ペインポイントを掴み、それを解決するソリューション型営業で、モノ売りではなくコト売り。
 直販のみのため、自社商品の強みを無駄なく提案できる。
・徹底した採算の管理で利益率の基準に満たない案件は獲らない(想像です)。
・マーケティングが上手い。
・自己資本比率が高く盤石な財務基盤。

 代理店を使った販売チャネルをとる場合は短期間に販売量を増やすことが出来ますが、品質管理や顧客の声をダイレクトに取り入れた商品開発ができない、代理連へリベートの支払など、利益率は低下します。

 どちらの企業も直販という限られた販売チャネルの中で長い時間をかけて市場を開拓してきました。
その結果として、顧客の声を商品開発にダイレクトにフィードバックさせる商品開発の体制、自社商品に特化することで高品質でありながら効率の良い販売・サポート体制を実現し、それが更なる高収益を生み出すという、正のスパイラルで成長しているのだと思います。

■キーエンスとの相違点
1.グローバル展開
 キーエンスは全世界に事業展開し、今や全世界即日出荷を可能な体制を構築、現在の海外売上比率は55%ほどにのぼります。
→これに対してオービックはほぼ国内のみの事業展開となります。
 国内事業については、従来大手SIベンダーが得意としていた大企業レイヤーに進出、パイを広げていますがいつか限界が来るのではないかと危惧します。
2.開発・製造拠点
 キーエンスは自社工場を持たず、製品にマッチした世界中の工場に生産を委託しています。(アップルや任天堂と同じですね。)
→これに対してオービックは「外注0」としてすべての製品開発を自社で行っています。
 以前hameeの時も思いましたが、顧客向け製品開発を自社内向けにも流用する、一石二鳥が取れるのはいいですね。
 統合されたクラウド基盤上にSEが必要なものをスピーディに開発できるメリットがある一方、セールスフォースのように協力会社とのエコシステムを作ろうしていません。世の潮流としては、プラットフォームを各社に広く開放し、エコシステムを作ることなので、どちらが効果的か、今後の動向が気になります。

こうしてみると、ビジネスモデルの軸足は大きく違いがありますね。
一足先にグローバルな事業展開が成功しているキーエンスに対して、
現在は業績も株価も絶好調なオービックですが、
今後、少子高齢化や活発化する中小企業のM&Aなどで、国内ERPのパイが縮小していく中、どのような次の一手を考えているのかを注目したいと思います。


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